さあ、うたおう
ユキとキラその後
Trich or Treat 02

「お盆みたいなもん?」

「そうですね、あと、収穫祭」

「ほーん」

おでんを突付きながら、何故だか深雪のハロウィン講座を受けている。

どうでもいいけどおでんが旨い。
あっつあつのおでんに、冷たいビール。
ああ、最高。
ウインナーとロールキャベツ。
堪らん。
胃が超喜んでる。

「ハロウィンてなんでカボチャなん?」

「ジャックランタンですね。あれも、お化けの一種ですよ」

「あ、そうなの?」

食うのかと思ってた。
あ、そりゃ冬至か。

「ハウル見ました?」

「ア?」

「ジャックはもともとカボチャじゃなくて、カブなんですよ。カブのランタン」

「ふーん?」

ぶっちゃけどうでも良い。
聞けば聞くほど日本人には関係なさそうで、オレの興味はぐつぐつ音を立てる鍋の中に集中している。
お、ジャガイモみっけ。

「ジャックは、死んで、でも死者の国に行けなくて彷徨ってる魂です」

「ほお」

「生前堕落していた男、の成れの果て」

ふうん?

「オレみてえ」

はっ。
堕落しきってんだから仕方ねえよな。
自業自得。

明かりをくれるなんて、悪魔も意外と親切じゃん?

暗闇で一人じゃ寂しいもんな?
明かりがあれば、幾分マシだ。

哀れなオバケ。
あの滑稽なカボチャの顔が却って物悲しい。
もしも仮装しなきゃいけなくなったらそれで行こうかな、なんて思うくらいには一気に親近感が沸いた。

「道案内、してくれるんですよ」

「イタズラ?」

「いえ、ジャックは迷わせずに、ちゃんと道案内するんです」

「へえ」

それは、あれか?
後悔してるって事かね?

お前は迷うなよって。

そんなお節介なオバケ。
しょうがねえヤツ。

「そうですね」

「ンあ?」

「アキラさんは、ぼくを導いてくれたジャックランタンだ」

「へ?」

ニコニコ笑う深雪の言葉に違和感を覚える。

「導くったら、オレがお前に導かれたと思うケド?」

どうしようもないオレを。
お前が。

結構、これでもまともになったと思うんだ。
お前と会ってから、さ。
お前と、付き合ってから、さ。

言わねえケド……って既に言っちまった後だったっけ。


「それじゃ、……二人で彷徨いましょうか」


くしゃり。
ご機嫌な深雪の嬉しそうな笑顔に、それも良いかと思う。

二人でなら、結構楽しそうだ。
抱き合えば暖かいし。

多分、幸せ。


「……外寒ぃから、独りで彷徨っとけよ」


言わねえケド。


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