「決断」-3P

ビブセントが男同士で体を寄せて眠ることを嫌がるとウェブスターはすました顔で、誰が好き好んでやっているものかと返したが、眠る時に拘束した手の先を握っていてやると兄が安心して眠ることを発見した

そうして度々二人は、さながら同性の恋人のようにして眠った

図らずして行い続けたそのような親密はウェブスターへの、ビブセントの心身の癒着をもたらした

ビブセントは彼が傍らにいない時は不安を顔一面に滲ませるようになった

夜は眠ることもせずにいらいらした様子で不機嫌に部屋の中を延々歩き回ったり、そんな檻の中の獣のような自分を落ち着かせようとして窓際で煙草をやって朝を迎えたりした

彼はその依存性がウェブスターに知れることを嫌った

またウェブスターは、兄の心の変化や自分たちの関係に起こりつつある決定的な変化を一切話題に上げることはしなかった

傍(ハタ)から見れば平然としているウェブスターが、一線を越えそうになっているその現状をどう思っていたかなどビブセントにさえ解らなかった

それでビブセントは危機感のないこの親友との関係が更に"悪化"することを避ける為に、間をぶ厚い壁で隔(ヘダ)てて距離を置こうとしたのだったが、結局のところ状況は平行線であった

どんなに睡眠のサイクルが不規則でも、7時になると機械じかけの人形のように目を覚まして起き上がるよう体を訓練していたから、ウェブスターは翌日も自室できっちり7時に目を覚ました

それから定位置である窓際の深々とした座面のひじかけ椅子に腰掛けて煙草を吸い、昨日受け取った権利書を諦観した

そしてそのまましばらく思想に耽(フケ)った後、机の上に並べた書類のいくつかに目を通して立ち上がり、制服に着替えて権利書を手に部屋を後にした

非番の時、変わらず規則正しいウェブスターとは対照的に、ビブセントの休日は怠惰(タイダ)であった

とはいってもウェブスターの規則正しい生活の循環はビブセントの不調を監視する目的からきていたわけで、彼はこの日も早々にビブセントの部屋を尋ねた

元来の兄は惰性で生きることを知らないきっちりとした性格であったが、最愛の人と暮らした世界を失ってからはその絶対的な規律も崩れ去ったらしく、荒(スサ)んでいた

いつもしつこくノックした挙句にビブセントは少しだけ開いたドアの隙間の向こうにその姿を現した

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