「
さあ、うたおう」
ユキとキラその後
Merry mellow Christmas 06
ホテルにチェックインして、ラーメンを食いに行った。
教会からバスと電車を乗り継いだこの辺はそれなりに栄えていて、繁華街なんてどこも一緒だなと思う。
雪さえなければ、ここがどこだか忘れてしまいそうだ。
「贅沢なホテル取ったんだな」
クイーンサイズだかキングサイズだか、とにかくでかいベッドのスプリングを確かめながらゆったりとした室内を見回す。
ビジネスホテルとかシティーホテルとかを想定していたから面食らった。
いくらするんだろう?
今回は全額オレもちの予定で誘ったんだけど。
自分も出すと言って頑として譲らねえ深雪に折れて宿泊先だけ頼むことにした。
飛行機代よりは……安いよな?
頼むぜ。
「初めての旅行ですし」
「別に、……旅行らしいことしてねえじゃん」
墓参りが旅行だなんて、何言ってんだか。
「だって、……こんな旅にぼくを誘ってもらえるなんて、本当に嬉しいんですよ? 分かります? 昨夜眠れないくらい楽しみだったんですから」
オレは別の方向に思いつめて眠れなかったけどな。
そう、そう。
寝不足だったんだ。
心地よさげなベッドがオレを誘う。
風呂もすませて、腹も満たされて。
何より、やるべきことを済ませた安心感がスゲー。
緊張しっぱなしだった体から力が抜けていって、熱の時みたいなボーとした感じがする。
「アキラさん」
「ん、あー?」
「せっかくなので旅行らしいことしましょうか」
「ハ?」
さっと影が差したと思ったら、オレを見下ろす深雪が逆光に?
ん?
あれ?
この体勢……。
「旅行といえば?」
「サア? 食いもんとか?」
「ああ、旅先だと一層美味しいですもんね」
「っん、ん」
オレの首に顔を埋めた深雪が、ペロリと皮膚を舐める。
多分アレだ、意思の疎通がなってない。
会話。
会話をさせろ。
「アレだ! …………絶景! 旅といえば絶景!」
「それは、見たいですね」
「オ? おお、うん。あ〜、じゃあ明日……」
「見せてくださいね、アキラさん」
「ハ? ちょ、ア……う、あ。どこ……え!? っひ、ヤッ、や……ぁ、ぁあああんっ……!」
てめえ。
このつもりでこのホテル取っただろ?
ビジネスじゃあ声やべえもんな?
なんて、悪態がつける程の余裕は、オレに残されてなかって、そんな話。