えふえふ | ナノ



黄色い暴君

※異説妄想話


 キュピキュピと、黄色い羽毛の天使が鳴く。

「チョコボが好きなのか?」

 悪魔と天使なんて、一緒にいるには不釣り合いな組み合わせに、首を傾げて純粋に問いてみたら、怒りと屈辱に震える手にぶん殴られた。

 眩しいまでの銀髪から覗く、赤い瘤。怪我にはなったが鋭い痛みはもうない。手だけでは飽きたらず、追い討ちに岩を落としてきたことにももう怒る気すら起きない。
目の前ではしゃぎ回る無邪気な鳥の集会を見ていては尚更だ。

「こいつら、どこから来たんだ?」
「知らん」
「いつからいるんだ?」
「知らん」

 黙秘権を貫き、何も言おうとはしないのはわかっていた。人間らしく、愛玩動物と戯れている姿を見られて気恥ずかしいのだ。
 いくら他人のふりを決め込もうとも、後ろ手を見ながら断続的な低い鳴き声をあげるチョコボが証拠。痺れを切らせてつつき始め、ついに噛りかけの鳥用のおやつが顔を出した。
さきほどまでもらっていたものを取り上げられたのだ。そりゃあ、チョコボも不平不満があるだろう。

「……チョコボ、好きなのか?」
「悪いか!?」

 悪いなどと微塵も思っていないのだが、喧嘩腰に言われたら仕方ない。
投げ捨てられたギザール野菜を、魚の踊り食いかのように食べるチョコボは実に楽しそうである。
 キュピキュピキュピ。
「まだ足りない」と鳴く姿に、初めは嫌悪感を現しながらも、すぐに魔法で取り出した野菜を投げ与えるのが見えた。
一斉に群がった尾羽たちが、空に向かってユラユラ揺れる。あえてなにも言わなかったが、この暴君様は動物に優しくないだろうか。

「可愛いな」
「は?」
「お前も含めて」
「ついに狂ったか」

目頭をつり上げたところで、甘噛みされ、脇の下に無理矢理頭を突っ込まれと、じゃれたい放題。手で追い払おうとも、チョコボにジェスチャーはわからない。構ってもらえていると勘違いし、いっそう体を寄せてくる。

「親だと思われてるとか?」
「虫酸が走る」
「懐いてるなら、城で飼えばいいじゃないか」
「利用価値のないものに興味はない」
「可愛いだろ」
「なんの関係がある」
「可愛は正義って言うし」
「ちゃんとした言葉を話せ」

 キュピー!と声高々に鳴くのは、一体なんの意味があるのだろうか。やたらとフリオニールの頭を小突くのは、じゃれているというには激しい痛みを伴う。勘弁してくれと距離をおけば、嘴を楽器のように擦り合わせる。これは、威嚇されているに違い無い。

「好きなものと一緒にいられる、幸せなことだと思うけど」

 黄色いトサカを撫でてやると不思議そうな小さな目と、小さくなる瞳孔。何かをした覚えはないが、随分と警戒されているもの。うんともすんとも言わないところに不安を感じ、手を離すと皇帝の傍らへと走っていってしまった。

「この畜生は貴様らで面倒を見ろ」
「まぁ、バッツとエースは喜ぶけど」
「代わりに貴様を城で飼ってやろう」
「チョコボと俺は同じ価値か?」
「愚鈍な虫けらめ……」

 今にも噛みついて来そうな赤鬼の形相は、まるで野犬のよう。

「どちらかというと、お前が飼われる方じゃないか? ……なーんて」

 真っ赤な顔が綺麗だな、と思った瞬間、頬に再び鈍い痛みが走る。おまけに、完全に主人の敵と見なされ、チョコボの鋭い蹴りが脇腹を穿った。

++++

フリマティで「君が頑張って隠してる、その弱くて愛しくて最高に可愛い所」とかどうでしょう。

照れ隠しが拳に出るタイプ

20.2.28

[ 762/792 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -