さあ、うたおう
ユーとサクその後
Trick or Treat 01

「Trick or Treat!」

これは夢だろうか?

そこにいたのは、吸血鬼。
これまたずいぶん可愛いらしい吸血鬼。

「……いらっしゃい」

「あ、もう、ノリが悪い!」

「あー、ごめんね? 寒いでしょ? とりあえず入りなよ」

「はあーい」

ぷくっと膨れた頬はふっくら、血色よく輝いていて、とても吸血鬼のそれには見えない。
むしろ、こっちが噛み付いてしまいたいくらい。


ぞくり。

ああ、堪んないね。


扉を支える俺の横をすり抜ける子猫のようにしなやかな体。
ふわりと、柔軟材が香る。
俺にはない、細い首、華奢な肩。
女の子のように可愛らしい外見。

ちょっとジェラシー。

なんてね。

思わないでもないけれど、それより何より、湧き上がるオスの衝動。
抱き潰してしまいたいだなんて、そんな衝動。


あ、そうだ、とあどけない笑顔で振り向いたサクに、首を傾げて応える。
変な顔、していなかっただろうか。

「これ、ママが」

「トモミ?」

「うん、下まで送ってもらったんだよね。ユーくんに渡してって」

「ふうん?」

受け取った紙袋の中を見れば、もこもこした……

「ネコ耳、じゃないか。狼……?」

「あ、ユーくんの分の仮装! ママ準備してくれたんだ」

「オレ?」

「そう、昨日ママとねー、話してたんだ。ユーくんは何が似合うかなあって」

吸血鬼もいいけど、それはボクがやりたかったし……なんてぶつぶつ言いながら、サクが耳つきカチューシャを奪ってオレの頭に乗せた。

「うん、似合う」

背伸びをしたままニコリと笑ったサクが可愛くて。
目の前の鼻先に思わずキスを落とすと、ぴょこんと肩を跳ねさせたサクが、まん丸にした目を伏せた。

紙袋を覗き込むなんて行動で誤魔化してはいるけれど、恥ずかしかったのだろう。
少しだけ赤くなった顔に浮かべた必死の無表情が微笑ましい。

「しっぽもある。つけて〜」

「おー、結構本格的?」

「ね?」

重量感のあるファーの塊を持ってオレの背後に回ったサクに代わって紙袋を覗くと、まだ何か入っている。

「? マスク?」

取り出したそれは普通のガーゼのマスク。

ん?
普通より、かなりデカイ?

「絶食、中……?」

そのでっかいマスクに、でかでかと書かれた文字に、意地の悪い笑みを浮かべた幼馴染のお姉様の顔が透けて見えた。


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