えふえふ | ナノ



第一回誰の者でしょう?

(誰の者で賞)

 何故こんなことになったのだろう。ぼんやりと目の前で延々と繰り返される戦いの輪廻に頭を抱えたくなる。
直接的に巻き込まれないのはまだましである。勝手に敵味方共々潰しあっているのは愉快ではある。
だが「間接的な原因を作ったのはお前だ」なんて言われて誰がいい顔をするだろうか。クジャはため息をつくばかりである。
「紅茶はいいのですか?」
「よくこの状況でお茶が飲めるね」
「大丈夫。君に手を出さない限り、飛び火はこないよ」
「そうですとも」
 血飛沫飛ぶ戦いを見ながらお茶を飲んでいるほのぼの兄弟から恐怖すら覚えたが今は気にしている場合ではない。
ここは戦場が小さく見えるほど距離はあるのだが、それでも魔法が飛んでくるのが恐ろしい。
 参加していない戦士たちも、ため息をつきながら阿鼻叫喚と爆煙の上がる大乱闘を眺めている。勿論止める勇者はいない。
 一体何が起こったのか、何が目的なのか。順に追って説明していこう。

*

「はあ・・・・・・」
 暗い闇に包まれた城に、クジャのどんよりとしたため息が聞こえる。
珍しく混沌の戦士たちが集まり、長い机を囲んでいた。まとまりのない会話とメンバーの中、1人頬杖をつき無意識に出てしまったのだ。
 聞こえるようにしたつもりはないが、耳聡い彼らの耳には届いて、間髪入れずに声がかかる。いつもは空気すら読まないのに、不思議なものである。
「どうした。元気がないぞ」
「魔人、君か」
「こういう機会も少ない。悩みがあるなら聞こう」
 混沌の戦士とは思えないゴルベーザの気遣いに、ときめくのはセシルだけではない。クジャすらも思わず頬を染めたところで、不穏な気配が漂った。これは、嫉妬の気配である。
口を開こうとした瞬間、手で制止がかかった。
「場所を改めよう」
「なんで」
「周囲が不穏だ」
 周囲を見回せば、男たちが目を光らせてこちらを睨んでいる。別段恨みを買った覚えはない。
強いていうなら、クジャと話したことが原因なのだ。だがそれを本人は気づくはずがない。
「いつものことじゃないか」
 そんな周囲のオーラすら、いつものことで慣れてしまっているのが恐ろしい。ケロリと答える彼とは裏腹に、声をかけてしまった抜けがけをした不貞の輩は、いつ攻撃がくるかの危険に身構えるしかない。
「そうではない、そうではないのだ……おい誰だ魔法を投げたのは」
「こりゃ2人きりが一番まずいんじゃねぇか?」
 咄嗟に助け船を出してきたのは、首を鳴らすジェクトだった。
 さすがに殺気だらけの空間で眠るのは出来ないようだ。当たり前である。周囲にガンを飛ばすが、逆に殺気を送られる始末。
睨み合いを続けるジェクトと他の男共を尻目に、クジャは遠い目をしていた。
「・・・・・・兄弟ってなんだろうね」
 マイペースに呟かれた言葉は、哲学的な問いだった。
「あの尻尾の生えた少年のことか」
「家族とか、兄弟とか、仲間とか。僕とは無縁だったから」
「何かあったのか」
「再会してから、やたらベタベタしてくるんだ」
 「なんだとうらやらしい」「ちょっと小猿を始末してくる」さまざまな怨恨が聞こえてくるが、等の本人は全く気にしていない。本当に慣れとは恐ろしいものである。当の本人は頬杖をつきながら憂いを帯びた表情をするだけだ。
「そうだな。嫌なら話し合えばどうだ」
「・・・・・・別にそこまで嫌じゃないけど」
「どう反応していいのかわからないのか」
「・・・・・・うん」
 ガタン、ゴトン、ガッシャン。最後にボン、と爆発物の音がする。後ろで起こった小さな混乱と、感情のあまりに立ち上がる面々。ジェクトが臨戦態勢を取るが、暴走も時間の問題だろう。
 今にも武器を握り飛び出すところだった。扉が勢いよく開け放たれたのは。
