えふえふ | ナノ



ただ、君を

※皇帝女体化+無力化
※強姦表現あり
※フリオ←皇帝♀





 今の皇帝は、混沌の戦士に呪いをかけられ、無力なただの女であった。
 効果はこうだ。無尽蔵だった魔力も封じこめ、反動で発情してしまっているらしい。
元々彼女は魔法が得意、いや、魔法以外は力がないと言っていい。戦士たちの中で最弱。力が全てである男になんて敵う訳がない。
 美しい容姿で、気位も高い。普段から高慢な態度を取っていては周りの不評も人の苛立ちも計り知れない。彼女を助ける者などいなかった。
何度も無理矢理慰み者にされ、傷ついていた。一人ベッドの上で、裸体を震わせて泣いている姿も見た。犯されながら、助けを求める悲鳴も聞いた。
 ただ助ける勇気がなかったのだ。相手は複数で、力を持った悪漢たち。入っても敵うわけがない。そう言い分けをして自分を正当化させていた。
 そんな汚い小心者が、手を出すわけにはいかない。
いくら呪いのせいで発情しているとはいえ、彼女に無理強いをしたくない。必死で欲望を抑え込んで、何度も苦しんだ。

 ボロ雑巾のようにカオスの神殿に背を向け横たわる彼女を見つけたのは、つい最近の出来事だった。
破られた衣服が申し訳程度に体に張り付き、見えている肌は傷だらけ。サディスティックなプレイを強要されていたのだろう、縄や鞭の跡が見えて、反射的に目を背けてしまった。
 地に伏した顔から、表情は読み取れない。震えた腕で穢れた体を支えながらも聞こえてきた弱々しい嗚咽に、我に返る事が出来た。すぐさまマントを被せると、赤く血が滲む体を包み込む。濡れた目と視線が絡み合ったが、急いで抱き上げて彼女の城へと足を進めた。
 これ以上、一人になんて出来ない。
細い指が服を掴み、離すものかとしがみついてくる。応えるように腰へと手を回せば、鮮明に彼女の柔肌を感じる事が出来た。
「あ……、フリオ、ニール……」
 名前を呼ばれたのは初めてかもしれないが、感傷に浸っている暇もない。
一刻も早く彼女を安全なところへ。男たちから隠さなければ。
気を失った彼女を見て、ただそれだけを願い一心不乱に走り出した。
 城につくと、彼女を部屋の中へと押し込んだ。ベッドへと寝かして改めて姿を見つめる。
 白く豊満な体に、化粧が落ちても色気の漂う女の顔。掠れたアイシャドウに薄く開かれた唇が性的で、思わず見とれてしまった。
 そして精液に濡れ、乾いた身体。乱暴に抱かれて汚されたのだろう。涙で濡れた目が腫れて、痛々しくて、これ以上見ていられなかった。
 彼女を見ていると、強い雄の衝動が芽生えてしまう。
確かにいつもより女らしく、儚げな姿を見せられて思わず手が伸びてしまう。魔力がなければ抵抗も出来ないし、相手も濡れやすいのなら事に及ぶのは簡単だろう。
いけない。これ以上彼女を傷つけられない。
 慌てて扉の外まで駆け出したが、脳裏に張り付いた光景が離れない。
興奮しきった息を断続的に吐き続けると、衣擦れの音が聞こえてきた。彼女が起きたのだろうか。声をかけるより前に、背中にある扉が控えめに叩かれた。
「おい、虫け……義士。いるのだろう」
「なんだ」
「よかった……」
 心からの安堵の声に、胸が痛んでしまう。マントを強く握って唇を噛み締めると、体が壁を伝うズルズルという音がした。
「怖い……んだ……」
 扉の向こうから、聞いた事もない弱弱しい声を聞いた。顔は見えないが、泣いているのだろう。震える声で「助けて」と悲鳴が聞こえてくる。
「皆、私の事を性処理としか見ていないのだな……」
「今のお前は、力のないただの女だ」
「貴様も、私の事を性奴隷として扱うのか……?」
 姿や表情は見えずとも、怯えているのはわかる。恐怖して震える声に同情してしまい、本当のことが言えなかった。
「俺はお前を倒したい。ただそれだけだ」
「他の目では、見ていないのか?」
