えふえふ | ナノ



酒から始まる正しい間違い講座4

※皇帝女体化表現あり
※性的な行為を連想させる表現あり



意識の合間に何かとんでもない事をしたのは覚えている。だが鮮明には思い出せない。
意識が戻った時には、ベッドの上に横たわる女性がいた。

ティーダを探していたはずなのに、足は自然とパンデモニウムに向かっていた。
昨日の事を謝ってどうなるとも思わない。それよりも皇帝の顔が見たかった、ただの自己満足の欲求にすぎないものである。
入り口を眺めているだけで人の気配はない。帰ろう、そう思った時に奥から靴の音が聞こえてきた。
彼が来た。そう思って明るくなる顔が、どんどん怪訝なものへと変わっていく。皇帝にしては忙しなく品のない歩き方だ。部外者に身構えていると、現れたのはティーダだった。

「よお」
「お、おう」
「1人か」
「え? そんなところ」

驚くほど低い声が出たのは自覚できていなかった。
彼の泳ぐ視線に何か熱いものがこみあげてきた。
この奥は確かパンデモニウムの深部でプライベートな場所。そこから現れたということは2人が親密な間柄だという証拠にもなる。
虫酸が走った。

「んじゃ。俺急ぐから!」

本来彼を探しにきたのに追いかける気は起きなかった。
駆けていく背中を睨みつけると、消えると同時に奥へと突き進む。再奥で見つけたのは巨大な扉だ。
きっとここが私室なのだろう。奥から強い魔力も感じる。
扉を乱暴に蹴破ろうとすれば、中で人が動く音がする。いきなり扉が開け放たれるまで動けなかった。

「貴様、何か……、お前はっ」

そこにいたのは、白いローブを身にまとった女。派手な宝石で着飾り、髪は白く真っ直ぐにおろされていた。
全身が白に覆われていて、羽のような装飾が天使を擬態しているように見える。角は悪魔のようで彼を彷彿とさせるが、彼女は女性である。胸に膨らみがあることを見止めると、視線を感じて隠された。
部屋にいたということは、皇帝と何かしら関係のある者なのだろう。
彼女に罪がないのはわかっている。だが彼女からする甘い匂いに理性のたがが外れてまともな判断が出来なくなっていた。

「おとなしくしていろ」

咄嗟にナイフを首筋に突きつけ、部屋に押し込んだ。後ろ手で扉を閉めるとベッドまで追いつめ乱暴に押し倒す。
この女を傷つければ彼は悲しむだろうか、感情すらわかないのだろうか。困惑する彼女を見下ろしながら、ベッドの上へと押し上げた。

「声を上げても無駄だ」

口を塞ぎながら凄むが大きな抵抗は見られない。それどころか突然唇を奪われたのだ。
甘い匂いが間近にある。頭も段ぼんやりしてきた。毒ではないが、何か口に含んでいたのだろうか、余程なれた遊女だ。
彼に似た顔で、面妖に笑う姿を見ているだけで冷静な判断が出来なくなってきた。
喉元から胸に駆けて軽くナイフを落とせば簡単に布が裂け、下着をつけていないローブからは簡単に白い胸が顔を出した。
女性経験などない。本能と感情だけで首飾りごと服を引き裂いた。
今頃、彼はティーダと逢い引きでもしているのだろうか。
ああ、頭がくらくらする。何も考えられなくなった。
手に余るほどの胸を乱暴に掴むと強く揉み込み弄ぶ。痛みを訴える悲鳴に身を捩りながらも強い視線で睨み返してきた。

「貴様っ! こんな事をして許されると思っているのか!」
「お前は皇帝のなんだ」
「なっ」
「側室か、金で買われたか、それともラミアか」

衝撃に固まり見開かれたアメジストの瞳がまた彼を彷彿とされて勘に触った。
乱暴に前髪を引くと、舌を入れて口づけてやる。初めは小さな抵抗が見られたが、徐々に体から力が抜け、顔は赤く染まり目は潤んでいる。

「慣れているな。ただ買われただけの淫乱か」

いくら冷たい言葉を投げかけようとも、彼女は目をそらして顔を赤く染めるだけだ。顔を隠そうとするわけでもなく、抵抗するわけでもなく、自由な口からは悲鳴すら上げない。ただ喘ぐような息が耳をくすぐり興奮させる。
鎧を全て外し落とすと、次は焦るようにパンツへと手をかけた。ずらして雄を取り出すと、次は女のローブを下から股にかけて裂き、足を開かせる。
興奮して濡れる股には何も身に付けていなかったことには驚いた。

「襲ってくれるのを待っていたのか?」
「着替えている時に貴様が来たのだ!」
「どうだか」

口にナイフをくわえて首筋へと当てると、ゆっくりと足の間へ体をねじ込む。相変わらず表情は悲痛ではあるが、なんの抵抗も見せない。もしかして罠かも知れないが止らなかった。

「優しくはしてやれない。元より、お前は優しくない方が好みかもしれんがな」

強く喉に押し当てたナイフは、赤い線を描いた。

覚えているのはここまでは。あとは乱暴に物のように彼女を扱った。
激情のままに女体を貪り抱き潰した。気がついた時には手足には赤い輪の跡や、胸にも手の赤い跡が色濃く残っている。
酷い事をしたというのはわかっているが、胸のうちもすっきりしないままだ。
傷つけた。謝って済む問題でもない。逃げる訳にも行かずに立ちすくんでいるとゆっくりと紫の瞳が開かれた。

