child operation
※クジャ幼児化
目が合ってしまった。
粒羅な瞳、といえば可愛いものだが元はあのナルシストである。無意識に一歩ずつ距離をおいていていく。
「尻尾?」
警戒して逆立っているにも構わず、他には見ない尻尾を見つけてはトコトコと近寄ってくる。
「ボクと同じ?」
嬉しそうに青い尻尾をパタパタ振り、見上げてくる"それ"は、クジャである。
大きさがおかしいが、紛れもない兄である。
何を考えているのかがわからない、だがその得たいのしれなさが神経を逆撫でした。
「なんのつもりだお前!」
「何が?」
「しらばっくれんな! 今度は何の作戦」
そこまで捲し立ててぎょっとした。大きな瞳が更に開き、眉が下がる。今にも泣きそうな子供の顔だ。
泣くまで後10秒前、9、8。
「ジタン。子供相手に大人気ないぞ」
「だってよスコール!! クジャだぜ!? 何考えてるかわかんねぇだろ!?」
「プライド高い奴がこんな醜態を曝し、泣くなんてあり得ないだろう。作戦でもな」
「わかんねぇぞ ・・・・・・ 」
鼻をならす子を抱き上げ、スコールは優しく頭を撫でる。意外、と言ったら悪いが、意外だ。
「まぁ原因は絶対アルテミシアだろ〜? 行こうぜ!」
「それがいい」
バッツの楽観的な提案により、進行方向が決まった。
頼まれていた素材集めの最中ではあるが、少しくらい寄り道してもいいだろう。
大人1人と、大きな子供2人、子供な大人が1人。奇妙な4人の旅が始まった。
*
混沌の本拠地までの道のりは、さほど苦難ではなかった。
正々堂々乗り込んではみたが、面々はやる気なんて皆無。敵対心すらないという堕落ぶりで、挙げ句の果てにはゴルベーザが用件を訪ねてくる始末。「受付の兄ちゃん、いつもいるよな」とバッツが皮肉を言うが、本人も苦笑いだ。
「貴方が訪ねてくるなど珍しいですね。それに意外な容姿で」
「ごたくはいい。コイツに何をした」
小首を傾げるクジャを眼前につき出せば「ああ」と短いため息が聞こえてきた。
「幼少期に戻す実験です。鬱陶しいので記憶も消しましたが。」
「じゃあ早く戻して」
「戻りませんよ。暫くは」
その答えに唖然とした。
「勝手に辿り着いたならそれでもいいですが、貴方宛の手紙見ましたか?」
「オレ?」
スコールからクジャを乱暴に奪うと、背中をジタンに見せる。
"引き取って下さい"
「いやこれ捨て猫に貼るものだろ。しかも何でオレ?」
「なついてたじゃありませんか」
「いや、いやいやいや。なついてないって・・・・・・ペットか!!」
「もう離して!!」
毛を逆立て威嚇する小動物よろしく、アルテミシアの手から逃れ、ジタンに飛び付く。咄嗟に受け取ってしまったが、ハッと我に返った。
「お前何してっ!?」
驚き手を離すと、バッツが間一髪のところでキャッチ。
「ジタン〜。子供だぜ、子・供。そりゃ普段は露出狂ナルシストでも可哀想だろ?」
仰向けになりながらもバッツは笑顔で諭す。なかなか酷いことを言っているが、抱きついている本人は気にしていないらしい。
「ボクちん子供嫌いだから持って帰ってよぉ!」
「すまない。私は大きな子供達の面倒で手一杯だ」
通りすがりのケフカの薄情な訴えとゴルベーザの悲痛な訴えに負け、3人は城を後にすることにした。
さっさと自室に戻ってしまった彼女に諦めたと言うのが正しいだろうか。
意外にもいつもは抗議に出るスコールがおとなしいのは、このままでいいと思ったからなのかもしれない。
「でもさ。どうする?」
「なんとかなるだろう。コイツは普段からいつもいるし、皆慣れている」
「引き取るのか。わかった」
「いや、そうじゃなくて」
