「初会」-2P

ロパをまとめ役とする彼ら五人の神龍使いたちは、団結するための秘密の基地を広大な大地のどこか、地下に持っていたが、普段は全滅の危機を避けるために離れた地域を拠点に暮らし、意図的に別行動をとっていた

ロパはサングと、ヂャーマスは共に生まれ育ったロザムといることを好み、自然の成り行きで彼らは対となった

孤独を愛するスーイは何処にいるのか、その消息はわからないことが多かったが、どうも東洋文化の色濃いれいレイナン地区を行動の拠点としているようだった

スーイが内に持つ強固な正義と義理堅い性格、決定的な肉体の強さは、暴れ者の「邪龍」が度々飛来するこの地区を幾度となく救った

被害の頻発するレイナン地区にとってついには彼は「仏」のような象徴的な存在となり、継続的に希望の光をもたらしたのだった

連絡手段には特殊回線を介した通信か、あるいはスーイのような高度な精神制御の術(スベ)を備えた者は「心伝」と言われる技で、遠地にいながら必要な情報を直接仲間の心に伝えた

だが、快活なロパやロザム、ヂャーマスともなると、こうしてよく互いの住処を行き来した

途方もない数の人間の明日を左右しかねない重大な力を授かる存在だとはいえ、彼らはまだ十代で、こうして合流をして話したり、同年代でふざけあうことが楽しい若い盛りなのだ

「ただいま。ロパ、帰ったよ」

ロパとヂャーマスが窓の外に流れる空を眺めていると扉が開き、紙袋を抱えたサングが部屋に入って来た

「遅くなってごめんね、お腹空いたでしょう?今……あれ?ヂャーマス!」
「やぁ、サング」
「来ていたんだね、一人?ロザムは?」
「あぁ、さぁね。あいつ、昨日の夜から帰っていないから」
「えっ」

さらりと流したヂャーマスにサングは狼狽(ロウバイ)した

「昨晩から帰っていないって、一体何処へ?大丈夫なの?何かあったんじゃ…」
「ないない」

脇で聴いていたロパは、空腹でサングの帰りを待てずに自らこしらえたハムを、手にしたフォークで突き刺しながらおおげさに顔を歪めた

「そう、心配ないよサング。いつものことさ。あいつは昔からじっとしていない奴だから」

「何処かで女でも引っかけているのさぁ」

ロパの発言にヂャーマスは小さな溜め息をつき、かもな、と穏やかに笑んだ

「もう、ロパったら、そんなこと……」

彼の露骨な言葉にサングは語尾を濁した

「さて…。じゃあ、そろそろ俺は失礼しようかな」

「え、もう?」

立ち上がったヂャーマスにサングは声を上げた

「ランチを作るから、食べていけばいいのに」
「ハハ。そうしたいけど、誰かさんの気持ちに配慮して、ね」
「?」

意味有り気に呟き、窓辺のロパを流し見たヂャーマスにサングはきょとんとして、鮮やかな青色の目で彼の顔を眺めた

「……あのね、ロパは二人で祝いたいってさ、明日の君の誕生日」
「!」

ついて来れていないサングに近寄って彼の耳元にそう言葉を残すと、ヂャーマスはドアの前に立って振り返り、二人に向けて軽く手を振った

「……」

扉が閉まって彼の姿が見えなくなると、口の奥の空洞をぽっかりと覗かせて立ち尽くすサングの背後で、ロパの立ち上がる気配がした

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