えふえふ | ナノ



女尊男卑 U編

U


「何をしに来た、虫けら」

部屋に入った時にかかった第一声がこれだ。
別に不法侵入したわけでもなく、後ろからついてきただけだ。そけなのに思いきり睨みつけられ、フリオニールは困ったように頬をかく。
本気で怒っているのではない、照れているのはわかるがこの言い方はないだろう、と。

「すぐに帰るなんて言うからさ」
「こんな姿でのうのう外を歩けるわけがなかろう」

プライドの高い皇帝らしい言葉だ。
秩序の戦士たちはどうということはなかったが、混沌の戦士たちはそうはいかない。
醜態を見られれば、きっとバカにされてしまう。それが不快なのはよくわかる。
胸はさほど大きくはないが、プロテクターのせいもあるだろう。先程部屋で見た限りだと、Bはあると思う。臀部も大きくなり、腰の細さが誇張されている。
色っぽいというよりは、スレンダーで体系がいい美人だ。

「綺麗なのに」
「煩い」

照れもなにもない。無表情で頬に伸ばした手を払われてしまう。元より切れ長の目を更に細め、見下してくる。
身長が負けてるのが悔しい。

「ウォーリアに言われた時には照れてたのにな」
「あの堅物から出る台詞ではなかったからな。驚いていただけだ」

軽くあしらいながら鎧を脱ぎ始める。
文句を言うが、無理矢理追い出しはしない。鎧を脱いだということは、自分も部屋から出ない。
なんだかんだ一悶着ありつつも隣を許してくれる。皇帝は見かけによらずフリオニールに優しいと、赦してくれていると最近知ったばかりだ。
笑顔でベッドに座り、着替えを待つ。
近くの部屋から破壊音がした。

「な、なんだぁ?」
「方向からしてクジャか。さしずめ自分の変化に混乱して暴れているのだろう」
「そういうお前も焦ってたろ」
「私は子供のように我を忘れはしないし、誰かのように叫びもしない」
「悪かったな」

ムッとして睨み上げるが、嫌みな笑い返されるだけ。意にもかいさず最後の鎧を外し、近くの椅子を玉座に見立てて座る。
いつものように足を組んで偉そうに他人を見下す目。だが今日はそれすら美しく見えてしまう。性格だから直せとは言えない、それすらも魔性の美しさとなってしまうからいいと思っている自分もいる。
皇帝という男には狂わされっぱなしである。

「原因探らないのか? 魔女とはよく話してるだろう」
「あの女はまだ話がわかるだけにすぎん」
「そっか・・・・・・よかった 」
「何を笑っている。不気味な奴だ」

恋仲なんて言われたら立ち直れなかっただろう。自然と笑顔になるフリオニールから距離をおこうとする目。
だが彼は嬉しそうにベッドに寝転んだ。ああ、彼の臭いがする。

「おい、それは私のベッドだ」
「知ってるさ」
「なら起きろ。貧乏臭くなる」
「ひどいな」

強制排除にでようと近付いてくる皇帝。目で追い、ベッドの脇に立ったのを見計らい細い腰に抱きついた。不意打ちと力と体重に倒れ込んできた体を受け止める。端から見れば押し倒されているようだ。

「何を考えている。離せ」
「細い・・・・・・ 」
「聞いているのか」
「美人、いい匂い」

無視しているわけではない。滅多にない体勢に、新鮮さを感じて浸っていた。
皇帝にすれば無視と同じ、一気に機嫌は急降下。魔法で壁まで吹き飛ばされてしまった。

「っ、つう・・・・・・」
「雑魚が」

しかしフリオニールは見逃さなかった。反らされた真っ赤な顔を。

(こうしてると安心するな、ちゃんと俺のこと好きなんだって)

「何をにやけているのだ。気持ち悪い奴め」
「愛情の再確認が出来て安心したんだよ」
「愛情だと? 寝言は寝て言え」
「お前、本当にその性格なんとかしろよ」
「命令するな。平民のクセに」

体制を立て直したところに再び魔法が飛んできた。幸い、デコピンをする程度のものだったが衝撃は十分。頭が大きくのけぞった。

「殺さないだけでもありがたく思っていろ」

凄んでみせる皇帝の言動が、自然と素直になれないだけに見えるのはフリオニールだからだろう。
目線を合わせないのは、顔が赤くなってる自覚をしているため。声が心なしか上擦っているのは、少なからず緊張しているため。
だてに天敵と恋人をやっているわけではない。偉そうな姿を崩したくて、対等な姿を見たくてフリオニールは体を起こして彼女を膝に乗せた。

「なにをする」
「陛下。こんな一平民である私を私室へ招き入れてくれるのは、どのような心境からですか?」

恭しく頭を下げれば、目の前には困った顔がある。
可愛いと思ってしまうのは惚れた弱味か、彼女の魅力か。

「そ、それは、だな」

見慣れない態度と痛いところをつかれ、返答に困っているのがわかる。視線を泳がせ、言葉を濁し、逃げ道を探している。
気づかれないように、フリオニールは笑う。

「広い慈悲の心を見込んで、お願いがあります」
「な、なんだ・・・・・・ 」
「キ、いや、口 ・・・・・・付けてもいい、ですか?」

さっきの飄々とした態度はどこへやら。今更恥ずかしさに襲われて歯切れが悪くなってしまった。
言葉の意味を理解すれば、今度は皇帝が優位に立つ。ふっと笑うと顎を掴んできた。

「いいだろう。貴様如きが私に触れられること、光栄に思え」

上を向かされたと思えば、唇が合わさった。いつもと違う女独特の柔らかさに戸惑ったが、夢中になってしまえば気にもならない。ついついがっつけばくぐもった鼻息が聞こえてくる。
決定権は皇帝、リードするのはフリオニール。随分と変な関係だと思う。
唇が離れると互いの目の前には赤い頬。今度はちゃんと押し倒し、服に手をかけると皇帝からやんわり静止の声が上がる。

「待て。そこまで許可した覚えはないぞ」
「だってさ、今日はいつもと違うから・・・・・・」

興奮して胸の膨らみを凝視してしまうのが嫌でもわかる。
皇帝も「そういえば貴様も女だったな、胸が貧しくてわからなかった」と失笑してくるが構いやしない。危機感がない物言いから余裕を感じて悔しくはなるが、体を許していると考えればいい。
試しに情欲の色を含む目で胸に手を這わせる。大きくはないが、弾力のある胸に興奮してきた。
機嫌を伺うとため息をつくだけで魔法はこない。
いける。そのまま鷲掴みにして柔らかさを堪能しようとすると胸ぐらを掴んで引き寄せられた。

「いいだろう。特別に相手をしてやる」
「ほ、本当か!」
「女も知らんとなると憐れでで目も当てられんからな」

耳元で囁かれた言葉に、顔は一気に赤くなる。

「なにかあれば責任はとれ」

控えめに抱きついてきた細い体に勢いよく抱きついた。

+END

++++
フリ皇
うちの二人はこんな感じ

10.1.18
修正16.9.20

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