ジッとジタンだけを見詰める瞳。気付いてる筈なのに無視されては、抱き上げてるバッツが一番辛い。
「ジタンー、手痛くなったから交代」
「断る」
まさかの即決である。
その隙にスコールが横から拐ってしまった。実は子供好きらしい。
「ジタンはボクのこと、嫌いなのかな・・・・・・」
「心配するな。すぐ仲良くなれる」
優しい目をするスコールをバッツが物珍しそうに眺める。視線を横に向けると、ジタンは相変わらずの仏頂面でそっぽを向いてる。やれやれと肩を竦め、ジタンの髪を乱してやる。
「もしかして子供嫌いなのか?」
「好きだけど」
「クジャがジタンを求めてるぜ?」
「その言い方やめろ」
仲間を大切にする彼が、本気で睨むとは珍しい。余程機嫌が悪いのか、尻尾すら動いていない。
「お前さあ!」
「ジタン・・・・・・」
声を辿って2人が見下ろすと不安そうに尻尾を垂らすクジャがいた。
しばらく無言で見詰め合い、ため息をついたのはジタンだった。
「なんだよ」
「・・・・・・抱っこ、して?」
「バッツとスコールにしてもらっただろ」
「そうじゃなくて・・・・・」
どう言おうかと唸るクジャをいぶかしげに眺めてはしゃがむ。その目はまるでハンターのように光っていた。
「本当に何も企んでないのか?」
「何のこと? ボクは別に」
「あぁもうジタン、止めろって!」
今にも喧嘩が始まりそうな雰囲気に、最年長わけ入りクジャを抱き上げ、ようとした。下を見たときにはもう姿がなかく、代わりにジタンの腕の中に姿を見つけた。
「・・・・・・特別だぞ」
こういうツンデレなところは、バッツも嫌いじゃない。今それを言うと今度こそ落っことすだろうから言わないでおくことにした。
それに嬉々として尻尾を振りしがみつく子供を見ていたら、横槍をいれる気にもなれない。
「なぁんか寂しいけどなぁ〜」
拗ねてるわけじゃないが、ちょっとジタンに嫉妬する。
前々からクジャがジタンを好き、じゃれる姿を見ていたが改めて態度に出されると悔しい。
「ま、いっか。スコールー。あと何頼まれたっけ」
「"バハムートの翼"だ。ジタンは参戦しなくていいぞ」
「悪いな」
気を紛らわす為にスコールに飛び付くけば、同じく不機嫌になっていたことに笑ってしまいそうだった。
仲間を取られたからか、いや子供を取られたからかか。考えることは同じのようだ。
「ジタン」
「なんだよ」
「ジタンの傍が一番落ち着く」
「そう、か」
無関心と言えばそうだが、満足そうとも取れる返事に、柔らかく笑う。赤い顔を指摘すれば自覚はしてくれるだろうか。いや、きっと怒りだすだけだ。
「ジタンー、俺達が戦ってる間に虐めるなよー」
「虐めてねぇ。ちょっと警戒してるだけだ」
予想通りの反応に、バッツとスコールは顔を見合わせて小さく笑う。
一方降ろされてしまい、クジャはバッツを睨んでいる。敵として認識して噛みつこうとすれば、ジタンに頭を撫でられてすぐに機嫌がよくなった。
「俺も子供ほしいなぁ」
「おい、俺を見ながら言うな」
「よし、行くぞスコール!!」
「おい待て! 1人では危ないぞ」
早く戦いを終わらしの微妙な空気に割り込もう。1人はしゃぐバッツの背中をスコールが追いかけた。
+END
++++
甘えるクジャと、子供好きそうな三人をかいてみた。本命はスコール
09.5.5
修正16.8.27
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[mokuji]
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