えふえふ | ナノ



女尊男卑 混沌編

※性転換
※元♀×元♂



ジタンを追い出してからクジャは荒く呼吸を繰り返した。未だ収まらない興奮に、誰もいない空間に対して目を光らせ威嚇を続けている。
いつもは整った毛は逆立ち、爪を立ててまさに動物の威嚇。
息を整え始めたときに他人の気配がした。眼力を込めて闇の力の源を睨みつけると黒い翼が舞ったのが見え、見知った人物の形になった。

「荒れていますね」
「アルティミシア…っ! オバサンが何の用だ。ボクは今機嫌が悪いんだ!!」

攻撃的に言い放つとあくまでも冷静に上品に笑う彼女、いやよく見ればいつもと違う。
骨格がいつもよりしっかりして体格もがっしりしている。女性特有の体つきではなく、低い声といい喉仏といい完全な男の姿の彼女が立っているのだ。

「オバサン、ニューハーフだったのかい?」

動揺していることは悟られたくない。挑発的に攻撃してみれば眉がひそめられるのがわかったが彼女は余裕だ。強がりではなく有り余った余裕が見えるのが悔しい。
去勢を張っていることに気がついたのかクスクス笑う彼女に喰ってかかろうとすれば距離を詰められ顎を掴まれた。細い指が顎を伝い、喉にも指を這わす。ゾワゾワと走る怖気を振り払うよう首を振れば耳元に唇を寄せられる。

「今はどちらが優位なのか、理解しなさい」

目と鼻の先には彼女の顔。小さく悲鳴を上げると至極楽しそうに唇を重ねられたら。
わけがわからない。何故このようなことをされるのか。自分がこんな目にあわなきゃいけないのか。嫌悪と拒絶で舌を噛めば勢いよく体が離れた。

「やってくれますね」

怪しい笑顔で血のついた唇を拭き取り再び深く口づける。
再び噛みつこうとするのは予想済み。舌と舌を素早く絡めて意識の自由を奪えば体から徐々に力が抜けてゆく。手から力が抜けおちたところで頭をかき抱き深く深く食いつく。
これにはクジャも冗談を言う余裕がなくなってしまった。
このままでは最後まで食われてしまう。直感で危機を感じたのはいいがどう抜け出していいのかがわからない。困惑するクジャと正反対に余裕綽々と見下ろすアルティミシア。相手の反応を楽しんでいるというサディスティックな態度が憎たらしい。

「どうです? いつもバカにした口振りでしたが、逆転される気分は」
「早く、どけっ!」
「未だ自分の立場がわかっていないのですか。哀れな子」

トランスしているために服をはぐなどという手間はいらない。胸に手を這わしてうっとりと相手の表情を楽しむ。

「君は元々女じゃないか! 同性に対してこんな思想を持ち合わせていたのかい!?」
「何を失礼な。私はただ貴方が屈する姿が見たいだけですよ」

嫌な言葉に身の毛がよだつ。同時に体を撫で回す手が速くなる。気持ち悪さにクジャの体に震えが走るが腕を押さえられては抵抗もできない。視線では抵抗にすらならない。
助けを求めるなんて真似はプライド高い彼には死んでもごめんだが、このまま辱められるのはそれこそ屈辱。しかし呼ぶような名前を彼は知らない。悔しさに涙を浮かべて睨めば楽しそうな魔女の顔。愛のない行為はエスカレートして下にも手が伸ばされた。それに思わず息を飲む。

「やめろ! 嫌だっ、ジ、ジタっ!!」

無意識に声にした名前に1番驚愕したのはクジャ自身だ。
慌てて口を閉じるが、相手には聞かれてしまった後である。アルティミシアは驚いてはいるが本人より早く立ち直り笑みを浮かべる。それはそれは楽しそうに。

「ジタン・・・・・・あの小猿の坊やですね。何故天敵の名を?」
「っ」
「前々から怪しいとは思っていましたが、どういう関係なのですか?」

彼女は始終ニヤニヤ笑って返答を催促するように唇を細い指でなぞる。ぞわぞわと鳥肌がたち、わざと逆らうように唇を強く噛み締める。互いに一歩も譲らない。

「まぁいいでしょう。身体に直接聞いてみますか」

行為を再開しようとし始められては意地など張ってられない。相手を退けるのが一番手っ取り早い。まして仲間意識など元々薄いカオス陣営だ、一度仲違いを始めると攻撃に容赦はなくなる。
素早く手を上げて魔法を顔に放てば、当たらなくとも相手は必ず怯む。予想通りに反射で顔を腕で覆う彼女。その一瞬の隙に腹を蹴り上げクジャは下からの脱出に成功した。

「これ以上付き合ってられないよ!」

闇に飲み込まれるように消えて行くのを見送り、腹を押さえていた彼女はポツリと呟いた。「あぁ、逃げられた」と。
1人部屋に残っていてもつまらない。残念そうにため息をついた彼女も先程の彼と同じように闇に消えていった。

+END

++++
アルクジャは書いてみたかった

10.2.8
修正16.9.20

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