「親父! 今日こそ決着をつけるぞ!」
 秩序の戦士であるティーダだった。
敵陣の正面を堂々ときるのは無謀と言えるが、そんなことはなかった。彼らの殺意の対象はジタンただ1人、他は眼中にないのだ。
禍々しい殺気と怨恨の中でも怯まないのはさすがと言える。単身で父親へと切りにきた、と思いきや。壁からも気配を感じた。
「おい空気読め! バレただろ!」
「覗きは犯罪ッス。お前も会いにきたんだろ」
「影から見守って、後で行くから今はやめろ!」
 聞こえてきた声の主は、ジタンではないだろうか。恐る恐る顔を出せば、皆の視線が集まる。これは殺意を帯びた目である。
 しかしめげない負けない気にしない。すぐさま兄を取り囲む面々に殺気を送り、毛を逆立てた。愛しの兄のためならなんとやら、である。
「オイオッサンたち! クジャにナニしてんだ!?」
「何もしてないが」
「誤解だチビスケ」
「チビスケ!?」
 同時刻にオニオンナイトとシャントットはくしゃみをしたらしい。それはともかく。
「誰が豆粒ドチビだぁぁぁぁ!!」
「それ、違うだろ」
「言うほど小さくないし」
「異説仕様なだけじゃね?」
 怒り狂い、敵陣へと飛び込むジタンと、怒声を上げながら迎え撃つボスたち。まるで動物園を見ているようであるが、本人たちは本気なのだ。
 遅れて現れた飼い主、もといヴァンたちは他人のフリである。飛んでくる魔法すら壁で防げるくらいには離れている。正直関わり合いたくはないが、家事と喧嘩は戦士の華だからしょうがない。
遠い目で悪化していく戦場を眺めていると、クジャがため息をついた。
「何しにきたんだい。止めておくれよ」
「ジターン、目的見失ってないか・・・・・・って聞いてないか」
「親父とブリッツの決着つけにきたのに」
 むくれる彼が子供に見えて、ときめいてしまった。可愛い、と頭を撫でてみると驚いたように顔をあげたが、嫌がりもせずすり寄ってくる。
 弟ができたらこのような感じなのだろうか、と考えて現実を見る。
 そうだ、そこにいる黄色い少年が弟だった。
乾いた笑いが漏れたところで、ティーダがパアっと笑顔を向けてきた。
「そうだクジャ、ブリッツしようぜ!!」
「彼らを放っておくの?」
「なら止めてほしいッス」
「やだよ面倒臭い」
 誰が頼まれてこの惨事に首を突っ込むというか。
 無駄な抗争に巻き込まれるか、それとも平和な世界に逃避するか。答えなんて言うまでもない。
悩む間もなく頷くと、両手を上げて喜ぶティーダが見えた。正直、子犬のようで可愛い。
「見てるだけなら問題ないよ」
「本当ッスか! バッツ、ヴァン、やろうぜ!」
 尻尾を振りながらボールをかかえて走り出す面々に和みながら、後ろが少し気になってしまった。
振り返ろうとして、やっぱりやめた。振り返ればきっと後悔する。なぜなら、気負えくる口論が、ただの子供の喧嘩になっているから。
 「年考えろ犯罪者」「近親相姦も犯罪だ」「若気の至りだし」「自分の性別を見てから言いなさい」
これは他人のふりに限る。楽しそうに走り出す彼について行くことにした。
 平和を噛みしめつつボール遊びを眺めていられるのも束の間。いち早く気がついたのは。目敏い弟だった。
「ティーダテメェェェェェェェ!!」
 過保護なまでの目配りで兄の消失に気付き、友人に対して容赦のない膝蹴りを打ち込んできた。
反射でボールを守った精神はスポーツマンとしてあっぱれ。だが本体は壁に激突してそれどころではない。
 もう説明しなくともお分かりだろう。面倒なことにこれだけ騒げば暇人達は知らず知らずのうちに集まるわけで。グダグダ規模が両陣に抜け目なく広がるわけで。
これから起こるの面倒事の準備期間に過ぎなかったことには、コスモスとカオスくらいしか知らないことだった。
 第一回クジャ争奪戦開幕。

