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(…ったく、アンコのヤツ余計な事しやがって)
昼を食い終わり、雅亭を後にして執務室へと向かう。
今日は然程忙しくもなく、久々に昼メシは外で食うかという話になった。
ただ全員出るのはまずいからと、ジャンケンなんて単純なモンで残るヤツを決め、結果アオバが1人残り俺達が行けることになったのだが…
(こんな事になんなら、俺が残ればよかったな…)
ライドウが雅亭に連れてってくれと言い出し、俺自身も久々に行きてぇからと向かおうとした時、前回同様アンコが私も行くと言い出して。
来るなと行っても無駄で仕方なしに連れてきたら…この有り様だ。
(そもそもあの女を気にしているのは確かだが、それ以上の気持ちがあるわけじゃないってのに…)
お節介もいいとこだと深くため息をついていた時、隣から低い声が聞こえた。
「う〜ん……いつだ……絶対どっかで……」
「…おい、お前さっきから何ブツブツ言ってんだ?」
店にいる間も出てからも、ずっと何かを考えているライドウに疑問を抱き問いかける。すると低い声で唸りながら小さく呟いた。
「いや〜…さっきの雅亭の娘さんなんだが、
どーっかで見たことある気が…」
「………あ!?おま、それ本当か!?」
まさかずっと気にしていたあの女の事を口にするとは思ってもみなかった為、つい素っ頓狂な声が出てしまう。
ライドウは変なところで記憶力がいい。
あまり特徴のない人の顔や、結構昔のことでさえも憶えてたりするようなヤツだ。
「ライドウ頼む、何でもいいから思い出せ!!」
「なんだよ、ゲンマも何か引っかかってんのか?」
「ああ、あの女と会ってからずっと──「ちょっと、なぁに話してんのよ!!」
その時、俺達の間に割って入ってきたアンコのせいで会話が途切れてしまった。
なんつータイミングで話に入ってくるんだとアンコの肩を押してライドウから引き離す。
「アンコ…今お前に構ってるヒマねぇんだよ。分かったら退け」
折角何か手掛かりが掴めるかもしれねーんだ。
邪魔なんかされてたまるか。
そう思い尚も考えているライドウの横で何か思い出すのを待っていると、俺の肩に手を置きながらアンコが言葉を発した。
「なによ、釣れないわねぇ…まぁいいわ!今度の飲み会あの子も誘ったし、今から楽しみ〜!」
……………………は?
「おい、いーかげんにしろよ…何がしてーんだお前は」
「だってアンタ絶対気になってるでしょ、あの子のこと。だから少しでも近付けるようにセッティングしてあげたんじゃない!!モタモタしてるとカカシに取られるわよ?」
「あーあーそうだよ。気になってんのは確かだ。けどな…だからって別にあの女に対してそんな感情抱いてるわけじゃねーんだ。分かったら今後──「ああ!思い出した!!」
変なことするんじゃねーよ…そうアンコに告げようとした時、今までずっと唸っていたライドウが叫んだ。
その言葉にガラにもなく鼓動の音が早まり、思わずライドウに詰め寄り声を荒げる。
「教えろ、何思い出したんだよ!!」
「まぁまぁ、落ち着けって。
ほら、あれだよあれ──────………」
ライドウから告げられた話………
それは、奥底に眠っていた古い記憶だった。