えふえふ | ナノ



無邪気な悪戯

※スコール受け気味


少し怪しく曇った空の下。二人の子供たちは、今日も野を駆け回る。
一人は年下、一人は年上。不思議なことに、年上が一番無邪気に走り回り笑顔を振り撒いている。
年下は大人びているが、好奇心旺盛で年長について回っている。真ん中の少年は、遠巻きに二人を見つめるだけだ。
つくづく元気だな、と思いながら。

「バッツ、次あっち行こうぜ!」
「おう、競争な!」

年長であるバッツと、年少のジタンがわいわいはしゃぎながら走る。興味のあるものを見つけては、楽しそうに駆け寄る姿はさしずめ小学生。
いつも目ざとく怪しい場所を見つけては、運よくアイテムを拾ってくる。ジタンの盗賊としての勘か、それともバッツの強運か。わからないが、勝手に行動されるのは迷惑な話ではある。

「オイ、警戒くらい」
「大丈夫だって!」
「オレがいるしな」

この子供たちは何を基準に言ってるんだろうか。毎度頭を抱えさせられるが、言っても無駄である。
今も見つけた大きな湖をめがけて全力疾走中なのだから。
すばしっこいジタンと、足の長さと体力で距離をつけるバッツ。
勝負は僅差だったが、今回はバッツの勝ちだった。

「おーっし一番乗りっ」
「負けたぁ! でも次は負けねえぞ?」

遠くの目的地から、二人のはしゃぎ声が響いてくる。荒い息をつきながらも叫ぶとは、底無しの体力である。勿論スコールら走りはしない。後からゆっくりと合流するだけだ。
これが二人と行動を共にしてから、何度も繰り返された一連の流れ。
何故かイミテーションにも敵にも会わないのは、運がいい。 何度か「嫌な予感」とジタンが走り出したことに、関係があるかもしれない。その強運だけには感謝している。
だがこのままでは体力と胃がもたないだろう。悪運と無邪気さには感心を通り越して呆れすら生まれる。
ふと、前から視線を感じた。思案をやめて前を見ると、四つの瞳がキラキラ輝いているではないか。何だ、と警戒しながら問えば、バッツが笑みを返した。

「スコールって、笑わないよな」
「そうだよな。俺も同じこと考えてた」

いきなり何を言うと思えば、そんなことである。
ジタンの相槌に、「だよな」とバッツも大きく頷く。先程より視線が強くなり、頭が痛くなってきた。
二人は何を企んでいるのだろうか。

「笑わないと福が来ないぞ」

そんなこと言われても困る。
眉間にシワを寄せて睨み付ければ、ジタンが背伸びをしてシワをつついてきた。

「ほらまた眉間に皺。無愛想だとモテねえぜ」

そんなことはどうでもいい。異性からの視線をきにするのは、ジタンだけだろう。「そうなのか?」と無邪気に首をかしげるバッツがその証拠である。
笑顔を強要してくる子供たちをかわしながらため息をつくと、二人が顔を見合わせ悪戯に笑う。

「やるかジタン」
「おう。いくぜバッツ!」

どうやら息のピッタリな悪餓鬼は、とんでもないことを思い付いたらしい。嫌な予感に身構えると、突然背後から気配がした。

「うりゃ!」
「なっ」

いつの間に回り込んだのだろうか。バッツに羽交い締めにされた、慌てて体を捩る。
バカそうに見えるが、体つきは立派な成人男性の体。本気で押さえつけられてはもがくしかできない。

「離せ!」
「ヤだね。ジタンやれっ」
「おーっし、いくぜ!」

一体何をするのかと思えば。
ニンマリと笑ったジタンが手をわきわきと動かし、スコールに襲いかかった。正確には、腋をくすぐりだした。
逃げように背後の男は力が強く、こういう時に限って最年長の力を思い知らされる。

「スコール、わーらーえー!」
「そうだぞ、わーらーえー!」

元々敏感でもないし、この程度で笑えるなら苦労はない。ただただ体を這い回る奇妙な感覚に耐えていると、突然攻撃がやんだ。体の緊張が解け、力を抜いたその瞬間。

「ひっ」

首筋に息がかかり思わず上擦った声が上がってしまった。
ジタンは尻尾をピンと立て唖然とし、バッツは硬直したバッツが顔を見合わせる。
申し訳ないような、興味津々なような、気の抜けない表情と気まずい沈黙。
力が緩んだ隙に振り払い、首を押さえる。きっと今、顔は真っ赤であろう。
気まずい空気を壊したのは、バッツの屈託のない笑顔だった。

「はは、スコールって首弱いんだな」
「んっ止めろ」

面白いことを知ったと言わんばかりに、バッツが全力で飛び付いてくる。ジタンも楽しそうに尻尾を振ってまとわりついてくる。
よりによって好奇心の塊に、まずいことを知られてしまった。

「うりゃうりゃっ」
「〜〜〜っっ」

脇腹を、腕を、首をくすぐり出すバッツと、尻尾で鼻を擽ってくるジタン。完全に調子に乗り出した二人に、堪忍袋の緒が切れた。
バッツには、顎目掛けて肘打ち。ジタンには拳骨をお見舞いしてやる。

「グッ」
「ぐえっ!」

手加減なしの攻撃に、蛙が潰れた悲鳴が二つ上がる。鈍い音がしたが、もしかしたら打撲かもしれない。

「・・・・・・調子に乗るな」

心配だが、自業自得である。
気まずい空気と視線から逃げるよう、目を合わせず言い放つ。再び身の危険を感じたので、早々に立ち去ろうと足を早めることにした。
ああ、顔が熱い。次からはどんな顔をして会えばいいのだろうか。
残されたバッツは、痛みなんてなんのその。膨れっ面でスコールの背中を見つめていた。

「痛てて ・・・・・・アイツ、可愛いところはあるけど、容赦ねえよな。」
「そうだよな、っと。できた!」
「何してんだよ」
「へっへー。スコールの声を録ってたんだ。珍しいからな」
「流石盗賊!」

これでしばらくからかわれたのは、別のお話である。

+END

++++
何故録音機があるのかつっこんではいけない

修正16.8.1

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