02 楽しいと思える仕事とは
うちの会社は大企業とまではいかないけれど、そこそこの中小企業だ。
社員も約600人ほどいる、出版社。
業務量は多いけれど、やりがいのある仕事がしたくて今の会社を選んだ。
自分のデスクに荷物を置いたのも束の間――
「名字」
「牧さん、おはようございます」
上司である牧さんに呼ばれ、行きつく間もなく近くの会議室に入った。
「おはよう。今日、流川の取材だったよな?」
「はい、11時から」
「急で悪いんだが、今回はダブル広告塔を打つことになった」
「…というと?」
「予定ではNBAで活躍中の流川だけの予定だったが、国内リーグ最多得点王の仙道も取材することになったんだ」
「流川くんと…彰を」
「ああ。しかも巻頭10ページだ」
巻頭10ページ…?!
何それ…?!
「すごくないですか?入社して以来の一番大きい取材になる気が…」
「直近で一番デカいぞ」
「それを任せていただけるなんて光栄です」
「頼んだぞ」
そう言って私の肩をポンッと軽くたたくと、
「それから――」
牧さんはチラリと会議室の外を見遣る。
「今夜は20時でいいか?」
「はい」
「久しぶりにゆっくり会えるの楽しみにしてる」
「私もです」
私の返事に満足そうに一瞬だけ笑顔を浮かべ、今度こそ会議室を後にした。
残された私はひとり、
ダブル広告塔という仕事のスケールの大きさと、
久しぶりに再会する“元カレ”の姿を想像しながら、緊張感を感じていたのだった。
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