 最初は単なる遊び相手の取り合いだったのに、今は目的が大きく違う気がする。
現場を見れば、死屍累々というレベルではない。上級魔法は落ちてくるわ、剣と剣がぶつかる音がするわ、手を抜かない本気の戦いが繰り広げられている。神々の闘争でもここまで頑張ってほしいものである。
 止めるのも面倒だし巻き込まれるのはゴメンだ。クジャは考えることをやめて、優雅にカップへと口をつけた。見ない振りである。
「かれこれ1時間は争ってるけど、誰か止めないのかい?」
「止めるのが面倒なの」
 オニオンナイトがイライラしながらも億劫に答える。
ストレスが溜まっている理由は、走りに走り回って戦場がコスモスの住む聖域になったせいである。謎の喧嘩に巻き込まれた秩序の戦士たちはありがた迷惑である。
邪悪な者たちが蔓延ってしまった聖域に、渦巻くのは憎悪とストレス。早く浄化してほしいものである。
 ちなみに全くクジャに興味を持たなかったガブラスは審判に駆り出されていたために、哀れ惨禍の中央である。シャントットは「無様ね」と笑うだけだ。
「まぁ気がすむまでやらせておけばよかろう。巻き込まれるのは面倒だ」
「いつ巻き込まれてもおかしくないから困ってるんだけど」
「もしもの時は君を盾にするからね」
 ファファファと笑うエクスデスだが、全く笑える要素がない。冷ややかな視線の中、水で薄めた肥料を飲む姿には、八つ当たりではあるが怒りすら覚えてしまう。
 突然、空気を切る音がした。慌ててマントを掴むと、オニオンナイトとクジャはエクスデスを盾にして背中に隠れる。ザクっと鈍い音が聞こえたと思えば、顔に空いた空気穴へと包丁が刺さっていた。
 他の素早くテーブルを引っ付かんで動かす月の兄弟と女性陣。他はお茶と受け皿を持って立ち退いた。こんな時だけチームワークがいい。
 包丁が飛んできた方向からはどす黒い殺気を感じた。これはもしかしなくても。
「何ちゃっかりクジャの傍をぶんどってんだ・・・・・・あぁん?」
 ガチャリ、ガチャリ。そこにはベルトを物々しくならし、悪鬼の表情をしたジタンが迫ってきていた。2本の包丁を握るジタンから殺意の波動を感じる。
「ジタン、ガラが悪いよ。それに包丁はやめなさいってあれほど・・・・・・」
 「お前は母さんか」と皆がつっこもうとしてやめた。萱の外にいたはずのエクスデスですらこの様である。クジャの話題は死を呼ぶ。
 ゴクッと生唾を飲み込みながら倒されたエクスデスを見ると、目のようなところからダラダラと液体が流れていた。これは血ではない。
「うわ、なんか樹液が出てる・・・・・・」
「鼻血か!? 鼻血かこの樹木野郎!!」
 文字通りケフカから火の粉がかかり、炎上を始めました。これはマズイ。
キャンプファイアーのごとく薪をくべ始め、「ぐぼぉぉぉぉぉ・・・・・」と切ない断末魔が聞こえてきた。1人昇天である。
「後は残りの害虫だ・・・・・・」
 包丁を引きずりながら敵に突っ込んでいく姿は、ホラー映画でしかない。完全に目が据わった彼を止める術なく静かに見送った。
 ちなみにエクスデスの灰は地に帰り、新たな生命として芽吹くだろう。
 血の海が広がり始める中、コスモスはただただ微笑んでいた。この神は本当に秩序の神なのだろうか。疑わしい視線を向けていると、背後から視線を感じた。
