えふえふ | ナノ



距離0

※マキナ女体化
※乙女警報発令中
※鳥の名前は適当

付き合っているわけでもなければ、彼と特別仲がいいわけでもない。だから嫉妬する資格はない、そんなことはわかっているけども。

「また、女の子と…話てる…」

伝説の0組だからもあるが、人柄としても優しく頼りがいのある彼は、女性や男性にも人気がある。特に女性と楽しそうに談笑する姿を見かける度に、相手の女を妬み彼を独り占めしたくなる。まだまだ精神が幼稚な自分が情けなく、涙が出てきた。

(だめだな、オレは)



*距離0*



男女とも仲良く、賑わうリフレッシュルーム。明るく陽気な場所なのだ、一角を除いては。
朱雀の化身とも言える朱を背負った背は丸く、情けない溜め息が聞こえてくる。好物であるハズの甘味も喉を通らず、プリンだけが毅然として皿の上に立っていた。

「はぁ、」

スプーンでつつけば、揺れて定位置に戻る。何回見せられた光景であろうか。数える気力もないほど精神は疲弊しきっていた。

「隣、いいか?」

「あぁ……っえ?」

無意識に肯定したが、我に返って見ればそこにいるのは悩みの元凶ではないか。爽やかな笑みを浮かべながら、手にはサンドイッチの乗ったお盆。
ああ、彼を確認するほど顔が熱くなる。

「マキナ、甘いものが好きなのか?」

「え…、い、いや…その……っ」

「よく食べに来てるだろう?ここのプリンは美味しいからさ。」

エースの笑顔が眩しい。今までの動作を見られていたことに恥ずかしくなり、姿勢を正す。
エースは、また優しく笑う。その優しさで自分の醜さが浮き彫りにされた気になり、息が苦しくなり心拍数が上がる。

「や、やる!」

「え?」

「オレ、ちょっと急ぐからっ!!」

食べかけの皿を無理矢理押し付け、衝動に任せて駆け出した。顔は見れる筈はないし、一緒にいるなんて出来るわけがない。

(いつになったら、近付けるのかな……)

マキナは、深く溜め息をつく。コンプレックスが多いのに、彼――エースの前に出ると情けなさでいっぱいになり動けなくなる。

(エースが、モテるのは仕方ない)

言い聞かせる度、沈む心。キュイ、と心配そうに鳴く小さな相棒の姿が見えなければ、泣いていたかもしれない。

「大丈夫だよ、チイコ。」

チイコ、と呼ばれたヒナチョコボは嬉しそうに飛びつき胸に擦りよってきた。
チイコは、勝手につけた名前である。不思議な力に誘われるまま通っていたら、いつの間にか懐かれてしまったのでよく遊んでやっているのだ。
もう一匹はチルル、名前はつけたが、こちらは全くよってこない。マキナを見ると不機嫌に鳴き、手を伸ばせば逃げてしまうのだ。エースと一緒にいる姿をよく見かけるが、変わりにチイコがエースには懐いていない。

「チイコ、チルルと遊んでやらないのか?」

恨めしそうにこちらを見るチルルは、まるで嫉妬している様で。チイコが寄っていけば、何故か逃げ出してしまう。

(照れくさいのか?)

残念そうに返ってきて、胸元に引きこもろうとするチイコを微笑ましく迎え入れてやると、チルルが明るく鳴いた。
それを合図に光る魔法陣。現れた人物は二人だったが、チルルは間違うことなく男性に飛びついた。

「やあ、元気か?」

「可愛い……よく懐いてるね。」

この声は、エース。もう一人は、よく聞く幼なじみの声…レムだ。何故二人が一緒に、なんて答えが出る前に、体は牧場の影に滑り込んでいた。チイコが小さく鳴く声さえも、居場所をバラしてしまうのでは、と不安に駆られ胸元に押し込んだ。

「あれ?……………あぁ。ところでさ、レム…」

(二人は、一体何を話しているんだ?)

聞き耳を立てたくとも心音が邪魔をする。レムと、エースが談笑している姿がお似合いで、胸が痛くなる。

何を話しているの?
二人は付き合っているの?
オレの入る隙間はないの?

彼の相手が親しいものだからこそ、感じる疎外感。自分だけが置いていかれたような気になってしまう、空虚感と孤独感。耐えていた筈の涙が、頬を伝い視界を奪っていく。
苦しさに怒ったチイコが飛び出しても、心はここにあらず。心配そうに鳴く相棒でも、今の心は癒せそうにはなかった。

「マキナ。」

優しい声が名を呼ぶ。ずっと"遠く"にいる彼が、近づくことも出来ない彼の気配を感じるなんて、相当参っている証拠であろう。幻影でもいい、近くにいて欲しい。涙は止まることを知らない。

「泣かないでくれ、マキナ……」

一瞬だが唇にぬくもりがよぎり、マキナはハッと我に返った。

「マキナ…」

なんでエースに見つかったのか、なんでエースが悲しそうなのか、レムはどうしたのか、なんでココにいるのか、聞きたいことは山ほどある。が、今はこんな情けない顔を見られたくない。

「離れて…」

「マキナ、」

「レムと、何を話してたんだ?」

野暮だと思う。二人の会話を探ろうなどと。嫉妬しているところなんて、見せたくなかったのに止まらない。
ねえ、何を?何を話してたの?
問いかけは彼が答えを導き出すまで続いた。

「…素直になれない子との、恋愛相談かな。」

チクリ、と心が痛い。

「いつも傍に居てくれるのに、全然近寄ってくれないんだ。こっちから勇気を出してもすぐ逃げちゃうし、ね?」

エースがチイコに手を出せば、一瞥してマキナの懐に潜り込む。ムッとした彼が見えた。

「頑張り屋で健気で、優しくて。無防備で、他の男に狙われてるから心配なんだ。」

「よく見てる……好き、なの?」

「ああ。」

「なら…告白はしないのかよ………」

「近付いたら逃げるんだから。仕方ないだろ。」

ドロドロする。イライラする。
これだけエースに想われているのに、何故逃げるんだ、エースを困らせるんだ。
自分の叶わぬことを簡単にやり遂げている名も顔も知らぬ女が憎らしい。

「マキナ、今日は御馳走様。」

「え…うん……」

「だから、次は僕に御馳走させてくれ。な、チイコ?」

何でその名を。人前では呼んだことはないのに、―――という言葉は唇によって押し込まれた。プリンの甘い味が口内に広がり照れくさくなる。
チイコがチルルとの距離を詰めた。二匹の距離も0になる。

+END

++++
遠まわしなポエムはマキナに通用しないと思う
エース視点も書こうかなー

11.12.17
修正:12.18

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