えふえふ | ナノ



女尊男卑 X[編

X[



「スコール」

返事はしない。早足になるが、負けじとついてくる影。

「スコールー」

更に早足になる。しかしそれでも歩みは止まらない。

「スコぉールー」
「煩い」

さっきから執拗に後をついてくる男は、子供のような声をあげる。見た目は若いが、一応年上ではある。
年上の自覚なんてさらさらなく、人前でベタベタしてくるわ、挙げ句には先程のような大胆なセクハラまでしかけてくる始末。
このままついてこられたら、また何をしでかすかわかったものじゃない。忌々しいとス振り返えれば、嬉しそうに表情を輝かせ、肩をすくめる。
それでも退く気配はない。
それがよく知っているバッツ・クラウザーという男だなのだ。

「どこ行くんだよ。1人じゃ危ないだろ」
「俺はお前といたほうが危機感を感じるのだが」
「気のせい気のせい! ちゃんと意識してくれてるなんて、愛されてるなぁー」
「バカか」

何を言っても堪えないのは、最早才能である。溜め息混じりに自室向かってた足を別の場所に向けた。
誰もいない秩序の聖域は、静寂に支配されている。いつもはうるさいくらいなのに、不気味を通り越して寂しいと思ってしまう。
それに、バッツとの2人きり。嫌でも相手に意識が集中してしまう。

「スコールは部屋に戻らないのか?」
「 ・・・・・・ 別に」
「安全地帯まで送ったら俺も戻るつもりだったのに」

バッツの言うことが信用出来ないのはスコールじゃなく、同じ状況の者全てだろう。絶対「誰か強行突破してきたら大変だ」と、部屋まで入ってくるに違いない。
その意図が彼にも伝わったのか、頭に手が置かれる。叩かれたのではない。子供を慰めるような、優しい手だ。

「さっきはその、ごめんな。あまりに可愛かったからつい」
「全くだ。戻るまで、一切の接触禁止する」
「えっ。せっかくのチャンスなのに!」

無意識なのかわざとなのか、我慢できずに腰に飛びついてきた。衝撃にバランスを崩して尻餅をついたが、心配の言葉はない。それどころか意識は腰にあり、物珍しそうに眺めては撫で回してくる。
子供体温な手に、悪寒にも似た感覚が湧き上がってくる。
「言った傍から」と口を開きかけて止めた。
撫でるのを止めた手はしっかりと腰を抱き、バッツも背中に密着して離れない。

「バッツ、離れろ」
「スコール可愛い」

肩を押し返そうとして、その細さに驚いた。いつもは筋肉質だからこそ、細い肩から違和感を禁じ得ない。
ああ、こいつも女になってしまったんだ。
そう思うと、更に罪悪感が募り、無下にはできなくなってしまった。

「悪かった」

慌てて手を引いたが、バッツは小さく笑っただけだ。
能天気に見えて彼はいろいろ考えている。手を無理矢理引かれて向かい合わせになると、いつもと違うバッツの姿が異様に気になってしまう。
タンクトップにより、体格がよくわかる。体は丸いし、腰は細く見えるし、胸がしっかりある。スタイルがいいために目のやり場に困ってしまう。

「俺の心配、してくれた?」
「いつもと全然違うからな ・・・・・・驚いただけだ 」
「へへっ、美人だろ?」
「 ・・・・・・ 別に」
「顔真っ赤にされて別に、ないぞー」

楽しそうにスコールの頬を両手で挟み、優しいキス。文句もなければ、拒絶もする理由はない。黙って受け入れるのはバッツのことが嫌いではないから。だが「好き」とはまだ言えない。
長いキスを終えるとスコールはその場にへたり込んでしまった。荒い息を整えているにもか関わらず、目の前にしゃがみこむバッツは楽しそうに微笑むだけだ。
一撃をくらわ制裁を加える力はあるのに立ち上がる力は抜き取られている。そんなスコールに素早く立ち直ったバッツは勢いよく抱きついた。その反動で後ろに倒れ込むわけで。

「お前は何回やっても初々しい反応だよな」
「バッツっ、離、れろっ! 当たってる!」
「当たって? あぁ悪い悪い」

顔に押し付けられた胸は、下着をつけていないため顔へと沈んでいく。
悪そびれた様子なんてない。軽く笑うと押し倒したようなスコールの上から退き、子供のような顔を見せた。これが"彼"のいつもの姿だ。ワザとだろうし咎めても仕方がない、とスコールは深くため息をついてデコピンだけで許してやることにした。

「全く、お前は犬か」
「スコールが飼い主ならいいかもな」
「よくない。俺はこんな面倒なペットはいらないからな」
「ちぇっ」

やっと立ち上がって歩き出した飼い主の後ろを首輪を外した犬が尻尾を振って追いかける。たまに振り返ってくれるのが飼い主なりの不器用な愛情かもしれない。

「次はどこ行くんだ?」
「部屋に帰る。言っておくがデートじゃないぞ」
「何で俺の考えてが・・・・・・あぁ、愛か!」
「違う。それだけニヤニヤされたら嫌でもそういう考えに行き着くんだ。」
「俺って愛されてる〜♪」

(コイツは本当に自分に正直な奴だ)

素直になれない自分にため息をついたらバッツが「どうした?」と絡んできた。悩みの種の頭に手を置いてやれば肩が跳ねた。殴られるかと思ったのだろうか、なにもなければすぐに嬉しそうになる。
こうなれば仕方ない。

「元に戻るまで責任をとれ」

ドキドキしたり落ち着かないのはきっと隣にある存在のせい。皆に見られたくないのは正直な話だが、こういう時こそ不安にもなる。
この男を傍に置いておくのが妥当だろう。
その心の声が聞こえたのだろうか。バッツは満面の笑みを浮かべるとまた勢いよく抱きついてきた。

+END

++++
バツスコ久しぶり。

スコールは美乳。バッツはC〜Dくらい

10.1.26
修正16.9.20

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