えふえふ | ナノ



イベント用失敗

※女体化と男とが2人います
※中途半端



外に出るとすぐに見つける事が出来た。ゆっくりと荒地を歩く白く輝く後ろ姿に、声をかけられず戸惑ってしまった。
荒れた混沌の地にいるには綺麗すぎたのだ。行き場のない手を開いた口に気がつかずに立ちすくんでいると、ゆっくりと彼女が振り返った。

「何をしている」
「えっ、いや、その、探しにきたんだ」
「私をか?」
「そうだ」

素直に言ったところで問題はない。だが恥ずかしくはある。頭をかきながら顔を赤くすると目を丸くして引き返してきた。
長いローブが地面を撫でるが汚れているどころか地面が綺麗になっているように見えた。

「あの傍若無人な男ではなく、私を追ってきてくれたのか」
「だって心配だろ」

含みの有る言い方にも、不機嫌になっても気付かなかった。
だが隣に立てば気にならなくなる。渋い顔をしながらも何も言わなくなった彼女に微笑みかけると、目的地もわからず歩き出した。

「どこへ行くんだ」
「風呂だ」
「部屋にあるだろう」
「あそこでは奴の邪魔が入る。静かに入りたい」

横を盗み見ることもせずに頬を膨らます姿に苦笑する。地面を踏みしめる音だけが2人の間に響いた。

「その、俺が見張りをするから」
「必要ない」
「俺が気にするんだ。お前が綺麗で、い、色っぽいから」
「……そこまで言うのなら」

褒められて満更でもない表情をしているのがまた可愛いと思ってしまう。
桜色に染まった頬に見惚れながら歩いていると、道端の小石につまずいてしまった。
近くに湯が湧いている場所があるなんて知らなかった。湯が沸く場所など見た事もなかった為に、恐る恐る手を付けてみる。「温かい」と言えば「当たり前だ」と自信満々で素っ気ない返答が聞こえてきた。


隠れることもせずその場で服を脱ぎ始める彼女を慌てて止めても、聞く耳なんてもたない。それどころか「風呂に入りにきたのに服を着ている方がどうかしている」とはだけた衣服で言うのだ。直視出来るはずがない。
慌てて後ろを向いたが、普通は逆ではないのだろうか。恥ずかしがるのがこちらばかりで悔しくなってきた。
格好のいい所を見せたいのはやまやまだが、皇帝の前ではいつもうまく行かない。恋愛下手な自分にため息をついていると「早く来い」と強い口調で言われた。

「待ってくれ。俺も?」
「当たり前だ」
「いや、お前が入りたいって言ったから」
「関係ない。早く入れ」

相も変わらず何を考えているのかはわからない。風呂に入る予定などなかったからタオルなんてない。躊躇っていると魔法で乱暴に服を剥ぎ取られて慌てて抑えながら静止をかける。脱がされて恥じるとは、こちらが女のようではないか。情けないことこの上ない。
逆らう事もできずに服を脱ぎ、複雑な気持ちで浴槽代わりに固められた岩の中へと進む。
彼女は縁に座って髪をといていた。まるで海辺のセイレーンのようで見惚れたが、混浴をしているという事実を思い出す。尻込みするフリオニールに気がつくと、手招きをして傍にくるよう誘った。

「貴様はいつも恥ずかしがるな」
「堂々としている方がおかしいだろ……」
「なら女と男とではどちらがいい」
「え?」
「『男の私』といた方が、安らいでいるように思える。顔が同じで体が変わっているというのは不可解か」

悲しそうな表情なんて皇帝は見せなかった。女になって心が弱ってしまったのか、それともアクが抜けたのだろうか。いつもよりも汐らしく、儚げな姿に惹かれてしまった。

「そんなことない。ただ、その、緊張しているんだ」
「胸ばかりジロジロ見るな」
「あ、ああ。すまない」

豊満な胸についつい釘付けになると怒られてしまった。真っ赤になりながら胸を誇張しながらそっぽを向く姿は、誘っているとしか思えない。
誘惑に負けまいと背中を向けると、後ろからクスクスと上品な笑いが聞こえてきた。どうやらからかわれていたらしい。

「フフ、嘘だ」
「え」
「貴様になら触らせてやろう。願ってもないことだろう」

ゆっくりとお湯をかき分けて近づいてくる白い裸体。天使のような姿で悪魔の囁きを繰り返す。

「い、一体何を……」
「我慢せずともよい。私とお前の仲だ」

頬に手を添えられ、長い睫毛の伸びた紫の瞳に捕われる。
やはり、彼女の美貌は魔性のものだ。透けるような白い肌も、絹のような白い髪も、造り物のように思えてしまう。
改めて見るとFはあるのではないだろうか。豊満で性的な胸を腕で誇張して柔らかく笑った。

「体を洗ってやる」

ゆっくりと敷居の岩の上に座り腕が引かれて胸が押し当てられた。
この若さは無尽蔵の魔力で保っているのだろう。張りのある肌と柔らかい胸に夢中になっていると手が体を撫で始めた。
石けんなんて持参していない。いつも体はマントで擦って洗い直していた。皇帝の浴槽を借りるときはフワフワのタオルを借りているから知る由はないだろう。
ただ撫でるだけでは洗う事にはならない。胸まで背中に押し付けられてやっと彼女の意図に気がついた。

「もしかして、誘っているのか」
「洗っているだけで興奮するのか?」
「わざとだろ、それ……」

挑発されたら乗るしかない。無防備に晒された胸とピンクの果実に気後れしながらも優しく手を這わせゆっくりと揉みこんだ。
弾力があり柔らかい感触につい夢中になってしまう。痛みを感じていないだろうか。顔色をうかがえば、目を閉じて悩ましい表情をしていた。
これは快楽を得ているのだろう。途切れ途切れに甘い吐息すら聞こえる。

「気持ち、いいのか?」
「聞くな、恥ずかしい……」

「あん」と甘い声が上げられて思わず手を引いてしまった。
経験はあるが女体を見たことなどない。年頃で人より興味が強いかもしれない。揺れる胸を見つめているだけでドキドキと心臓が鳴り響く。

「お前は気持ちがいいか……?」
「えっ。俺は、気持ちいいよ」

『皇帝』が気遣ってくれるなんて今までなかったために驚いた。嬉しそうに微笑まれてつい赤くなってしまう。
「もっと触れ」と胸を張られては断る理由もない。撫でて立ち上がった突起を指で弾いてみると鼻の抜ける声がした。

「女性はここが気持ちいいんだよな……」
「男が好きなだけではないか」
「好き、だけど。嫌がることはしたくない。嫌なら言ってくれ」

頬を撫でて答えを催促するが、返ってくるのは苦い表情だけである。
優しさに躊躇うような仕草を見せながらも、目には甘えのような光がある。初めての経験で怖がっているのはわかった。

「触らせてもらえるだけでありがたいから、な」

まだ答えをもらってはいないが、質量を確かめるように手で踊らせてしまう。ついつい胸の柔らかさに夢中になってしまうのは男の性だと開き直ればクスクスと赤い顔で笑われた。

「いつも甘いな」
「お前にだけと言ったら、どうする?」
「悪い気はしない」

妖しい笑みに見惚れていると白い頬が朱に染まっていき、唇が近づいてくる。普段は妖しい紫色で縁取られた唇が今日はバラの花のように赤い。見惚れていると、彩られた頬が更に赤くなり唇が重なる、寸前だった。

「この牝狐! 下品な身体で誑かすか!」

怒り心頭で鬼の形相で現れたのは皇帝だった。
部屋から出たがらないのに何故降りてきたのだろうか。何故場所がバレたのだろう。言いたい事はいっぱいあるが、鬼の形相と大股で歩いてこられたら言い訳を考えるしかない。
フリオニールが口を開くより先にマティウスの髪を乱暴に掴んで引き剥がす。小さな舌打ちが聞こえ、イヤな予感しかしない。

「男のくせに焼きもちか」
「コイツは私のものだ! 私物を取られて怒ることの何がおかしい!」
「男より女がいいと言っているが」
「無駄に脂肪がついただけの年増の身体に価値などあるものか」

「人の事が言えるのか」と言いそうになって止めた。今ここで死ぬのはなんとも情けない。

「とにかく離れろ。拒否するなら消してやる」
「背中を流していただけだろう」

魔力の収縮する甲高い音がしたところで慌てて立ち上がる。下半身に視線が集まり感嘆の声すら聞こえたが関係ない。「風呂を壊す気か」と急いで皇帝を抑えると魔力の渦が止った。
反省はしていないが争いを止めてくれたならそれだけでいい。放っておくとすぐにでもいがみ合い出す。落ち着かせる為にも皇帝の背を押して早々に退散することにした。

「お前ら、どうあっても仲良く出来ないんだな」
「当然だ。お前がヘラヘラしているからな」
「え?」
「自覚していないのか。女に好かれたことがないのが見え見えだぞ」

突然怒りの矛先がこちらに向いたが、いわれのないことである。目を瞬かせると、同時に2人から呆れのため息が聞こえてきた。これだけ息はあうのに喧嘩ばかりなのが不思議である。

「今度からは風呂は部屋の物を使え。2人で入るなど論外だ」
「貴様が決める事ではない」
「うるさい。服を着ろ」

気遣いではない恨みの込めた声が服を投げ渡し、打って変わって優しさのある手がフリオニールの髪を魔法で乾かす。
1人で寂しかったのだろうか。いや、それはない。
ならば言うように焼きもちなのだろうか。普段誰かに嫉妬する姿は見なことがなくて新鮮に映った。

「ならば今度は一緒に入ろう」
「当然……いや待て。何故そうなる」
「一緒に入りたいってことじゃないのか?」
「ふざけるな! 何故私が貴様と」
「ならば私と入ろう。先程の続きもあるし、な」

逞しい顎を細い女の指がゆっくりと滑る。厚い唇が薄く開かれて言葉を紡ぐ前に皇帝が怒声を発して、惚ける腰を抱き寄せた。

「コイツは私の物だと言っている! いいだろう、一緒に入ってやる!」

売り言葉に買い言葉とはこの事だろう。「しまった」という表情を浮かべる彼に勝ち誇った笑みを浮かべる彼女。お似合いだと思う息のよさに、寂しさと嫉妬を覚えてしまった。

「じゃあ俺、夕飯穫ってくるから」

顔も見られずに逃げるように駆け出せば背中から静止の声がかかる。振り返る事も出来ず返事だけを返せば、何か空から落ちてくる音がして頭上に当たった。何かと思い見上げると、そこには鳥の姿があった。まるで雷にでも打たれたように焦げているが、まさか。

「これだけあれば困らないだろう。貴様は今日一日私から離れるな」
「いや、それでも」
「命令だ」

拗ねた姿に首を縦に振るしか出来なかった。
どうしても離れたくない、そう態度で示してくれるだけで嬉しかった。しかし横からマティウスが腕にしがみつくのを見ると機嫌は急降下。今にも噛み付きそうな形相に尻込みしてしまった。

「寝る時も離れる事を許さん」

反対側の腕を乱暴に引くと腕に閉じこめようとする。
左右から引っ張られて綱引きをされてはたまらない。意固地なところもそっくりだ、と顔を歪めていると先に手を離したのは彼女だった。

「……痛く、なかったか」
「少し」
「謝ろう」

上目遣いで素直に謝ってくれた事に胸が高鳴ってしまった。大げさに治癒魔法をかけてくれて思わず頭を撫でてしまう。
面白くないのは皇帝である。甘い空気を醸し出す2人を邪魔しようと腕を引くが、彼の気は完全に彼女へと向いている。体を密着させても敗北感が彼を襲った。

「マティウスは優しいな」
「当然だ。どこぞの男とは違う」
「言わせておけば、この女……」

歯ぎしりをしようとも2人の距離は変わらない。険しい顔で更に抱擁を強められてやっと彼の方へと振り返り、心配そうな視線を向けた。
怒っているというよりも、そこにあったのは寂しそうな顔だ。迷子の子供のような顔をされては放っておけるわけがない。

「どうした?」
「お前が、女とばかり接するから」
「妬いてくれたか」
「だっ、誰が貴様なんかに……」
「ごめんな。不安にさせたな」

額に口づけを落とせば白い肌が真っ赤に染まる。機嫌が直ってくれたところで2人の手を取り直すと城へと歩を進めた。

「とりあえずご飯にしよう。腹がへるからイライラするんだ」
「私を食べてもいいんだぞ……?」
「ばっ、馬鹿な事を言うなよ!」
「私は冗談が苦手だ」

すりよってくる女体に咄嗟で体を引く前に、強い力で腕を引かれた。鋭い目で彼女を睨みつける皇帝の機嫌を直しながら、歩きにくい体で城へと向かう。
両手に花とはこの事をいうのだろうか。頬をかきながら赤い顔をしていると「何を考えている」と嫉妬に駆られた問いが同時にかけられた。
こういうところは本当に同じ『皇帝』なのだ、と安心した。

++++
本番は文章変えます

17.1.11

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