長編:doting on love | ナノ

07 あと少しだけ、このままで



まっすぐに向けられた漆黒の瞳に吸い込まれそう。


高校生の時からふんわりしていて、

いつも何を考えているのかわからなくて、

ヘラヘラしているようにも見える彰。


でも、バスケの時と、真剣な話の時はいつも違った。


有無を言わせない雰囲気と、

逸らせない視線を纏い、

今目の前で感じるあの頃と変わらない仙道彰という威圧感に――懐かしささえ覚えていた。


「…そろそろ行かないと」

「ん。今日は流川と一緒か」

「そう。ふたりには私が直接取材をして、そのあとスタジオで撮影してもらう予定」

「了解」


了解――と答える割に、なぜか彰は動かない。


「彰?」

「ん?」

「行かないの?」

「行くよ」


行くよ――と言いつつ、やっぱり動こうとしない彰。


「そろそろ行かないと本当に遅れる」

「そりゃまずい」

「……」

「行かないと」

「……」


絶対まずいなんて思ってないな、あの顔は。


ニコニコ?

ニヤニヤ?


とにかくそんな顔。


「あと少しだけ」


彰の腕がゆっくりと伸びてくる。

あまりにもスローモーションみたいな動きだったから、動くことも逃げることもできなかった私の身体はその場に立ちっぱなしのまで。


――ふわりと鼻を掠める香水の匂い。

あの頃にはなかった男の色香が、私の身体を優しく包んだ。




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