「貴様……よくも好き勝手に扱ってくれたな」
「すまなかった、本当に取り返しのつかない事をした」

必死で頭を下げるが、どうにも怒りが感じられない。睨みつけてくる瞳は怒気を孕んでいるが、殴ってくる気配がない。
力も湧かないほど辟易しているのだろうか。もう使い物にならなくなったローブを乱雑に蹴り落とすと、彼女は足を組んで見下ろしてきた。傷だらけの体を隠すという恥じらいは一切ない。

「処女の扱いも知らんのか。これだから童貞は……」
「へ。処女?」
「寝ぼけた事を言っているのかと思えば、本気でわかっていないのか」

大げさにため息を付き肩に足を置かれた。この体制に覚えがある。よく彼が機嫌の悪い時に行う動作である。声を上げればまたため息。勢いよく肩をつかめば「離せ」と聞き馴染んだ高い声。
ゆっくりと床に足を付く動作に見惚れていると、魔法の気配が肌をかすめた。
先程の丸みを帯びた女の体とは違う、引き締まった筋肉のついた男の体。振り返ったのはいつものように不機嫌を露わにした皇帝だった。

「誰と勘違いしていた?」
「いや、だって、え?」
「何だ。正直に言え。死にたくないだろう」

ベッドの端にどかりと座り込むと肩に凭れ掛かり、いつもの低い声で囁く。咄嗟に正座をしたが声が震えてしまう。
どう謝ろう。思案しているとゆっくりと飲みかけの酒瓶をたぐり寄せる姿が見えた。グラスに注ぎ、優雅に飲み干す姿をぼんやりと眺めていたが、催促するように肘を打たれて我に返った。

「女だから、お前だとは思わなくて……」
「誰だと思った」
「皇帝の、妃なのかと」
「私は妃など取らん。処理の相手など掃いて捨てるほどいるわ」
「そう、か。とにかくすまなかった。手当をするから」
「男なら、1人しかいないがな」

誘う音色が耳をくすぐる。鼻には甘い香りが漂い脳まで犯されるようだ。
色欲を含む紫に捕われては声もでない。熱くなる頬の自覚はしているが、恥じて隠す事も出来ずない。まるでメデューサに捕われたように視線を合わせて固まってしまった。

「酔って、いるのか?」
「貴様に酔っている……という胸くその悪い事を言えば満足か?」
「女の姿をしていなくてもいい。いつものお前がいい」

傷を労いながら抱きしめると「汗臭い」と乱暴に頭を叩かれた。それでも離す気にはなれなかった。魔法で乱暴に引きはがされて、口づけられるまで長い抱擁は続いた。

「くどいぞ童貞。引き際を知らぬと鬱陶しいだけだ」
「ごほっ! 何を飲ませた!」
「酒だ。何度も飲んだだろう」
「何度も……? いや、今日が初めてだ」

疑い深い表情をされるが、覚えていないものは覚えていない。思い返してみても先程注がれた酒以外に飲んだ覚えなんてない。酒は貴重なものだ。そう易々と若者が飲めるのもではないのだから。
頭もぼんやりして、宙に浮いているかのような浮遊感すら感じる。これが酒の力なのか、と甘い匂いに眉を寄せて気がついた。

「この甘い香り……」

辿ってみたら、この部屋すべてからするような気がする。それでも一番濃い根源を辿ってみると。見つけた。必死に鼻を擦り付けると頭上から抗議の声が聞こえてくる。

「胸はやめろ。傷が開く」
「ああ、甘い匂い……皇帝から……」
「また酔ったのか」
「甘い匂いを嗅いでいるだけだぞ?」

無我夢中で鼻を擦り付けていると、乱暴に頭を押さえ付けられ体が動かなくなる。魔法で拘束されていると理解出来たのは、手が何かに縛られているような感覚がしたからだ。

「もしかしなくとも類い稀な下戸だな。酒癖が悪いのも頷ける」
「前にも、この匂い……」
「初めは匂いだけで酔っていたのか。器用な奴だ」
「あの綺麗な女性を初めて見た時……」
「口に残った微量の酒であのざまだ。こうなると」
「ティーダはお前の何だ?」

先程まで蕩けていたのに、驚くほどはっきりした声がして皇帝が驚くのがはっきり見える。
頭で言葉を選ぶなんて簡単な事が出来ないほどに酒に飲まれていた。思い出すのは彼とティーダの関係だ。初めからそれを調べにここまでやってきたのではないか。目的と同時に思い出すのは怒りと嫉妬だった。

「お前はティーダと恋仲なのか」
「待て。ティーダとは誰だ」
「しらばっくれるか」

手当すら出来ていない肩を強く押すと、くぐもった声が聞こえる。痛みに耐えるような表情だが、どこか胡散臭さがある。
目の前の男は押さえ付けられながらも笑った。今までの弱り切った表情すら演技だと気付いてもどうということはない。
頭が痛む。視界が歪む。それでも明確な声が頭の中から響いてくる。
「誰にも奪わせない」と。

「なるほど、貴様を獣のように駆り立てるのは嫉妬か。クククッ、悪くない」
「どうなんだ。答えろ!!」

野獣のように吠えるが怯む気配はない。
彼は、笑って煽る。「好きに想像しろ」と。

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