えふえふ | ナノ



居場所2

※女体化


クジャと出会ってから数ヶ月。
すっかり秩序の生活に慣れていた。最初は警戒していた者いたが、だけも普通に接するようになった。混沌の戦士たちもに動きはないあたり、仲間と思ってないのだろうか。だがそれでいいと願う自分がいることに驚いてしまう。
困惑と憤りが沸き上がるこの感情は、一体何が正しいのだろうか。





「ジタン、見てるの?」
「ああ、ティナか。ノックしないなんて珍しい」
「したよ。返事がなかったのに入っちゃったけど」

今日もクジャは、あてられた部屋の窓からぼんやりと外を見つめていた。
正確には、一点を目で追っている。外では思い思いの行動をする戦士たちと、バッツ、ティーダとはしゃぐ彼の姿。
ティナはボーッとする彼女を心配するように覗き込んだ。

「元気、ないね」
「どうしていいかわかんない。初めての感情だから」

窓枠に体重を預け、ポツリと呟く。何を言っているのか、脈絡の掴めない発言だがティナは理解し、困った顔で笑う。
クジャは、ジタンが好きだ。大好き、愛してる、というやつだ。
女同士で仲が良く、ティナは前から相談を受けていたから知っていた。初めは素直な告白には驚きはしたもの、わかっていたから内容には驚かなかった。

「もう、好きって伝えた?」
「冗談に思われてるよ」
「言い過ぎなのも禁物だね」
「ボクを避けてるし」
「迫りすぎかな。一緒に寝ようはマズイよ」
「でも変な誘いじゃないよね?」
「女の子としてはマズイ、かな」

感情に任せて、毎日のように抱きついたり追いかけ回したりとアプローチをかけているが、ジタンは持ち前の切り返しですばしっこく逃げまわる。
ここに残る際に他ならぬ彼から言われた"男を意識的に誘うな"というルールは守っているが、避けられるのは何故だろうか。検討もつかない。

「ふう、ティナは可愛いからいいよね」

クジャが人を誉めるなんて珍しい。失礼ながらも目を見開いて横顔を凝視するが、その視線すら気づかない様子だ。

「どうしたのいきなり。クジャは充分美人だよ?」
「そうだけど。"可愛い"子が好きなのかもって」

美人を否定しないのはナルシストが故。だが段々マイナス思考が強くなってきた。慰めるように頭を撫でられて体を委ねる。

「元気だして。ジタンは女の子が好きだから。私に声かけるのは挨拶みたいなものだよ」
「うん、そうだけど」

遠くだけを見つめる切ない瞳に、ティナもドキッとしてしまう。
同性から見ても、神秘的で綺麗なのだ。男がなにも思わないわけがない。

「じゃあ私、ご飯作ってくるね」
「わかった」

扉をくぐるまで手を振っていたと思えば、閉まると同時にオニオンナイトを呼ぶ声。仲がいいな、と羨みながら窓枠に座り込んで体を預ける。
なにも思い付かない。
眉間に皺を寄せ、心底困った顔で唸ると小さく呟き、ため息をつく。
自分の中で渦巻く感覚の限界が近い。
これは病のようなものだ。自分ではどうしようもならない。ピクリと体が跳ね、体を抱き締める。これはまずいことになった、と窓を急いで閉めると部屋へと籠るしかない。


「どうしたジタン」
「いや、何でもねぇよ」
「そうか?」

そんな様子を、ジタンは見ていた。
偶然木の上から、いや必然だ。クジャの不審な行動に首を傾げつつ、振り返って待つ二人に笑いかけた。


**

ジタンは少々焦っていた。
夕飯になっても姿を見せないクジャが心配になり、つい早足になる。いつもなら逆に呼びに来るし、なんせ夕方から姿を見ていない。
いつも見られているのは知っていた。その視線を見て見ぬふりをしていたのは、他ならぬ自分の意思である。
こういうときだけ気になってしまう、というのは勝手だろうか。「見るな」と言ったり「見ろ」と願ったり、本心の周りに霧がかかる。
確かティナの隣の部屋だった筈。助成の部屋に入るのはさすがに気が引けてるが、意を決して扉を開けた。

「ここか。クジャ、どうした」

ノックをするが反応はない。
それでも気配はあるし、耳をすませば小さな声も聞こえる。聞こえていないのだろうか、返事はない。
耳をそばだてると、聞こえてきたのは何かを耐えるような声に小さな声。泣いてるのかと思ったが違うらしい。
甘い響きを帯びている気がする。

(まさか、敵)

「クジャ!」
「ぇ、ぁ、ジタン!?」

強く扉を開け放せば、彼女は1人ベッドに座り込んでいた。窓とカーテンを締め切り、ベッドから上半身を起こしている。

「どうしたんだい? 黙ってレディの部屋に入ってくるなんて珍しい。」
「何回かノックしたぞ」
「え、あぁ、そう ・・・・・・なの?」

しどろもどろな返答に眉を寄せる。誉めたくはないが、嘘をつくのはうまい部類だ。なのにこんなにわかりやすく動揺するなんて「詮索してください」と言っているようなもの。ゆっくりとベッドに近づけば息がつまる気配がした。
「本当に何もないのか」
「何でそんなこと言うのさ」
「甘い声がしたから・・・・・てっきりカオスの誰かに・・・・・って」

