「決断」-6P

「俺を一人にしてくれ…シンシアとリョンナンに行ってくれ。俺にだってプライドってもんがある。俺は自分が何をしているか解っているし、尻拭いくらい自分でできる。クロスが死んでから、お前はもう嫌というほど俺のボロを見てきたはずだ。……お前にはこれ以上頼れないよ。近くにいたくない。これ以上は、俺たちの関係がだめになってしまう」

懇願するように親友を見るビブセントの目には普段の覇気の欠片もなく、平常心の喪失を恐れ怯えていた

慎重に紡ぎだす声は、苦悩の重圧に揉まれうねっていた

「何故今更そんなこと…」

ウェブスターはビブセントの弱気に耳を疑い、くじける姿に目を疑った

「…頑張ろうとした。クロスが死んで……お前は俺を助けた
……そして俺も頑張ろうとした。彼のいない世界でも生きる方法があるかもしれないと思って、お前の為にも頑張ったんだ……。…だが俺は……やはりだめみたいだ」

ビブセントは悲しそうに、仕方なさそうに笑った

その笑みで自分を宥(ナダ)め、蔑んだ

「人は大切なものを失くしても時が経てば幾らか癒されると言うが、あれは嘘だな…。俺の心は日増しに荒んでいくばかりだ。これ以上は…とてもお前の手本になれそうにない……俺はもう、死にたい」

ビブセントの抱えた孤独や苦しみは空虚の皮をかぶった獰猛な怪物で、再生を試みる彼の心に巣食って精気を吸い私腹を肥やしていた

最愛の人が選んだビブセントを生かすという選択肢は、結果として収拾のつかないほど彼を追いつめ、あらゆるものを敵視する目を与えることになっていた

「…… 頼むから… そんなことを言うな、バックス」

さすがのウェブスターも一瞬、彼の告白にたじろいだ

「ああ、神よ。俺の色々なものを奪っていった神よ。何故お前に彼が殺せて俺が殺せないかって話だ!」

兄は大げさな演技でもするように立ち振る舞って天井に向かって狂ったように笑い、錯乱して吼(ホ)えた

「バックス、もうよせ。…さぁ立て、俺を見ろ」

ウェブスターは泥酔したように足のもつれる体を支えて立たせ、子供のように泣きべそをかく彼の顔を眺めた

薬に侵されて感情が高ぶったビブセントには恥らいがなく、大声でわんわんと泣いては神を冒涜し愁悶した

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