さあ、うたおう
ユキとキラその後
Merry mellow Christmas 04

すっかり日が入ってしまった、真っ暗な空を見上げる。
雲に覆われた空には、やっぱり星も、月さえも確認できない。

太陽は偉大だ。
姿が見えなくても、その強烈な光は、あんな分厚い雲も通り抜けてこの地上を照らしてくれるんだから。
僅かにでも暖めてくれるんだから。

見えなきゃ、存在なんて不確かでしょうがねえ。
ホントに、あるんだろうか。
星は。
月は。



母さん。


来たよ。


親不孝な息子で、ほんと、ごめん。


きっとこんなデキの悪い息子が祈らなくたって、そっちで楽しんでるんだろ?


寒びいな。
あっという間に体が冷えちまう。

寒いの、苦手なんだよ。
あの日、冷たくなってしまった母さんの体を思い出す。
だから、また、多分、暫く来ねえよ?

いいよな?

どこでだって、祈れるんだろ?


「アキラさん」

「ん、だよ」

「少しだけ、寄って行きませんか?」

ふっとため息を漏らせば、後ろから深雪の静かな声が掛けられた。
はるばるこんな土地まできて、このクソ寒い中文句も言わずにオレの傍らに立つ男。
デキたやつだよなあ。
と思う。

その視線は、火が落とされて雪に沈む教会に向けられていた。

「…………ボロいだけだぞ」

「ダメですか?」

「別に」

お前が行きたいんなら、いいけど。
そう。
ちょっと。
疚しいってのはある。

踏み固められた雪の道から、石畳へ。
冷え冷えとした階段を深雪の背中を見ながらゆっくりと上がって、大きな扉が開かれるのを見つめた。


かつり。
かつり。

靴底が床を叩く音。
扉が閉まる悲鳴めいた音の余韻が消えれば、シンと静寂が訪れた。

暗い室内には夕方まで焚かれていたストーブの温もりがまだ少し残っている。

かつり。
かつり。

慣れた目に、ステンドグラスが嵌った小さな窓からぼんやりと光が差し込んでいるのが分かった。
あんなに暗ぇなあと思っていたのに。
それでも灯りのない室内に比べたら幾分明るかったらしい。

月か、星か、それとも太陽の残滓か。
微かに降り注ぐ光の中、祭壇のに向かって身廊を真っ直ぐ歩いていく深雪のシルエットがとても綺麗で。


入り口に突っ立ったままそれに見とれていると、深雪の体がくるりとこちらに振り向いた。


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