好奇心
※風呂ネタ
※流視点
「お前、なんか色っぽいぞ…」
初めて、『友達』と温泉に入った。裸の付き合いには憧れていたが、なんだか恥ずかしい。だが謎解きに似た好奇心には勝てない、皆が待つ浴場へのガラス戸を開けた瞬間、金太の一言がこれだ。
「それにタオル!湯船につけるなんて非常識だ!外せって!」
しかもいきなり腰のタオルに手を伸ばし、無理矢理引っ剥がそうとする始末だ。金太郎は体育系のノリなのはわかっていたが、いきなり強引に押してくるとは思ってもいなかった。
「ちょ、何をするんだ!」
「ごちゃごちゃいうなって!自信がないわけじゃないだろ!」
数馬は力も適わないし止めにくる気配はない。Qはぼんやりとやりとりを見ているだけ。期待は出来ない。
「や、やめるんだ!」
「抵抗すんなよ…っ」
「うわ〜、綺麗ですね〜」
恵の声が聞こえたことが救いだった。女子側から話し声が聞こえたことで、金太郎の気がそれ力が緩んだのをチャンスに、素早く抜け出す事に成功した。
「聞いたかよキュウ…」
「あ、うん、」
「これは行くしかねえだろ!」
鼻息荒く古典的にタオルを被る金太に、呆れ顔な数馬。相変わらずQはぼんやりとしながら女湯を見つめている。
「なんだキュウ!置いてっちまうぞ!」
お目当ての女性の声を聞きつけ、居てもたってもいられない金太には呆れを通り越して敬服する。止めても無駄だとわかっているため、誰も声すらかけもしない。
やれやれ、と首を振れば無邪気なQの声がした。
「ね、リュウ。」
「なんだい?」
「ちょっときてよ。」
流石に寒くなってきたのもある。湯船につかるQに近づいた瞬間であった。Qの満面の笑み、そして下から吹く柔らかな風。
「…え?」
タオルがめくられた、と気がついたのはQの輝いた目と数馬の悲鳴のおかげだった。
「ちゃんとついてる!」
「き、ききききキュウ!いきなり何を!?」
「え?リュウにもちゃんとついてるかなって。」
「あるに決まってるだろ!!男なんだから!!」
「あまりにも綺麗だから、女の子かなって思ったんだよー。」
数馬とQのやりとりをぼんやりと見つめながら、流は冷静に状況を整理する。
今、僕はキュウにタオルをめくられた。理由は女性ではないか、と疑問を抱かれたからだ。数馬にも見られた。金太にも見られた。誤解は晴れたから特に問題はない。だがしかし。
「いきなりはびっくりするだろう!!!」
「だって、もし女の子なら向こうまで見に行く必要はなくなるじゃん?」
「女性なわけがない!だって胸がないだろうっ」
「小さい子もいるよ??」
終わりの見えない問答と、Qの無邪気な瞳に折れざるを得なかった。「もういいよ」とタオルを取り隣に座り込むと、Qがまた笑った。
「まあリュウが男でも女でも、どっちでもいいかな。」
女湯から聞こえた恵の悲鳴と金太郎の情けない声。
ニコニコと笑うQにつられ、流も笑った。
+END
++++
13.12.15
[ 36/49 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]