邪気はないが真っ直ぐ射抜くような視線は誰だろう。ゆっくりと振り返るとウォーリアが真剣な顔をしていた。
 これは見つめていた、なんて生易しいものではない。狩人の目だ。
「・・・・・・なんだい。喧嘩を売っているのかな?」
 不機嫌丸出しで低い声を出すが、拗ねた表情で迫力は台無しである。ここにいるもの全員が「可愛い」とまで考えてしまった。
 唐突に、ウォーリアが動いた。なにをする気なのか、と身構えると。
「焼けないのか?」
「……何が」
「足だ」
 指を指された先には、白い太腿があった。怪訝な顔をしていたクジャだが、話題が話題なだけに険が抜けてしまった。キョトンと相手の顔と自分の足を見比べると、嬉しそう胸を張った。
「日焼け止めを塗っているよ。当然だろう」
 「当然なの?」とティナに問うオニオンナイトと「焼けるなら隠せばいい」冷静なライトニングの一言に頷く。
 ちなみに生足の話題に反応した数人には、プチメテオが落とされた。変態死すべし。
「そうなのか」といいながらも、真っ直ぐ足を凝視するウォーリアも十分変態ではあるが、天然故致し方ない。
「あれはいいのかな?」
「天然だから、悪気はないのよ・・・・・・」
 大切なことだから、2回言おう。天然だから仕方ないのだ。
「いやよくねぇ、よくねぇよ! それはセクハラだっての!!」
「うーん、男同士だからなんとも言えないけどな」
「セクハラって、セクシャルハラスメントの略ッスよね?」
「今はすごくどうでもいい」
 嬉しそうに告げるティーダは、シャントットに褒められていた。それでいいのかはわからないが、本人が嬉しそうならばなに言えまい。後ろで父親も頭を抱えていた。
「コイツにとったら大切なんだよ」
「頭のできの悪い息子と共に帰れ」
「お前が帰れ。金ぴかが不快で目がイテェ」
 目を合わせることなく喧嘩が始まったと思えば、唐突に爆音が上がった。これは大惨事大戦の始まりだ。
「罪人ごときが!!」
「やんのかあぁ!?」
 元から皇帝とジェクトは仲が悪かったが、ついに殺し合いを始めてしまった。
クジャが関係のない、ただの私闘とわかれば誰も見向きもしない。勝手にやってろ、という声から、ライバルが減ることへの心からの邪悪な笑顔すら見える。
「親父ー、殺るなら他所行けー」「ジェクト。殺るなら徹底的にお願いします」と、野次が飛ばされる程度だ、ではなく。今なにか聞こえた気がする。
「え? 仲が悪かったのか?」
「失礼ですね。貴方の目に私達はどううつっていたのですか」
「の、ノーコメント・・・・・・」
 皇帝とアルティミシアは、実は一緒にいただけで仲が悪かったようだ。顔を歪めて怨念すら込められた眼光に、スコールは口をつぐまなければならなかった。余計なことを口走ればナイフの餌食だ。
 怒り心頭な彼女から逃げるように、オニオンナイトは視線を泳がせた。
そこで一つ、疑問が浮かんだ。
「あれ? これってクジャの取り合いだよね?」
「そうだが」
「クラウドやフリオニールがいないと思ったら、参加してたんだ」
 遠くの喧騒の中にいる意外な人物を見てオニオンナイトは首を傾げた。
クジャ馬鹿なジタンはわかる。彼を筆頭に、遊び相手がほしいティーダ、面白そうで参加するバッツ、目が怪しい皇帝とセフィロスとガーランド、あとは何を考えているかわからないフリオニールとクラウド、巻き込まれたジェクトである。
