さあ、うたおう
ユキとキラその後
Merry mellow Christmas 05

すっと、優雅に差し伸べられた手のひらに。
オレの名を呼ぶ陽だまりの様な声に。

一歩、踏み出す。

「アキラさん」

「ん」

「こっち、来て下さい」

「ん」

「アキラさん」

一歩一歩。
凍りついたように踏みとどまってしまう足は、深雪の声に何度も何度も溶かされて。
気づけば互いの顔がはっきりと見える程近くまで来ていた。

「……」

意図を持って差し出される手のひらに、躊躇いながら手を伸ばす。
心臓が痛い。

だって見てるから。

これは、罪だ。

分かってる。

分かっててやってんだよ。

そっと触れた深雪の手が暖かい。
普段は冷たく感じるんだけどな。
緊張と寒さで強張ったオレの手の動きはとんでもなくぎこちなくて、自分で笑ってしまった。

かじかんだ指先が暖かい手のひらにふわりと包まれて、そのまま二人、同じ歩幅で祭壇の前に進む。


なんかな。

アレだ。

アレっぽい。


ああ、でもそんなの罰当たりだって。
分かってる
分かってるけど。


ちらりと隣の横顔を見上げれば、気づいた深雪がオレをその目に映した。

「病める時も、健やかなる時も」

ああ、畜生。

「やめとけ」

それは、違う。
オレらには許されない。

「あなたを愛すると誓います」

「深雪」

悪戯っぽく口は弧を描いているのに、暗い室内できらりと光るその目は真剣そのもので。
笑い飛ばせるような雰囲気、じゃねえ。
なあ、んな事言われたってどうしたらいいのか分かんねえんだけど。

「この神が、オレらを祝福することはねえよ」

その神に誓ってどうする?
なあ、そんなもん誓われたってアンタも困るよな?
正面を仰ぎ見て、暗闇にひっそりと浮かび上がっている男の白い顔に訊ねる。
この罪もその身に引き受けてくれますか? なんて、そんな図々しいこと頼めねえよ。

「あなたに」

「ア?」

「あなたに誓います」

両頬を頬を大きな手のひらで包まれて、深雪と見詰め合う。
自分以外のものを見るのは許さないと言わんばかりの深雪の行動が、なんだかむずむずと心を擽る。

「死が二人を分かちても」

「分かつまでだろ。なんだよワカチテモって」

「え、それは嫌ですよ」

「ハあ?」

唇を尖らせた深雪に眉を寄せる。

「ここにいるとか、いないとか、関係なく、愛してます」

ちゅっと唇に落とされたキスは、アレか?
誓いのキスってやつか?


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