えふえふ | ナノ



せいやのおくりもの

※共通お題「お前が欲しい」


 フリオニールは目を丸くするしかなかった。
口は開いたまま塞がらず、目は一寸も動かない。唯、目の前で腕を組んで不機嫌を露わにする皇帝を見つめるしかできなかった。

「今、なんと?」
「2度は言わん」
「え……いや、本当に聞こえなかったんだ」
「欲しいもの、と言ったな。貴様が欲しい」

 何の話をしていたのか? それは近づいてきた聖夜の贈り物の話をしていたのだ。
仲間たちから聞いたのだが、12月には聖夜と呼ばれる特別な日があるらしい。神とも呼ばれた人物の誕生日らしいが、いつの間にか人々にとって一年の苦労を労う祭りになったようだ。ある人は家族と団らんを過ごし、ある人は恋人と蜜月の時を過ごし、ある人は自由気ままにすごす。千差万別ではあったが、人々にとってなくてはならない日。クラウドたちから聞いて、フリオニールも目を輝かせたものである。
 さて、この祭りであるが、大切な人にプレゼントを送る風習もあるらしい。そこで恋人である皇帝にもと思ったのだが、悔しいかな彼の欲しい物がわからない。
遠回しに聞くのは性に合わない。「今欲しい物があるか」と問えば、返ってきた答えがこれだった。「貴様が欲しい」と。
一体何を考えてそんな言葉が出たのかはわからないが、真っ直ぐな目から嘘やではないとわかる。どう答えていいかわからず、頬をかいていると彼がまた真っ直ぐ見つめてきて口を開いた。

「俺でいいのか」
「貴様で譲歩してやる」
「女、ではなく」
「貴様でなければ意味がない」

 もう照れ隠しもやめたようだ。直接的で大胆な告白に顔を赤くしながらも、どう答えていいかはわからない。混乱するフリオニールを他所に、皇帝は淡々と言葉を選んでいた。

「金や権力で、何でも手に入る。しかし、貴様だけはどうしても手に入らん」
「そりゃ、人は金では買えない物だから」
「解せぬ」
「解してくれ」

 なんでも力ずくで手に入れてきた皇帝にとって、思い通りに行かない存在は信じられないものらしい。眉を寄せて首を傾げる。高身長でがたいのいい図体に似合わず、可愛らしい仕草をするものだ、心の中で吹き出した。

「それならば、サンタに頼めばどうにかしてくれるかもな」
「私以外の存在を崇めるなど、馬鹿げている」
「なら、諦めるか?」
「欲しい物は必ず手に入れる。それが私だ」
「どうやるんだ?」

 どうやるか。屈服以外は知らない彼は、考える仕草をしてみせる。どう答えるのかは楽しみではあるが、何かいい案を思いついたようで「あっ」と惚けた表情を見せた。

「色仕掛けか」

 思いついたものがそれか、欲に忠実な皇帝らしいと今度こそ声に出して笑ってしまった。みるみるうちに尖る空気と、止まらない腹の痙攣。 落ち着いた頃には、足を組んで身ら見つけてくる、拗ねた彼の姿があった。

「笑うな」
「いや、似合わないから」

 女に迫られたら落ちるかもしれないが、相手は男である。見た目は化粧で彩っていても、筋張った男である事は変わりない。
投げキッスをしても、そういう趣味の人と思われてもおかしくないだろう。しかし。

「でも、効くかもしれないな」

 彼にだったら、堕ちてしまうかもしれない。”そういう趣味”ではないが、人によっては別だ。

「ふふん。ならば試してみる価値はある」
「へえ」
「明日は城へこい。1日あれば十分我が手中に堕ちるだろう」

 今日は12月23日。明日の聖夜はどうなるか、今から楽しみである。

+END

++++
18.12.24


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