 恋愛には興味がなさそうな、ましてや男に興味を持ちそうにない顔ぶれに意外すぎる一面を見て疑問を持つのも仕方ない。
「人にも事情がある」
「事情、ねえ。ブラコンだからこそわかるのかな」
「うるさいですとも!」
「逆ギレされましたとも!?」
 ゴルベーザにまさかの逆ギレされましたとも。
別の場所でもただの私闘が始まろうとしているが、今回のメインは大乱闘のほうだ。カメラを戻そうと思う。
「こうなったら正々堂々決着つけるッス! あとイカと木は大切に!」
「誰がイカだ」
「お前だ半裸」
 ナンバリングZの二人からも不毛な火花が散り始め、ますます収集がつかなくなる。剣士とは思えない、力技な大暴れが始まると、大変危険なのである。
 そんな空気を気にしないのがティーダのいいところだ。二人なんて完全に眼中になく、ニコニコと邪気の漂う戦士たちに目を向けた。
「ドッジボールなんてどうッスか?」
「ドッヂボール?」
「ドッジな」
「ドッヂだろ」
「どっちでもいいだろ」
「よくない!」
 地方によって違うそうです。詳しく知りたい方は調べてみてください。
 言葉遊びはこの辺りにして、改めてカオスな面々を見回してみる。もうお分かりいただけたであろうか。
「ズルしそうな奴が多いな。特にボールに紛れて爆弾投げそうな奴とか」
「勝てばいいのだ」
 杖を手のひらに叩きつけながら鼻を鳴らす皇帝は、誰かが爆死しても反省すらしないだろう。
 確かに欲にまみれて暴走した者にルールなんて存在しないだろう。審判も無駄だとは思うが、皆は黙って見送るだけだ。巻き込まれたくないのだ。
 簡潔にまとまったルールは簡単。相手がピクリとも動かなくなったら勝ちである。
「ルールから嫌な予感以外しないんだけど」
「皆期待に答えてくれるよ」
「こういう場合は期待に答えられたら嫌なんだけど」
 いきなりカオスな展開である。
ちなみにルールはコスモスよりこれが皆らしいとのコメントを頂きました。本当に彼女は秩序の神なのだろうか疑わしい限りである。
「それよりもこれ、鎧を着てる方が有利じゃないの?」
「そうかな? 僕痛いけど」
「フルアーマーはなかなか強い」
 はっきり言おう。非常にどうでもいい会話である。
ましてや、まともにボールだけが飛ぶわけがない場所である。鎧や痛みの他に心配することなんて山積みである。
 それでも表情はわからないが力説するゴルベーザに何も言えず、そのまま皆は押し黙った。さて、現実逃避の時間だ。
「ところでクジャは」
「寝ておるな」
「あらホント」
「じゃあチャンスね」
 等の本人はすっかり飽きてしまい、離れた木陰で寄り添うようにティナと眠っていた。姉妹のように仲のよい姿を見ていると勘違いしてしまうが、彼はれっきとした男なのである。
全く起きる気配のない姿に舌なめずりをする一同。
 逃げろクジャ。笑顔で女装セットを持った一団が近づいてくる。
 それはともかく。
やはりというか、ルールなんて初球から爆弾と共に投げられてしまった。
そのまま怒り任せてボールを投げつけ、見事にクラウドの顔面に当たってしまう。
殺意しかないボール当て鬼ごっこをしている戦士たちだが、フルアーマー組が有利なようである。

「ウザイッスね! 鎧脱げよ!」
「儂にそんな趣味はない」
 ガーランドの後頭部に何度もボールを叩きつけながらも、ティーダは怒声を上げ続ける。首はガクガクとなっているが、ダメージとなっているかはいささか不明ではある。
「脱ぐって言ったらそういう思想に行き着くお前らが本気でキモい」
「いや、もう野郎が野郎を取り合ってる時点でキモい」
「急に冷静になるなバッツ!」
 突然真顔で冷静に見られても困るのである。慌てて口を抑えたところで、「言ってしまったか」という外野たちの憐れみの視線はやまない。
「それよりお前達親子はズルい。ボールは使い慣れてるだろう」
「うわ今更」
「早く気付けタシロ●」
「タシロ・・・・・・!?」
 挙げ句の果てには子供のような喧嘩すら始まる始末。無駄な罪のなすりつけ合いすらも始まった。ここには混沌の戦士しかいないのか。
「つかドッジボールとかまどろっこしいんだよ! 考えたの誰だ! オレだ!!」
「もうドッジボールなんて知らん! 支配してやる!」
「最悪だ!」
 状態だけでなく、思考もグダグダしてきた戦士たちの行き着く先は、これしかない。
ボールを爆発させて武器を握る姿は予定調和というか。スコールも黙って首を横に振るシリーズである。
「最初からこれが早いだろ」
「ですよねー」
「予想範囲内ですわ」
 言いたい放題な外野達である。しかし暴れまわる彼らの耳に入ることはない。
「で、こっちはこっちで」
「うん、出来た」
 寝てる賞品はすっかり着せかえ人形状態だった。眠っているのをいいことに、裾の短い女物の浴衣を着せてティナは微笑んでいた。
薄いピンクの布で花のついた着物で、胸にも何か詰めたのか不自然な膨らみもある。てに持っている猫耳ら何故寝ている相手を器用に着替えさせられたか、それは欲望のなせる技だろう。
 守りたい、この無邪気な笑顔。
「僕もそれ着たいな」
「セシル、男としてのプライドは?」
「だって可愛いじゃないか」
「ゴルベーザ止め、って期待できない!」
「ですよねー」
 すすんで女装をしたがるセシルを止めようとも、横では笑顔で微笑んでいる兄がゴーサインを出す。
カメラを構えてお兄さんは乗り気ですとも。止まりませんとも。
 女性陣が盛り上がっていたから気がつかなかった。変態共が静かになり、聞き耳を立てていたことに。
「何、女ものの浴衣!?」
「あぁ変態達が気付いた!」
 鼻血を流しながらも食いついた姿を変態と言わずなんという。よだれをぬぐう姿は言い逃れできない変質者だ。
慌ててクジャの前にバリケードを作ると、威嚇をしながら後退していく。懸命な判断だ。
「ってお主、変わった恰好をしているな」
「たまちゃん、可愛い」
「え? ・・・・・あぁっ、いつの間に僕まで!」
 油断ならない紅一点、ティナ。その短い攻防戦の間に、オニオンナイトにも女物着せて遊んでいた。本人も預かり知らぬ間というのが恐ろしい。
 皆の視線が集まり、貞操の危機を感じて唾を飲み込んだ。
「・・・・・」
「『お前はどうでもいい』みたいな目で見るな!! プチメテオォォォォォォ!!!!」
 やはりというか、別にオニオンナイトに興味はないらしい。白けた視線が通りすぎたところで、怒りのメテオ攻撃が炸裂した。ブレイブは怒りで限界突破済みである。
足の遅い者たちは皆、撃沈して断末魔もなく散った。自業自得である。
 残りはバッツ、ジタン、セフィロス、ティーダ。また面倒くさい面子である。
「バカに紛れて変態がいるな」
「黙れ」
「バカでも勝ったもん勝ち」
「ハイハイそうだろうね。よかったね」
「クジャー! というわけで起きろ可愛いけど危ない!」
「どういうわけで?」
 ジタンがどさくさ紛れて胸へと飛び付いたが、守ると見せかけて勿論わざとである。
「うっわ変態ー」
「ん、何・・・・・・? あ、ジタン・・・・・・?」
「ジタン起きたから離れるッス!!」
 予備ボールを取りだし思い切り投擲。顔面に直撃しうえ、ドゴオッという鈍い音。変に首が直角に逝ったからちょっとマズイかもしれない。あくまでちょっと。
「ジタン大丈夫!?」
「次はメイド服です」
「ちょ、オバサン何着せようとしてるのさ!?」
「私は着せ替えオバサンですが、何か?」
「開き直った!?」
 いつもはオバサンという単語でキレるアルティミシアだが、今日は完全に開き直った。余程着せ替えがしたいらしい。実は酒でも飲んでいたのだろう。
「ジタンなら知らないけど大丈夫だろ!」
「バッツ黒い」
「スーハースーハー」
「あれ気が付いた!! 早速キモいし」
「変な音したわりに回復早いね」
 目を開けたジタンの前にはメイド服と猫耳を装着され中のクジャがいた。
「俺の人生に一片の悔いなし!」
 どう考えても、死因がこれではヒロインが泣くであろう。
だが彼は満足そうに、口から盛大に血を吐くと地面に突っ伏しった。誰もがドン引きである。
「死んだか?」
「おかしな人の血をなくしました......」
「うわっ汚い! 血を吐かないでよ!!」
「ほうれん草いるか?」
「あらパシリさん。まだいらっしゃったのかしら?」
 派手に撃沈したジタンと、ひっそりと口を押さえて鼻血を垂れ流すセフィロス。ただの自滅である。
バッツは平気らしく可愛いとべた褒めしつつ、ティーダは猫耳を触って和んでいる。
「鬱陶しい! ボクジタン看病するから邪魔するよ」
「食べられないようにな」
「余計なお世話だよ」
 勝者は失神してるジタンでいいでしょうか。
この後どうなるかはご自由にご想像下さい。

+END

++++
ネタを頂いたそうですが生かせてる気がしません全然

09.8.18
修正18.1.11


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