えふえふ | ナノ



*捕まえた

今日も、不毛な鬼ごっこは続く。自称天才とバカの、凸凹な鬼ごっこが。

「待ちやがれテメエ!!尻尾巻いて逃げる気かよコラ!!」

「逃げてなんていない。君が勝手についてくるだけだろう?」

「俺はテメエに用がある!それでテメエが逃げるんだから、尻尾巻いてやがんだろ!」

「やれやれ…勝手な言い分だ……」

クリスタリウムにナインが来たのは、数分前のこと。ナインが嫌いな文字の羅列に興味を持つなんて珍しい…と思いきや。真っ直ぐにクオンの元へと向かってきたのだ。目標にいち早く気づいてしまったことに、クオンも驚くが、彼は一体なんの用なのだろうか。黙々と本を読むフリをしても、彼は目で訴えてくる。猛犬の扱い方なんてわからない。
いつ吼えだしてもおかしくはない顔に、飼い主もいない。やれやれと移動を開始すれば、案の定。

「僕に用とは?」

「テメエの顔見てたら…なんか、イライラするんだよ!何してくれんだゴラァ!」

「やれやれ…身勝手な言い草だな……」

「なんだそのため息!なめんじゃねえぞ!」

呆れてため息すら出ない、とはこの事だろう。

「どんな感じにイライラするんです?」

「見てたらモヤモヤするっつーか、構えっつーか……無視すんなっつーか…」

「ふむ。もしやそれは恋、かもしれないな。」

「恋?」

意地の悪い笑みで、クオンはクスクス笑う。首を傾げるナインを見つめて。

「君の症状からして、妥当な推測だろう。」

「恋…そ、そのくらいなら俺も知ってっぞコラ!!」

前触れなど何もない。ぶつかるようにな口付けに、驚いのはクオンだ。力差も歴然。そのまま押し倒され、覆い被さる形になる。

「恋ってこういうことをするんだろ、コラ。」

「そ、そうだが……」

冗談だったのだが、と付け加えるには遅すぎた。言ったとしても、満足げな犬は聞かないだろう。やれやれ、ペットがじゃれてきた、と思えば造作もないだろうが、この胸の鼓動はなんだろう。

++++
ご意見を頂いたクオン受けに挑戦してみましたが…こうなるとはw

12.1.16

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