えふえふ | ナノ



距離0(オマケ)

※マキナ女体化
※乙女警報発令中
※鳥の名前は適当

付き合っているわけでもなければ、特別仲がいいわけでもない。すれ違ったことはあるのかもしれないが、知り合ったのは最近だ。
惹かれた、と自覚した時にはもう恋に落ちていた。他の女子からの奇異と興味の混ざる告白は、いらない。

(ホラ、また見てる)



*距離0*



昼の飯時となると、人は必然的に一カ所へと集中する。
今いる場所がそうなのだが、エースは賑わうところは好きじゃない。信じられるものは0組、いやマザーであり他のクラスの者と友達ごっこをしなくてはならないのなら、会わない方がマシだ。だがここに"彼女"がいるのなら仕方がない。急ぎ足でリフレッシュルームの一角を朱が進んでいく。

「はぁ、」

最近、彼女の溜め息しか聞いていない。食も進んでいないし、顔色も悪い、何より目が潤んで見える。どうしたのだろう、足は自然と早まる。

「隣、いいか?」

「あぁ……っえ?」

無意識になのであろう肯定だが、隣に座れる許可は貰えた。気が変わらないうちに腰を下ろすと、丸い目が更に丸くなる。可愛い。

「マキナ、甘いものが好きなのか?」

「え…、い、いや…その……っ」

「よく食べに来てるだろう?ここのプリンは美味しいからさ。」

隠しても知っている。彼女がここに入り浸っているのも、甘いものを好んでいるのも調査済み。何を恥ずかしがっているのか秘密にしたいのか、マキナは自分のことを話してくれない。
得意の笑顔も彼女にはどう映っているのか、泳ぐ視線と狼狽する様に不安になる。

「や、やる!」

「え?」

「オレ、ちょっと急ぐからっ!!」

押し付けるようにわかされたのは食べかけのプリン。バレンタインのチョコレートならもっと可愛いのだが、何か貰えるだけで浮き足立ってしまう自分が少し情けない。

(惚れた弱み、っていうのか…)

魔法陣に消える後ろ姿を見送り、プレゼントに戻す。一口目、パクリ。甘い。しかし相変わらず美味しい。

(…あ、関節キス)

意識してしまうと食べにくくなる。二口目の甘さは格別だった。

さあどうしようか。せっかくのチャンスも逃してしまったし、彼女の行くところはレムの元だろう、二人の邪魔をするのは野暮だ。テラスや墓地には近付かないでいよう、と日課になっている牧場へと向かおうとした。

「エース。マキナ知らない?」

一緒にいると思っていたレムは、後ろにいるではないか。

「さっきまで一緒だったけど、どこに行ったかは…」

「マキナと約束してたのに来ないんだもの。」

「レムの約束をすっぽかすなんて、珍しいな。」

何か思い悩んでいるのは見て取れたが、約束を忘れる程とは。真面目な彼女は、特にレムとの約束は忘れない。
確かに、最近は様子が変だった。やたらと視線が合うと思えばすぐ逃げてしまうし、悲観に暮れる姿も――

「ねえ、エース…ちょっと相談していいかな。」

いきなりだったが断る理由もなければ、なんとなくマキナの事かと感づいた。場所はチョコボ牧場でいいだろう。レムは黙って微笑んだ。

マキナにチイコと名付けられたヒナは、マキナに憎いほどにベッタリである。雄であるところも妬く原因だが、更に自分には一切懐かない。そこが犬猿の仲になる理由である。
一方チルルは、甘えたがりな雌チョコボ。こちらはマキナに懐いておらず、いつもエースに寄ってくる。どうやらチイコを取られて寂しいらしい、まるで誰かを見ているようでついつい可愛がっているとそのチイコにつつかれる。どうしろというのか。
マキナが動物が好きで名前を付けてまで可愛がる姿があまりに微笑ましかったので毎日、眺めていたのはここだけの秘密だ。

(っと噂をしていれば)

「やあ、元気か?」

ついたと同時に駆けてきた黄色いぬいぐるみ。キュイ、と嬉しそうに鳴きエースの胸へと飛び込んだ。

「可愛い……よく懐いてるね。」

レムを見て威嚇を始めた、ということは嫉妬か。何故ここまで執着されているのか、苦笑が漏れる。

「あれ?」
(チイコがいない)

いつもなら足をつついてきてもおかしくないのに、いないと調子が狂う。

「どうしたの?」

「なんでもない。………あぁ、ところでさ、レム。話って…」

「エースはマキナの事、どう思ってるの?」

まさか、そいくるとは思っていなかった。突然のことに硬直しても、レムは休まない。

「好き?」

「…と、突然だな…」

「好き、なんでしょ。」

彼女の傍にいるためだろう、何でもお見通しらしい。隠す必要もなければ、隠すことも出来ないだろう。静かに頷けば、悟ったように顔が緩んだ。

「支えてあげて、くれないかな。あの子は、なんでも抱え込むから……」

一番、レムが心配であったろう。傍にいるから、近くにいたからこそ彼女の変化と苦悩を目の当たりにして、悩んでしまったのだ。
「ああ、勿論。」レムは慈愛に満ちた笑顔を浮かべた。ふとマザーを思い出した。

さて、チイコはどこへ行ったのだろうか…と、可愛らしい怒声が小屋の影から聞こえる。挟まっているのか、近づくにつれ鳴き声が弱々しくなり泣き声も聞こえる。

「マキナ…?」

何故泣いているのだろう。膝を抱えうずくまり、鼻をすする姿が痛ましい。

「マキナ。」

全くこちらには気付かない。

「泣かないでくれ、マキナ……」

気がつけば唇を奪っていた。気づいてほしくて、力になりたくて。柔らかい毛をなで、安心させてやるように。我に返った彼女の目はまだ濡れていたが、その瞳に自分を映してくれたことに喜びがこみ上げてくる。

「マキナ…」

「離れて…」

「マキナ、」

状況が飲み込めていない顔。そして泣き顔を見られたら後ろめたさか、すぐ瞳は逸らされ胸を押される。残念、そして胸がチクリと痛む。

「レムと、何を話してたんだ?」

見ていたのか、いやそんなことよりこれはもしかしなくとも、嫉妬してくれたのだろうか。相手がレムだからか嫉妬と動揺、両様の色が見てとれる。

「…素直になれない子との、恋愛相談かな。」

こうなれば隠す必要などない。

「いつも傍に居てくれるのに、全然近寄ってくれないんだ。こっちから勇気を出してもすぐ逃げちゃうし、ね?」

お前もだな、とチイコに手を出すがマキナの懐に潜り込まれた。鳥だからって狡い。

「頑張り屋で健気で、優しくて。無防備で、他の男に狙われてるから心配なんだ。」

「よく見てる……好き、なの?」

「ああ。」

「なら…告白はしないのかよ………」

「近付いたら逃げるんだから。仕方ないだろ。」

他の男にとられる前に、と何度勇気を出したことか。悉く逃げられ、嫌われてるのかと不安になったことか。
こうやって隣に座り、表情豊かなマキナを眺めるのが夢だった。

「マキナ、今日は御馳走様。」

「え…うん……」

「だから、次は僕に御馳走させてくれ。な、チイコ?」


だが夢は叶った。ならもうちょっと望んでもいいですか?
今度は、互いに認識してのキス。差し出された舌は柔らかく、熱い。

(今までごめんな、チイコ)

マキナそっくりなチルルが、チイコの元へと歩み寄る。二人の距離も、0になる。

+END

++++
補足…いるかな?((((゚Д゚;;

11.12.22


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