えふえふ | ナノ



恋は盲目

※5000hit感謝オマケ

※つき合ってる前提
※現代パロ

一応僕たちは付き合っている。
だけど皆、それを知らない。

「エース、これ本当にバレないだろうな……」

「大丈夫大丈夫。堂々としてたらバレないよ。」

そして今、デートの真っ最中。
だが、どうしてもマキナはバレたくない人がいるらしい。だから、助言を実行して貰っている。

「カツラ被ってスカートはけば、まんま女の子だって。」

彼女、いや"彼氏"の眼光が鋭く光った。


事の発端はある寒い冬のある日だった。恋人ではあるが、マキナは人目につく場所での接触を嫌う。嫌がっている、というより怖がっている。周囲に関係が露見し、非難されるのを。だから一緒にいられるのは、勉強会という名目のデートだけ。特にどこにも行ってはいないが、立派なデートだとエースは思っている。
とまあ前振りはここまで。今日は快晴だし、一度は外でデートがしたかった。嫌がるマキナを「周囲は友達としか見ないから」「そこまで人は他人を見ない」と説き伏せ、押せそうになった瞬間にトドメの一言。

「変装したらいいんじゃないか?」

彼の髪と同じ蒼を被せ、こっそり女物の服を準備してやった。さすがにスカートはバレるとやめていたが、新品にツッコミはすれども何の疑いもない。違和感に首を傾げるマキナが愛らしく、顔は緩みっぱなしだった。さすが、見越し通りぴったりである。

そんなこんなで紆余曲折を経て、やっと外に連れ出せ、念願のデートとなったのだが。

「…知り合い、いないよな…」

縮こまりエースの影から離れようとしないのはいかがしたものか。密着出来るのは勿論嬉しい。だが先程から周囲の過度な視線が突き刺さって痛い。エースは目立つことに困らないが、マキナは困る。

(マキナを見るなよ……)


探る視線もある。だがそれよりも、奇異と興味の混ざった視線に腹がたつ。女性からはまだ許せる。男共からは、絶対許しはしない。

「いくぞ。」

「え、オイ…っ」

威嚇を周囲に、強く手を引き"彼女"を守るよう人混みを進む。

「堂々としろって言ったろ。」

「仕方ないだろ……恥ずかしいんだから…」

「じゃあもう脱ぐか?」

「そ、れは…」

少々気が立ってしまったのが前方不注意の原因。どん、とぶつかったのは自分のせいだろが、それにしてもマキナが怯えて――

「エース?」

「ごめんなさ……あ、レムか。ごめん。」

咄嗟に差し出した手を掴んだのは、見慣れた少女。奇遇だね、何してたの?なんて軽い会話を交わしている場合ではなさそうだ。マキナが強く裾を引っ張ったから。
成る程。やはりというかなんというか、どうやら外でのデートを頑なに拒む理由は彼女らしい。幼なじみだから理解してくれる、ではなく幼なじみだからこそ知られたくないとは、彼らしいというかなんというか。

「一緒なのは…」

「え?…あ、僕の彼」

女、と言わせないと踏みつぶされる足。前髪に隠れた目が光を放ち、余計恐ろしく見える。これは殺されるかもしれない。

「…そっか。デートの邪魔してごめんね!」

深い詮索などない。笑顔で去っていくレムに感謝を告げると、思い切り足を踏まれた。普段冷静なエースでも、痛いものは痛い。奇妙な悲鳴が注目を浴びた。

「見られた。」

「え、うん?」

「レムに。」

「何も言われなかったろ。」

「でも‥…っ」

「マーキナ。」

ウィッグを押し付けるように頭を叩き、ニコリと微笑むエースに、マキナは口ごもる。
どちらが年上かわからないな、と苦笑いを浮かべて腕を引く。おとなしい姿はやはり少女のようだ。がたいがいいところは、フィルターでなかったこととなっているのは、お約束。

「帰ろうか。」

「えっ」

「人目につくのは嫌なんだろ?」

沈黙の訪れと共に、歩みも止まる。

「いい。」

本当に?訪ねるかわりに目で語ろうと思い振り返ると、腹への衝撃。マキナに抱きつかれている、と気づくには少々時間がかかった。

「エースと一緒にいられるなら、我慢する。」

「レムに見られて吹っ切れたか?」

「…そうともいう。バレてないようだし。」

裏路地だからといって、少々積極的ではないだろうか。別に悪い、というわけでは更々ない。勿論嬉しい。
全く開き直った者ほど強いものはいないものだと身を持って思い知らされた。

「それに、お腹がすいた。」

「はは、何が食べたい?」

「寿司。エースの奢りで。」

「喜んで。」

「嘘だ。俺も払うから。」

「奢るのは、彼氏の勤めだからな。」

「…その、彼氏っての止めろ。」

身長差を生かしての仕返しに、少し前のめりになった。上から押さえ込むなんて、狡い…じゃなくて。マキナはこの関係が嫌なのでは、と不安になる。

「俺は女じゃない。」

「うん。」

「恋人でいいだろ。」

「…うん。」

(ツンツンしてるのか、デレデレしてるのか……)

肩に顔をうずめている恋人をあやすよう抱きしめる。自己嫌悪の唸り声が聞こえる、ということは顔は真っ赤。当分可愛らしい顔を拝めないだろう。
ふとポケットを漁るとなにかに触れた。ガサゴソ、確かこれはマキナの変装用具のレシートだ。

(…やられた)

違う。よく見たら映画のチケットか。いつの間に滑り込ませたのだろう、ちゃっかりレシートは奪っておいて。

「マキナ。映画行こうか。」

「…あぁ。」

「その前に、買い物も。」

お礼にアクセサリーでも買えば、いいだろうか。どさくさに紛れてペアリングも買ってやろう。
絡めた指は、放さない。

+END

++++
素晴らしいネタから、もう一つ出てきたのでオマケです。
マキナ、隠そうと頑張ったけど無駄骨の巻(^p^)
補足いりませんよね?買い物にはレムが付き合ってくれていて、エースも勝手につきあってるのがマキナだとバラしてるのです

マキナェ…

12.1.8

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