乱れた彼女を想像してしまい、真っ赤になる。
いつもなら笑い「そんなわけない」返ってくる。だが今日は違う。
妙な間が開いき、目線を反らされた。
なんでそんなことをする、何故気を引くようなことをする。否定の言葉を待ちながら、混乱しきった頭でゆっくりと距離を詰めた。

「ちょっと体見せてみろ。脱げ、とは言わない」
「や、やめてよ。それ以上近づくと叫ぶよ」
「クジャ」

静かな威圧に体が跳ねた。ゆっくりベッドに乗り上げたが、逃げると思いきや脅えるだけで動かない。前屈みで、しきりに足を気にしてるようだ。
間に合わなかったのだろうか。もっと早くきてやれば。
悔恨と焦燥だけがジタンを突き動かしていた。

「何もないなら普通にしろよ」
「ほっといて、お願いだから・・・・・」
「クジャ」

優しく手を握り、引っ張ると容易に離れた。
いつもなら薄い布でなんとか下半身を覆ってる彼女。だが今は何もなかった。
見られたと同時に隠し、ベッドの端へ逃げ出した。理解した頃には後悔と、赤い顔。
顔を歪め、泣き出しそうな面持ちで背を向けられたことで、尻尾に気がついた。服ごしにわかるが、"つ"の形で曲がり、原点に戻り。
見ちゃいけないものを見た気になり、視線を外す。

「見ないで」
「それって」
「あの感覚を覚えて、身体が疼くんだ。・・・・・誘ってるわけじゃないよ、約束は破っていない」

「だから、見ないで」と切に言われるとジロジロ見るわけにもいかない。
気になるってしまうのは男の性だ。隠すように上着を投げ渡せば、受け取りもせずに頭を覆ってしまう。

「気分転換しようぜ」
「一緒にいれば君を意識しちゃうよ・・・・・・」
「ほ、他に方法、ないのか」
「僕の前からいなくなってくれるか、相手してくれたら・・・・・・ 」
「ダメだダメだ!! オレ初めてだし結婚出来る年じゃないし、責任取れないしちっさいし好きな子いるし!!」

心に決めた相手には、ちゃんと答えてあげたい。流されるままなんて、きっと後悔する。
支離滅裂に一気に捲し立てると、ムッとした顔。止まるように促すが、四つん這いで迫ってこられれば胸に気を取られてしまう。

「大丈夫だよ。ボクが教えてあげる」

**

ヤってしまった。
真っ赤な顔で頭を抱える裸の彼がベッドにいた。横にはスヤスヤ眠る彼女の姿。身に纏うものなど勿論ない。
遊郭で手取り足取り教えてもらったウブな少年が "抱いた"というより"抱かれた"という
状況だ。自己嫌悪もする。
にしても床上手ってこういう奴を言うのだろうか。
初めての感覚が気持ちがよすぎてどうにかなりそうだった。
彼女が慣れてると嫌でも知り、複雑な心境に陥る。

(えっと、これってどう処理するんだっけ?

独特な臭いはいい気はしないし、綺麗好きな彼女が目を覚ますときっと怒る。
とりあえず風呂だ。
こっそりベッドから脱け出すと、扉を開けて顔だけ出し周囲を伺う。
右よし、左よし、後ろよし。勿論静寂のみで誰の姿もない。誰もいないとわかれば下だけを履き、彼女はシーツでくるめば出来上がり。情事の名残が色濃く残る体を静かに抱き上げ、尾をつかって扉をくぐった。
気配に細心の注意をはらいながら、風呂場を目指す。

「ん・・・・・・」

睫毛が細かく動き、綺麗な蒼色が見えた。寝ぼけてとろけた瞳から、乱れた姿を思い出す。体の火照りが蘇り、思わず落としてしまいそうになった。

「あっと、その、悪い。起こしたな」
「ジタン・・・・・・?」

精一杯気取ろうとはしてみたが、赤い顔では格好もつかない。しかしまだ微睡みの中にあるクジャは深く考えてはいないようだ。
突然強い力でしがみつかれ、驚きはしたが優しい笑顔を浮かべる。

「どうしたんだよ。まだ眠いか?」

身動きひとつせずにしがみつく大きな大人には困ったものだ。少し揺さぶってもみたがびくともしない。
困りきって立ち止まっていると、人の気配がして尻尾を捕まれぎょっとした。

「ジタンか。どうした」
「ク、クラウド!?」

いきなり後ろから声をかけられ、振り返るとクラウドが欠伸を噛み殺しつつ立っていた。半分目が開いていないが、意識ははっきりしているらしい。さすがソルジャー、気のはりかたが違う。