「……そうだ」
 嘘だ。
今すぐ扉を開け放って、その白く傷ついた裸体を乱暴に組み伏せ、犯したい。涙でぐちゃぐちゃになった顔を見て、大粒の宝石が流れる目を見て、優越感に浸りながら欲望をぶちまけたい。
 扉の向こうにいる美女は裸だ。服なんて破られて魔力もない。戻す力もなければ作り出す事も出来ない。押し倒しても、乱暴に扱おうとも抵抗なんて出来ない。
 ああ、なんて残酷な妄想をしてしまったのだろうか。
生唾を飲み込んで浅ましい自分の顔を覆う。ドアにもたれながら、ズルズルと堕ちていく。
 突然、後ろへと引っ張られる感覚がした。
慌てて足に力を入れると、扉が動いているではないか。迎え入れるように開かれた大きな扉に、中の光。そして、細く白い手が伸びてきて突然逞しい二の腕を掴んだ。
 非常に不釣り合いだ。男らしく筋肉質で焼けた太い腕と、折れてしまいそうなほどか細くか弱く白い女の腕。
凝視するのは、光の奥だった。光る金の髪と紫の目。キラキラと光って見えるのは涙だろう。また一人で泣いたのか、赤く腫れた目が物語っている。
「入ってこい」
「いや、待て」
「貴様は、私の事を穢らわしい目で見ていないのだろう」
「……すまない、その……」
「他の男は我慢ならんが……貴様なら、悪くないかもしれん」
 絡み付く細く白い腕が、中へ来いと急いてくる。彼女が誘うのなら、悪くないのかもしれない。共に入り込もうとして、やめた。
 胸を隠す為、巻き付けられた布に体を覆う短いシーツ。殴られて青痣となり、縛られた事で鬱血して赤くなる腕。傷ついた裸体を見て興奮してしまう自分がいることに気がついた。
 最低だ。
 きっと、彼女へついていけば、もっと酷い事をしてしまう。今まで苦しめられた分、怒りも憎しみも他の者よりも強い。元の世界の記憶は完全ではないが、奪われた物は心が記憶している。突き飛ばすようにはね除けると、丸くなる目。伏せられ、傷つき、離れていく視線。咄嗟に謝るが、目を合わせる事なんてとてもできなかった。
「……見張っているから。休め」
 いくら誘われても、一線を越える勇気がない。例え彼女が赦しても自分自身が許せない。一夜中ずっと悶々としながら、扉を前で自身を慰めているしかなかった。
 同情の気持ちが湧こうとも、相手はあの皇帝だ。おとなしくしているのも、力がない今だけだ。感情に絆されて許してしまっては、また惨劇が繰り返される。大切な人が、町が失われるのはもう見たくない。取り返しのないことになってしまう前に、倒さないとならない。
 魔力が戻ればいつも通りになる。弱った彼女を見て心乱されることもなくなるだろう。また憎悪と殺戮の繰り返し。いつもの日常。
だが、その日が来てほしくない。それが本音だった。

 この城にいては、いつ暴漢が襲ってくるかわからない。起きたら急いでこの場を離れる事にした。朝日が昇って間もないし、さすがに誰もいないだろう。
白く小さな手を握って引くと、急いで魔の城の階段を駆け下りた。
まるで、姫を浚って駆け落ちでもしている気分。しかし浮かれている場合ではない。
 不安な表情を隠さない彼女に「心配するな」と笑いかけると、マントを被せて前だけを見つめる。
 鬱蒼と道を阻む木々をくぐり抜け、神聖な湖を横切り、瓦礫を飛び越える。途中イミテーションから彼女を庇って戦うのには骨が折れた。沼を渡るときも裸足である彼女が汚れないよう抱き上げた。触れた部分がやけに鮮明に感じられ、体も熱くなったが意識をしてはいけない。甘くか細い声で「悪くない」と呟いているのは聞こえないフリをした。
やっと目的地についたと、緊張の糸が解けて倒れ込んだのまでは覚えている。
仲間たちの心配する声と、地面の冷たい感覚が顔に触れても意識は遠のくばかり。やっと、ここなら安全だ。そうわかっただけでも笑顔になれる。体を激しくゆすり、名前を呼ぶ声たち。それが最後に聞いた音だった。

 意識が戻ったのはいつ頃なのだろうか。まだぼやけた目からは、周りの様子はわからない。窓も開いていないし、埃っぽい部屋の中では外の気温すらわからない。はっきりとしない視界の中、見えてきたのは間近に迫る穏やかな彼女の表情だった。
不安そうな表情であったのが、あっという間に笑顔になり「よかった」と聞こえてきた。もしかして心配してくれたのだろうか。動かない体と頭で思案していると、優しい指が頬を撫でた。
「目が覚めたか。ご苦労だったな」
 身にまとうローブは女戦士たちが準備をしてくれたのだろう。そして、自室で膝枕をされているという状況に気がついて、顔が赤くなった。
「……どれだけ、寝ていた?」
「随分長く寝ていたぞ。今はもう夜だ」
「そうか……その間、ずっと、このまま?」
「そうだ」
 目が覚めるまで介抱してくれていたことに驚きが隠せないが、それよりも体を起こさなければならない。慌てて身を起こそうとはしたが、肩を押されて膝まで戻されてしまった。
「まだ本調子ではないだろう。ゆっくりと休め」
 優しい彼女なんて初めてだったから、虚をつかれてしまった。母親が子供を寝かしつけるように、心地よいリズムで肩を叩かれる。段々と襲ってくる眠気に、彼女の歌声。もしかしてパラメキアで伝わる子守唄なのかもしれない。音を辿る、というたどたどしい声ではあったが、妙に耳に馴染む。段々幸せな気分に浸ってきた。
「おやすみ、私だけの騎士」
 目に深く刻まれた隈は、昨日も眠れなかった事を意味する。
咄嗟に首へと抱きつくと、横へと押し倒して拘束する。
 恐怖に怯えて眠れないなんて、いくらなんでも可哀想である。今なら眠気に負けて性欲も抑えられるから、せめて安心出来るように腕に閉じこめてしまおう。誰にも奪わせないように、と抱きしめてすり寄れば、甘い悲鳴が聞こえた。
「うぅん……貴様……」
「一緒に、寝よう。なにが来ても、俺が守るから」
「本当、か?」
「大丈夫さ。俺を信じてくれ」
「……その言葉でどれだけ救われるのか、わからないだろうな」
 最後までは聞こえなかったが、小さな声で「おやすみ」と囁きリップ音が聞こえてきた。もうこの手を離したくない。例え悪魔でも地獄の死者でも、彼女は渡さない。強く抱きしめた体は細く、女の物だった。
 夢を見た。
 宿敵である彼女と、幸せに笑い合う夢を。
色とりどりの薔薇が咲き乱れる平和な花畑の中、二人きり。ゆったりとした部屋着で傍らに座り、夢を語るフリオニールを彼女は嬉しそうに眺めていた。
邪気なんてない。純粋に彼の言葉に賛同し、笑い合う。
 そしてゆっくりとキスを交わして、花の上に押し倒す。衣服を脱がしていくうちに、彼女の体が赤く染まっていくのが見えた。
薔薇の刺に傷づけられ、白い肌の上を赤い斑点が走る。流れる血が、周囲の花たちを、髪を赤く染めて血溜まりのようだ。
 それでも、彼女は笑って両手を伸ばしてくる。「来てくれ」と柔らかく囁きながら。
 痛々しい光景に青ざめ、目が覚めた。冷や汗が吹き出し、動悸が止らない。
横には穏やかに眠る彼女の姿。余程疲れていたのだろう、深く眠って起きる気配はない。
このままではいけない。
彼女を殺してしまう。慌てて服を掴んで立上がろうとすれば、裾を掴む彼女の手が見えた。
寝ているのは間違いない。それでもすがるように掴む力は強く、離してくれそうにない。
「……ごめん」
 掴まれている上着を脱ぐと、彼女の体を隠すようにかける。
一緒にいると約束はした。それでも、一番傷つけてしまうのは自分だろう。
彼女は、心を許してくれている。そんな相手に強姦されると、深く心に傷が入るだろう。それだけは嫌だった。避けたかった。
 外の風を浴びにいき、空を見上げると、憎いほどに清々しい青い空。底が知れず先が見えず、二人の関係性を映し出しているようであった。

 彼女は定期的に発情しているようだった。
女性たちに任せてはいるのだが、どうやら性欲が溜まって苦しんでいるらしい。
夜な夜な甘い声が部屋から聞こえてくるし、通りすがった男を誘い込もうとする。
 一度、ジタンを誘って影でセックスしている姿を見かけたことがある。目を布で覆っている理由はわからないが、立ち去ろうとして悲鳴で足を止めてしまった。
「あぁん……、フリオニール、フリオニールぅ……っ!」
 いるのがバレているのだろうか。いや、喘ぎながらも抱きつく姿から、無意識なのだろうとわかる。
名前を呼ぶほどに、求められている。赤くなる顔を抑えるしか出来ない。それでも、今彼女は別の男に抱かれているのだ。混沌の者たちに、物のように扱われるのではない。大切に優しく抱かれている。それだけで、安心出来るはずなのに。
「あっ、あああつ! フリオニール……フリオ、ニールっ!」
「なあ、俺の事、呼んでくれよ……」
 肉同士がぶつかるパンパン、という音の中でジタンの悲痛な懇願が聞こえる。抱いている女に別の男の名を呼ばれるのは、屈辱だろう。それでも、彼女はひたすら一人の名前を呼び続けた。
「フリオ、ニールゥ……っ!」
 激しく揺すられる体に、揺れる心。
手を出して、彼女と言う花を抱き潰してもいいのだろうか。いや、そんな訳がない。
 見ないようにして急ぎ足でその場を去ろうとして、彼女と目が合った。
見開かれる瞳には、疑心暗鬼の光。
約束をしたのに、裏切ったと怒っているのかもしれない。目を合わせられずに急いで逃げ出すと、一層大きな声が響いた。「フリオニール」と。
 皇帝の興奮作用は落ち着くどころか、悪化しているようだった。
昼間は落ち着いていたのに、今は常に発情して人と会えない状態。
人に触れられると、我慢出来ずに誰であっても拒めないそうだ。心と言葉は嫌がっていても体が受け入れてしまう。
生理も頻繁にきて「痛い痛い」と金切り声が部屋から聞こえてきた。困惑しながら女戦士たちは手を握っているだけしかできない。
 心が弱り泣く回数も増えた。女の表情をするようになった。威厳はもうなくなっているが、美しさに変わりはない。
そして、ひっきりなしにフリオニールの名前を呼び続ける。欠けた心を補うように、足りないピースを塞ぐように。それが彼女の誘惑だというのもわかっている。
 甘さではなく、悲痛な泣き声が混ざっては、耳を塞ぎ続けるのも限界なのかもしれない。
 数日経ったある日、私室のドア越しに直接呼ばれて逃げ道がないのだと悟った。「夜に、一人でこい」と。
 この言葉の意味することはわかっている。彼女も女だ、男を呼ぶという事は覚悟を決めてのことだ。
これ以上、避けては可哀想である。それに誘う女の想いを無碍にすると後が怖い。恥をかかせると確実に怒るのが皇帝という人物なのだから。
 皆が寝静まった星の輝く夜。月と手に持つろうそくの灯りだけを頼りに古ぼけた廊下を進んでいく。
間借りしている屋敷に対しては失礼かもしれないが、まるで幽霊でも出てきそうな雰囲気である。それでも恐怖は感じなかった。ここで立ち止まってしまい、彼女を傷つける方が怖かった。
 一歩一歩、軋む板を踏み越えて部屋を目指す。彼女の場所はよく覚えている。必ず毎日訪れては、彼女の様子を伺っていたのだ、間違えるはずがない。
あとドアを一つ越えた、隔離した場所に彼女はいる。
 しかし、今日はいつもとは違う。中の様子を伺うだけではなく、入らなければいけないのだ。ゆっくりと扉を叩くと「入れ」と掠れた声。
 また、一人泣いていたのだろうか。居ても立ってもいられなくなり、急いで扉を開けると甘い匂いが鼻をくすぐる。お香だろうか。気分を高揚させる匂から、想いは痛いほど伝わってくる。
 彼女は目の前にいた。全身に赤いリボンを巻き付けた姿で。
