*暗唱
騒がしい院内にしては珍しい場所。ここクリスタリウムには、勉学に励む候補生たちが入り浸っている。その普段の顔ぶれは変わらない。その中で、名物になりつつある二人がいた。
「アカシャの書をこの短期間で記憶するとは…さすがですね。」
「このくらい当然さ。これでも実力で0組に配属されたのだからね。」
自信満々に書を暗唱してのけたクオンに、トレイは素直に感嘆の声をもらす。
「やれやれ、ナインやジャックもこのくらいやってくれれば…」
「トレイ。」
短く、はっきりとした声がトレイを呼ぶ。
「今、他の者の話をしないでくれ。」
トレイはフッと笑う。わかりましたよ、柔らかい返事と近づく吐息。他の生徒からは死角でわからないように、計算された口づけに、クオンを罰の悪そうな顔。
「全く…勉学の場で何を……」
「部屋なら、いいのですか?」
「…はぁ」
真っ赤な顔は肯定の証。可愛いなぁ、とトレイはおもむろに口を開く。
「『愛してますよ。』」
参考文献は、彼しかしらない。
++++
トレイはレベル高いポエム書きそうな
12.1.19
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