長編:doting on love | ナノ

09 脳裏を離れない



あの日、一緒にいたあの子は誰?

あの日、触れていたあの子は誰?

あの日、あの子とキスしていたのは……何で?


わからない。

何度も何度も考えたけど、わからない。


わからない問題に対して、その問題の答えが知りたいのは人間の性(さが)だけど。


…今はもう、いいや。

知ったところで、きっと“現在(いま)”は変わらない。

変えられないだろうから。


だって――…


「――」

「……」

「――っ」

「……」

「名前!」


…びっくり、した。


「大丈夫か?」


どれくらいの時間ボーっとしていたんだろうか。


お皿に盛りつけられた料理が2/3ほど減っていたこともあり、無意識のうちに食べていたんだろう。


ただ、目の前には心配そうに私を覗き込んでいる牧さんの顔があって、


「どうした?口に合わなかったか?」

「いえ!…美味しいです」

「ならいい。呼びかけても反応がないから、ビックリしたぞ」


フッと笑みを浮かべた牧さんは、安堵したように再び食事を始める。


「ごめんなさい、ボーっとしちゃってました」

「何かあったのか?」

「…あの、」

「どうした?」

「今日、例の取材がありました」

「ああ、流川と仙道のやつか」

「はい。牧さんから取材を受けるよう連絡があったって仙道くんに聞きました」

「ああ」

「私の為…ですか?」


私は持っていたナイフとフォークをお皿に置き、牧さんに尋ねた。




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