性的な場所だけは小さな布で隠しているが、敏感になった体は擦れてしまい感じている。小さな悲鳴、立ち上がる乳首と濡れるリボン。触ってもいないのに出来上がっていく肢体に最早同情を覚えた。
ゆっくりと閉まる扉の音がやけに鮮明に聞こえる。恥ずかしそうに俯きながらも手招きをされて、おとなしく近づくしか手はなかった。
 一歩踏み出す度に、心臓がやけに煩い。質素なベッドへと近づく度に、彼女の顔が綻び幸せそうにはにかむ。
その笑顔が脳裏に張り付いて離れない。本当に綺麗で美しくて儚くて、大国を牛耳る王の顔とは思えなかった。ただの小さくひ弱な一人の女性が、目の前に座っていた。
「……待っていた」
 広げた両手に誘われ膝をつくと、母のように抱き込まれる。
自然と胸へと顔が埋まる形になるが、彼女は気にした様子はない。それどころか力が強くなり、深くめり込んでしまう。
弾力の有る胸は大きく、柔らかくマシュマロのようだ。身じろぎしたことでリボンがずれて、ピンクの控えめな乳首すら顔を出す。
 女に耐性なんてない。慌てて体を離すように促そうとして耳を疑った。
また、彼女が泣いていたから。
「やっと、お前が来てくれた……」
 心からの叫びはしっかりと耳へと入ってきた。すがりついてまとわりつく腕。もう離さないと背中に腕を回して、涙で濡らしてくる。
「どれだけ誘っても、貴様だけは私の相手をしてくれなかった……」
「皇、帝?」
「私が、赦したのは、貴様だけなのに……」
「しかし、俺はお前に酷い事をしてしまうかも」
 そう言いかけて、口を塞がれた。涙でしょっぱくなった唇に、伏せられる濡れた睫毛。
何も言えなくなった。
 応えようと吸い付けば、嬉しそうに舌を絡めて首へと抱きついてきた。人肌を求めてすり寄ってこられて、思わず背中へと腕を伸ばす。解放されたのは、彼女の目から一粒の涙がこぼれたときだった。
「最近、女たちまでもが私に発情している」
「えっ」
「私は、虫けらに抱かれる趣味はない。貴様以外には、もう」
  言える事は何もなかった。ここまで想われているのなら我慢することもない。
「それと。マティウス、と呼ばないと返事はしない」
「お前は皇帝だろ?」
「……」
「マティ、ウス?」
「ん」
 照れながらもはにかんだ笑みが可愛い、それが素直な感想だった。
彼女は騙すのは得意だ。それ以上にプライドが高く、真っ直ぐな性分だ。
 名前と思われる単語を言うと発情した犬のように荒く息をつき「早く早く」と急いてくる。
きっと、最後の理性を振り絞って伝えたかったのだろう。を再びキスをして落ち着けようとしたが、酸素不足が逆効果になったようだ。
目がハートに見えるくらいに蕩けて、はっはっ、と開口呼吸を繰り返す。
 これではもう獣の発情期である。本能のまま求められては、恥ずかしくもあり嬉しくもある。
「早く、私を抱け……」
 これ以上は焦らす事はできない。自分も、彼女も。
襲い来る彼女の魔の手をひいて体ごと抱きしめる。
「わかった。もう逃げない」
「フリオ、ニール……」
「お前の事、嫌いだ」
「え……」
「でも、好きだ。だから、この気持ちに素直になる」
 まだ彼女の事を完全に信用したわけではない。それでも、苦しむ姿を放っておくことなんて出来ない。深く口づけると、ゆっくりと揺れる体。腰を揺する所を見ると、もう我慢出来ないのだろう。すっかり雌の表情になり蕩ける彼女を見て、長い髪へと手を伸ばす。
「今から、お前の事をめちゃくちゃにしてやる。覚悟しろ」
 これは、好戦的な宣戦布告。頷く事以外許されない告白。

+END

++++
今裏が描けないようです

17.1.26


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