さあ、うたおう
ユキとキラその後
Trich or Treat 01

「Trich or Treat!」

幾分見慣れてきたイケメンの満面の笑み。
安っぽい扉で遮ろうとして、失敗した。
とはいえ、オレの行動を阻んだ足には幾分のダメージを負わせることができたらしく、整った顔がかすかに歪む。

はっ。
ざまぁ。

「閉めないでくださいよ、アキラさん」

「英語喋る知り合いはいねえよ」

「痛いです」

「ツバでもつけとけ」

「つけて下さい」

話が通じないのも相変わらず。
慣れてきた自分が怖い。

遠慮もなく部屋の中に体を滑り込ませてきた闖入者が、家主を差し置いて扉の鍵を掛けた。
無用心だと怒られるんだが、こんなボロアパートに強盗なんて入んねえよ。
留守にする時は鍵してんだから、十分だろ?

「お邪魔します」

「オウ」

ちゅっと唇に冷たいキスが落ちてきた。
反射的に目を瞑れば長い腕に抱きこまれて、いつの間にか囚われのオレ。

夜の外気を纏った体は冷たい。
それが触れ合っている部分からじんわりと温まっていくのが、イイ。
オレが暖めてやってる、なんて思えて気分がイイ。

「イタズラですか?」

「ハ?」

「Trich or Treat」

「アホなこと言ってねえで、ちょ、ア、てめ……」

ジャージのゴムに冷たい指先が掛かる。
腰骨を撫でられて背筋が震えたのは、きっと冷たさだけの所為じゃない。

あり得ねえ。
ほんと、玄関で盛るんじゃねえっての。

「ン……この、アホっ!」

「あ、でもアキラさんはスイーツですもんね。頂きます」

「キモ! っちょ、おま……」

メシ!
メシくいてえんだって!
腹減ってんだっての!
順番。
順番ってもんがあるだろうに!

するすると肌を嬲る乾いた手。
首筋を濡らす冷たいような暖かいような器用な舌。
耳元に掛かる切ない吐息。

愛撫に慣れた体が反応する。
頭の奥の本能が、じんっと反応する。

ちょ。
待て待て。

「てめ、これでも食ってろ」

脛を軽く蹴って心地の良い居場所から抜け出す。
ジャージから引き剥がした手のひらに、からからと音を立てる缶を握らせた。

オレの常備薬。
南○のど飴。

飴。
キャンディ。
満足だろ?

フンと鼻を鳴らして幾分ずり下がってしまった下着とジャージを上げる。

「なあ、メシ」

おまえが作るっていったんだろ。
早いところ食っちまおうぜ?



なあ?

食っちまって、……さ?


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -