真っ赤な秘密
※女体化
※ジタンがアホの子
血が流れてたら誰だって驚くだろう。それが人情というものだ。
敵でもそれは例外。恨めない奴なら、恋人なら尚更。
鼻から、腕から、足から。様々な場所から血は流れるが、怪我以外でも起こりうる。
心配をするのに理由なんていらない。
ぽたり。なにかが落ちてきた。
晴天で雨が降るのもおかしな話。狐が嫁入りでもしたのかと、指でぬぐってぎょっとした。
水だと思っていたもの、それは血だった。
空から血が降ってくるなんて異常気象どころではない。慌てて周囲を見回すが思い当たる節は一人しかいなかった。
「お前、足から血が出てるぞ!」
「え?」
空に浮かぶクジャが不思議そうな顔をした。
話していただけなのに血が出るなんておかしい。だが、間違いなく鮮血だ。
黒ずんでおらず、生々しい赤が白い太ももを上から下へ汚していく。
「大丈夫か? 傷見せてみろよ」
「いやだ!」
足を隠すクジャからまだ血が流れ落ちる。本人は理由をわかっているらしい。だが知らない側としては心配してしまう。
「手当てするだけだろ」
「嫌なものは嫌なの!! わかるでしょ!?」
怒りがら舞い上がるが、それが間違いだと彼女は気付かない。上にいたら下から"見える"ことに。
「足、か?」
「バカっ! どこ見てるのさ!」
呟きに反射で放たれたホーリーが頬を掠める。
それでも懲りずに見上げよう見上げればまたホーリーが鼻に当たった。これは立派な逆ギレだ。
「セクハラで訴えてやる!」
「見えるんだって。降りてこいよ」
「襲われるじゃない!!」
「襲わねぇ」
警戒して足を閉じて睨み付けてくる。
だが無常にも血は流れ、腹を押さえ始めた。大量出血は体に悪影響しか及ぼさない。
「ボク帰る・・・・・」
「手当てするって」
「場所が場所だからヤなの」
「病気・・・・・・じゃねぇよな。」
ジタンの間の抜ける発言に心底あきれた声がした。
唖然としながら様子をうかがいながら、好奇心に負けてゆっくり降りてくる。
「知らないの?」
「何が」
「女の子の日」
「知らない」
「ナンパの前に勉強しなよ」
「悪かったな」
言われっぱなしなのが面白くないが、本当に知らないのだ。
何故血が流れているのか、どこから流れているのか、何故今日に限って機嫌が悪いのかもジタンにはわからない。
「クジャが教えてくれればいいだろ」
だが言ってはいけないことというものはある。
間髪いれる隙なく、高くいい音が響いた。
**
「そりゃマズイな」
「あぁ」
頬に紅葉をもらい帰ってきたジタンを真っ先に見つけて、大爆笑するバッツ。
捕まえて聞けば、彼は知ってるらしい。それなりにバカだと思っていたために衝撃も大きい。
「知り合いの女の子と一切フラグが立たないお前が知ってるなんて・・・・・・」
「本で読んだから知ってるぜ!」
「偉そうに言うことか」
クラウドはため息をついてショックを受けるジタンに視線を移す。
「それは生理をいうものだ」
「なまり?」
「なにからそう読んだ」
「冗談冗談。で?」
「女性特有の現象だ。受精が行われなかった卵子が膜を抉り」
「クラウドの説明は生々しくて嫌なんだけど」
真面目に説明しており、自覚がない分たちが悪い。首を傾げて可愛い顔されても困るというものだ。
「まぁわかった。あんがとな」
「いいのか今ので」
「怪我じゃないんだろ? それだけわかればいいや」
ちゃんと理解はしていないようだが、解決できたのなら口を出すこともない。
彼女の元へと早足で去っていく姿を見送り、2人で首を傾げた。
「あいつ、あれだけ女子に興味津々なのに知らないのな」
「本命以外にはフラれてたんだろうな」
「クージャ」
いつ来ても殺風景で生活感の感じられない部屋。その必要最低限のベッドの上でクジャは丸くなっていた。
開いていた窓から進入すれば、背中越しに億劫な瞳が睨み付けるように向けられた。
「セクハラの次は不法侵入?」
「失礼な奴。少なくともセクハラは誤解だろ」
「何しにきたのさ、痛・・・・」
腹を庇うように丸くなる姿に驚いた。
腹痛ならわかるが、うまく想像ができない。ゆっくりと忍びより、傍らでしゃがみこむが顔は上がらない。
「さっきはごめん。デリカシーないこと聞いた、ごめん」
「全くだよ、つうっ」
「・・・・・そんなに痛いのか」
「男の君にはわからないだろうね」
「ごもっとも」
ヒステリーを起こしかねない機嫌の悪さだ。言い返さずに、優しく腹を擦ってやる。
まさか気遣ってくれるとは、と驚き見上げてくる様は心外だが、笑顔で応えておくことにした。
「効くか?」
「うん・・・・・・」
「たまには彼氏らしいところ見せないとな」
「そうだね」
「即決かよ!」
「彼氏らしいことしてくれないと、他の男を引っかけちゃうよ?」
「冗談に聞こえないぜ・・・・・・」
「温めて」
そう言われれば何も言い返せない。
首に抱きついてくる彼女を優しく抱き締めてベッドに這い上がる。寒かったら服を着たらいいのに、なんて野暮だ。
「体を暖めたらいいのか?」
「寒い・・・・・・」
「単に寒いだけか。レディは体を冷やしちゃいけないな」
優しく唇を奪い、強く細い腰を抱き締める。ほんのり染まった頬が綺麗で愛しい。
「止める方法ないのか」
「ボクの口から言わせる気!?」
「これも聞いちゃダメか」
真っ赤になる、ということはまたデリケートなことだというのだけはわかる。
怒ってるようだが離れない体を抱き締めて首を傾げる。ため息が聞こえたが、気にしないことにした。
「そうだね。ジタンがもっとボクに相応しくなったらかな」
「なんだそれ」
もう返事はこなかった。
規則的な呼吸を聞き、更に強く抱き締める。心地よい体温に身を任せて目を瞑れば、すぐに眠りの世界へおちていった。
***
「小猿の坊やが入り込んでるわね」
半刻が過ぎ、痛み止の薬を届けにきたアルティミシアが見たのは、バカップルの寝顔だった。
抱き枕、というには力が強すぎる。それでも唸り声もあげずに抱き締め返す少年には敵意より呆れてしまう。
引き剥がそうと手をかければ、強い力でそれを阻止された。寝ていたと思われた彼女の鋭い声には最早関心すらしてしまう。
「ボク達の仲に嫉妬? オバサン」
「薬を持ってきたのに、その言い種ですか」
「ジタンは渡さないよ」
「誰も盗りません」
抱きついて顔をうめる彼女に短くため息をつく。
こうなれば何を言っても無駄だ。布団をかけると静かに部屋を後にした。
+EMD
++++
腹が痛かったからムシャクシャしてやった。後悔はしていない。謝罪はする
09.12.1
修正17.1.10
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[mokuji]
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