えふえふ | ナノ



本心の行方

※ティーダ視点


本日快晴。だがご機嫌は曇り空。
今日は遊び相手になるジタンもバッツも留守。いつの間にかスコールと一緒に素材集めに駆り出されてしまったらしい。
誘ってもらえなかったことにも腹が立つが、なによりも暇なのが不機嫌になる一番の理由である。
何をする訳でもなくうろついていると、目立つ金色を見つけた。
誘われるように足を進め、徐々に早くなっていく。

「クーラウド、なーにしてるッスかー!」

近くまで行けば、剣の手入れをしているのがわかった。
だが走り出したティーダは急には止れない。勢いのままに背中に飛びつけば、バランスを崩してしまった。恨めしい視線を向けられるが、遊び相手が見つかったことで自然と笑顔になる。
無邪気な笑顔に険が抜かれ、ため息を残すと再び愛剣フェンリルへと視線を戻してしまった。

「手入れッスか?相変わらずマメッスね」

返事はないが、振り払いもしない。許されているんだと思うだけでなんだか心が温かくなる。
大きな背中に抱きついているだけでなんだか気分が高揚して、落ち着かなくなってきた。父を思い出すからだろうか、いや違うだろう。首を傾げながらも今の気持ちをポツリと呟いた。

「暇ッス」

囁く形になってしまい、クラウド少し肩が跳ねた気がする。これだけ密着していると嫌でも聞こえるだろう。
無視を決め込んでいたクラウドが手を止めて振り返ってくれた。それだけでも嬉しくなってきた。

「いつもの二人はどうした」
「スコールたちと素材集め行った」
「そうか。災難だな」

そっけない答えではあるが、背中から落ちないように体勢を変えてくれた。クラウドは冷たいようで優しい。
黙って先に行ってしまうこともあるが、ちゃんと待っていてくれる。困ったことがあれば気遣ってくれる。素っ気ないのは性格であり、心までも冷たい訳ではないのはティーダもよく知っている。
抱擁を強くすれば、落ち込んでいると勘違いしたらしく後ろ手で頭を撫でてくれた。

「なあ、手合わせしねえ?」
「ウォーリアは」
「遠くに行き過ぎないならいいってさ」

模擬戦は、ウォーリアが許さないことが多い。
我を忘れて本気を出す者もいるし、限度を知らずに走って敵の本陣近くまで行ってしまった者もいる。なによりも、コスモスのいる聖域で暴れると激昂する。
いちいちウォーリアの表情を伺うのは面倒くさい、それでもこういわないとクラウドは重い腰を上げないだろう。現に今、興味深い話という顔をして興味を持ってくれている。
これなら彼の気を引けるかもしれない。期待の眼差しを向けているたが、遠くから彼を呼ぶ声がしてむっとした。

「クラウドー」
「オニオンナイト。ティナ」

面白くない。クラウドの気が別の方向へと向いているのが面白くない。
睨みつけるように2人を見ていたら、拗ねているように見えたらしい。「どうした」と気遣い、頭を撫でられてしまった。
それがまた子供扱いされているようで、対等に扱われていないようで悔しくなり頭を振って振り払った。
実は気のせいでした、というわけにも行かず2人は目の前にきて足を止めた。

「ティーダもいたんだ」
「オッス。どうしたんだ?」
「クラウドにちょっと聞きたいことがあって」
「なんだ?」

何故かオニオンがティーダを見て怪訝な顔をしたが、理由はわからなかった。ティナに「怒ってる?」と言われて理由がわかった気がする。どうやら不機嫌な顔をしてしまっていたらしい。
慌てて笑顔を作るが、なんだか胡散臭くなってしまった。
そんな諌めながらクラウドはオニオンと話を始めてしまった。2人の邪魔をしてはいけない、と背中から離れるとティナに軽く叩かれて振り返る。

「お邪魔・・・・・だったかな」
「何がッスか?」
「せっかく二人きりで話してたのに」
「別に気にしてないッスよ。なーんか、寂しい気もしなくもないけど」

痛みを誤摩化すように笑うが、きっとティナにはわかっているのだろう。
小さく優しい微笑みを浮かべながら、手を取りティーダに言い聞かせるように断言する。

「好き、なんだね」
「そうだけど」
「そうだね。それがティーダらしいね」
「?」

一体ティナの言葉にはどんな意味があるのか、ティーダにはすぐ理解できなかった。それでも彼女は満足そうに手を握り返すだけ。取りあえず笑っておこう。つられて屈託のない笑顔を浮かべた時には、2人の会話も終わっていた。

「ティナ、わかったよ」
「お疲れ様。じゃあ行こうか」

オニオンがティナに駆け寄り、ティーダとの手を引きはがす。いちいち嫉妬しなくても盗らないっつーの。心の中で呟くティーダを睨む姿は、普段の大人びた姿ではなくてただの少年だった。

「じゃあなー」
「ふんっ」
「じゃあね」
「またな」

ティナの言葉で何か答えが出たような気もしなくない。
2人がの背中が見えなくなるまで手を振ると、満足したようにクラウドを見た。
視線が交差した。
さきに視線を外したのは意外にもクラウドだった。なんだか拗ねたようにも見えて、なんだか可愛い。今度はティーダが頭を撫でてみると、更に困った顔をする。
新鮮な表情に思わず笑ってしまうと、睨まれてしまった。

「ティーダ。やるぞ」
「何をッスか?」
「模擬戦だ。」
「そうこなくっちゃな!」

勢いのまま抱きつけば、目を丸くされた。押し返されるかと思いきや、動きはない。硬直しているようだ。しばらく抱き心地のいい体に密着していると、背中に腕が回ってきた。
これには驚くしかない。
きっと他意なんてないのだろうが、応えてくれるとは思っていなかったから。

「そうだ、勝った方は今日の晩御飯を半分貰えるってことでやろうぜ!」
「俺はそんなにいらない」
「じゃあ好きな物半分ずつで」
「お前が食べたいだけだろう」

「ばれたか」と笑うティーダにつられてクラウドも小さく微笑みを浮かべる。しばらく笑い合ったが、剣を構えると真剣な顔になる。
互いに拮抗した力と、充実した時間。たまには騒がしい友人と離れて、静かに過ごすのもいいかもしれないと思った。
今はこうやって他愛無い会話を楽しむだけでいい、そう思っていた時期も彼にはあったというお話。

(そういや、オニオンと何話してたんスか?)
(セフィロスの倒し方)
(イミテーションッスよね?)
(本物は絶対俺狙いだからな)

+END

++++
ティダクラってマイナーってレベルじゃねーぞ
バカトリオは総攻め

修正16.8.3

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