さあ、うたおう
ユーとサクその後
Trick or Treat 02

「ねえねえ、お菓子は?」

ソファに腰を下ろしたオレの足元に纏わりついてくる。
やっぱりサクは吸血鬼じゃなくて、ネコの方が似合うと思う。

まあ。
マントを脱いで、薄手の白いシャツ一枚になった吸血鬼のサクも最高だけどね。

最高だけど、ね。
下着くらい着てきてくれないかな?
乳首、透けてるんだよね。

……トモミの策略かと、そんなことまで疑ってしまう。
昔から、トモミは意地が悪い。
オレを苛めて喜ぶ癖がある。

ほら、そのマスクだって。
イヤミだよね?

「切らしちゃったよ」

サク専用お菓子箱は、先日この吸血鬼が空っぽにしていってそのままだ。

「えー! ハロウィンなのに!!」

「ごめんね?」

「うー! いたずらしてやる──!」

ご立腹の吸血鬼がオレに圧し掛かってきた。
肉の薄い尻が膝の上に載る。

「ん?」

至近距離に近づいた小さな顔を覗き込むと、まあるいお目めがぱちぱちと瞬きを繰り返した。

ああ、目の縁を赤くして。
可愛いなあ。

「何、されるのかなあ?」

「えっと……」

逃がさないよ?
細い腰に腕を回すと、ふにゃりと顔が歪む。

「……ち」

「ち?」

「吸う」

ぎゅっと抱きついたサクが、オレの首にキスをした。
ちゅ、ちゅっと可愛い音。
くすぐったくて、可愛くて、思わずふふっと笑ってしまうと、鼻息とともに硬いモノが皮膚に触れる。

「っ」

噛まれた。
とても軽く。

痛くはない。
の、だけれど。

「……ん……っふ」

歯で挟み込んだ間を舌先で舐められて、ぞわりと体の中心を悪寒が走る。

ヤバイ。
オレ、わりと首、弱いんよな。

こんな拙い愛撫でも反応してしまうくらいには、弱い。

「ちゅむ、んちゅ……」

「っぁ、……ふっ……ン……」

ヤバイ。

ヤバイ。

まてまて。
サク。

声が出る。
ヘンな声が、出る。

身についた癖って言うのは厄介だ。
気をつけないと、つい、鼻にかかった声を出してしまいそうになる。
相手を煽って、愛撫を強請る声。
媚びる声。

そんなもの、サクに聞かせる訳にはいかない。

「サク、っぅ……」

次第に大胆になるサクの愛撫に、オレの体が反応する。
ソファの背もたれに押さえつけられて。
触れ合う体の暖かさに触発されて。
もどかしげに腰を揺するサクの、その中心が少し硬くなっているのに、興奮する。

ああ、欲しいなあ。

と、思う。

最近ちっとも満たされていない部分が、それを欲しがっている。


ああ、欲しい。


「サク」


でも。

ねえ?

サクのことは、抱きたいなあと思うんだよね。
抱いてやりたいなあと。
思ってるんだ。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -