「決断」-5P

「お前、最近、反抗的だぜ、…少しは黙って兄貴の言うことを素直に聞けないのか?」

「今のお前がまともな精神でものを言っているっていうんならな」

ビブセントはやはり、面倒だ、と呟いた

ウェブスターは不機嫌な様子で兄を押しのけるようにして部屋の中へ入った

ビブセントはふらふらとした足取りで部屋の隅へ行き、その様子を亡霊のように白い顔で傍観した

ウェブスターは部屋の奥の窓際の机の上を見て失望したように頭をひねり、振り返った

「ビブセント…薬をやったな」

兄は壁にもたれたまま無関心な様子で声のした方をちらりと流し見た

机の上にはいくつかの怪しい器具と、悪い薬の粉があった

部屋を訪れた時、ウェブスターはビブセントの目に起きている瞳孔の散大や不自然な言動を見てとり、事を悟っていたが、目の前に突きつけられた事実は辛辣であった

「……どのルートでこれを手に入れた?事は重大だぞ、バックス」

「…構わないさ…兄弟」

ビブセントは彼の本気の心配を嘲笑った

「俺が非番の時に薬をやることが重大なものか……日常の些細な片鱗だ… なぁ、早く行けよ。リョンナンでの宴に遅れるぞ

♪あらゆる陰湿とおさらばだ 夢の宴が待っている… いい女と最高の時を過ごすのさ…」

ビブセントは手に隠し持っていた薬を包んだ紙切れを口に食(ハ)むと煙を吸い、病的な風貌につり合わない小鳥の囀(サエズ)りのような美しい声で歌った

「…出発は明日だ。お前を連れて行く」

ウェブスターは火のついた包み紙を取り上げ、苛立(イラダ)った様子で吐き捨てた

ビブセントは理解したかしなかったか、一度おかしそうに高く笑い、その後しんと静まり返った

急激に表情を殺(ソ)ぎ、寂しそうに背中を丸くして憂鬱の殻に閉じこもってしまった

「…なぁレオ、頼むから……」

兄は沈み、真面目な声で呟いた

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