「お楽しみか」
「いや、その、あのな」
「ウォーリアには黙っておく。早く体を清めてやれ」

そのままトイレに行くのか、と思ったが途中で振り返ってくる。どうやら見張りを兼ねてくれているらしい。さすがソルジャー、さすが年上。頼りになって感謝もしきれない。
忍び足で急いでついていこうとするが、首に巻き付く腕が重い。苦戦を強いられていると、先にタオルを持ってきてくれた。お礼を言えば、ヒラヒラと動く手だけ残して角へと消えてしまった。
さて、どうしようか。浴槽まできたのはいいが、眠り姫はまだ起きない。

「眠いなら風呂はいいか?」

返事は期待していなかったが、意外にもすんなりと首を横に振られた。
しかし顔は上げない。不思議に思って覗き込もうとすれば、平手で顎を押し返された。結構痛い。

「なんだよ ・・・・・・満足出来なくて怒ってる、とか」
「違う」

怒っているのは明白。寝ていたと思っていたが、ただ感情に任せて締め付けられていらしい。絞殺されなくてよかった。

「君、好きな子なんていたのかい」
「へっ。あー ・・・・・・ 」
「誰が好きなの」

目を細めて詰問されて汗が流れる。後ろめたいものがあるわけではない。だが怒らせたらどうなるか、という焦りからの行動だ。
しかし彼女には間違った方で伝わってしまったらしい。つり目が更に細くなりピリピリとした魔力まで感じる。


「何か誤解してないかい?」
「何が」
「俺が好きなのはクジャ、お前だよ」
「 ・・・・・・は 」

リップ音をさせて唇から離れると放心状態のクジャ。してやったりとジタンは笑う。
抱き締めれば、肌から伝わる互いの体温。怒っているわけではないことに安心した。

「オレの好きな人、わからなかったか?」
「いつも避けてたくせに・・・・・・」
「あれは ・・・・・・恥ずかしかったんだよ。迫られて緊張したし、一緒に寝ようなんて心臓止まりかけたし」
「ならどこが好き? 具体的に言ってよ」

恥ずかしがるのをわかっていての確信犯の笑顔。今まで焦らした仕返しなのだろう。全く、意地の悪くて綺麗な小悪魔だ。

「プライドが高くて、自意識過剰だけど確かに賢いし、綺麗で可愛い。淋しがり屋で強がりで ・・・・・・これで満足か」
「ん。上出来ってことにしてあげよう」

どちらともなくキスを交わすと、幸せそうに笑いあう。額をコツンと合わせるとクジャの甘い香り。

「こういう時はカッコイイね。夜はボクがリードしてたのに」
「うっせぇ! あれは・・・仕方ねぇだろ」
「悪いなんて言ってないよ。ボクが優位な方が楽しめるからね」
「お前、かなりSだよな」
「さぁ」

クスクス笑うと、首筋に吸い付くクジャ。ピリッと痛みが一瞬走り、赤い痕だけが残った。

「君はボクの物だよ」
「そりゃ勿論。お前こそ我慢出来なくても浮気すんなよ?」
「ボクは淫乱じゃないし、嫌いな奴に身体を許すほど酔狂じゃない。ジタンこそ、ボクというものがありながら浮気しちゃダメだよ」
「大丈夫。お前に夢中だもん」
「はは、この美しさは最早罪だね」
「はは、言ってろ」

冗談を言い笑いあう。安らいだ時間は少しずつ過ぎていく。

「ふぁぁ、安心したら眠くなってきちゃった・・・・・・」
「ちょっと待てよ。風呂はどうするんだ」
「君が洗っておいて・・・・・・」

それだけ言い残すと、薄情な寝息が聞こえてきた。
風呂へと入れようとするが、睡魔に襲われてはどうしようもない。
タオルで簡単に体を拭き取ると、なんとか持ち上げて部屋へと向かう。

「ジタン ・・・・・・おやすみ」
「ん。おやすみ」

すりよる彼女を見ていたら、多少の苦労もなんとかなりそうだ。抱え直してやれば、嬉しそうに胸へとすり寄られて暖かい気持ちになる。
長く触れ合っていなかった穴埋めと、懐かしい香りに安堵を覚えた。


***

「ジタン」
「ん ・・・・・・ 」
「すまない。ばれた」

朝目覚めると視界に入ったのは両想いになれた彼女ではなく、夜に助けてくれた彼。しかし謝罪とは一体。

「ジタン」

この声は。

「ん、なんだい朝から・・・・・」

もぞっと動きだし、布団から顔を出したクジャを素早く再び押し込めると、声の方向にギリギリと首を回していく。

「・・・・・お前はまだ未成年だろう? 責任のとれないうちはそういうことは許さないと言っただろうがっ!!」

一家の大黒柱から大目玉を食らったのは言うまでもないだろう。

+END

++++
エロ割愛
泣いた理由は、かなり乙女だそうですが忘れました

09.5.
修正16.8.26

[ 706/792 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -