えふえふ | ナノ



異世界不可思議日常的話

「ジータン♪」
「うわぁぁぁぁぁぁ出たぁぁぁぁぁ!」

朝から元気に響き渡る絶叫と、撒き散らされるハート。
中心で鬼ごっこを繰り広げる二人と、遠巻きに眺める仲間たち。
コスモス陣ではいつもながらの平和な光景が広がっていた。

「飽きないよな」
「つーか懲りないッスね」

バッツ、ティーダが慣れた顔で二人を見る。その先には、今にも飛び付かんとするクジャと本気で逃げるジタンの姿がある。
決して敵であるクジャに攻撃を仕掛けないのが、彼ら彼女らの暗黙の了解。ジタンの因縁は自分で張らすべき ・・・・・・ という配慮は建前。真実は"巻き込まれたくないから"と"面白いから"という、薄情な理由からである。

「ジタン、大丈夫かーい?」
「大丈夫なわきゃねぇだろ!?」
「叫ぶ元気があるなら大丈夫だね」

心配してるわりには口だけで動かないのは、見せかけだけのまとも人、セシルである。心配で助け船を出そうとするティナを止めるオニオンナイトは、巻き込まれたくないオーラがびしびしである。これでもマシな部類なのが恐ろしい。

「助けてあげなくていいの?」
「大丈夫だよティナ。ジタンは強いもの」

これほど信頼より遠く離れた言葉ないだろう。恨めしそうに睨んでくるジタンに失笑を返し、オニオンは紅一点だけを死守する気満々である。
まともの部類にはいるクラウドに助けは求めようとして、やめた。クジャから己のストーカーを思い出し、般若の形相をしている。今声をかけたら、変態共々やられかねない。
その他ウォーリアは放任主義、フリオニールはティナとオニオンと洗濯物をとりこむのに忙しい。

「仲間がいねえ!」
「ごらん。仲間なんてこんなものだよ」

後ろの変態に煽られた気がするが、無視に限る。仲のいい二人なら、と思って視線を向けるが。

「バッツー。ブリッツやろうぜー」
「ブリッツって、お前の好きなあのゲーム?二人で出来なくね?」
「ジタ ・・・・・・ンは無理ッスね。なら走るか!」
「お前ら!!薄情者ォォォォォォ!!」

脱力して古典的に転けた瞬間に、遂にクジャに捕まった。抱擁を受けながらも、ジタンはまだ諦めない。
叫び声で威嚇しながら、友人たちへの報復を誓うのだった。落ち込んだら負けだから。
こうなれば、最後の砦である。

「スコール!助」
「すまない」

最後まで聞かずに即答である。

「なんでだよ!」
「盗賊よ。しばらく待ってくれないか。獅子の愚痴を聞きながらEXゲージを貯めているのでな」

いつの間にきていたのだろう。カオス陣苦労組、ゴルベーザが簡易のお茶会の一部に鎮座していた。気付けばウォーリア、スコール、セシルを加えてのんびりと茶菓子をすすっているではないか。
こっちは抱き潰されそうなのに、なんだこの温度差は。神様とは残酷なものである。

「ジタン。光とコスモスを信じろ。そこから活路は開く」
「それなんの宗教!?」

神はどうあろうが残酷らしい。言いたいことだけを言い残し、ウォーリアはお茶をすすりだした。見事なシカトである。
その内無視されて拗ねたクジャが、尻尾を堅結びして遊び始めた。
特に意味はないし、不便もない。だがほどくのにどれだけの時間を要するのかを考えれば、非常に迷惑である。

「痛い痛い!力強いなお前!」
「尻尾キャラなんてボク一人で十分だよ!」
「お前ホント何なんだよ!」

自らの意思で隠している者が何を言っているのだろう。
最後は堅結びをやめ思い切り引っ張りだした。最早構ってほしいのか攻撃がしたいのかわからない。

「ギャアァァァァァァ! 抜ける抜ける! いてえ!!」
「ティーダ、ボコと遊びに行こうぜ☆」
「クラウドだろ?」
「お前ら後でクリスタルワールドこいよ!? 絶対だぞ!? フリじゃねぇぞ!?!?」

蜘蛛の子を散らしたように逃げる二人に吼える一人。これはもうサルではない、ゴリラだ。

「待たせたな」

やっときました救世主。ヒーローとみまごうマントを翻す様に、ジタンも思わずキュンとしてしまいました。
これが吊り橋効果と言うやつです。
セシルは後に、これほどいい笑顔のジタンは初めてだと語ったそうだ。

「なんだいゴルベーザ。ボクとジタンの邪魔をする気かい?もう少しで尻尾キャラがボク一人になるのにさ!」
「それはダメ!!」

乱入してきたのは、まさかのティナだった。
洗濯物は終わったらしい、いやオニオンに押し付けてきたらしい。恨めしい視線がジタンを射抜く。
フリオニールは野バラに水をやり、指が遂げに射ぬかれた。

「私の癒しを奪う気!? 尻尾がないなんて、私耐えられないわ!」
「おや、ボクが来てあげるよ」
「ダメなの! いつもフラフラ揺れる尻尾を見てないとダメなの! それを見て『掴みたいな ・・・・・・ モフモフしたいな ・・・・・・ 引っ張りたいな ・・・・・・ 』って考えるのが日課なの! それに貴方はトランスしないと尻尾が出ないじゃない!!」

普段はおっとりな彼女がここまで力説をするとは、誰が想像しただろうか。常に一緒にいるオニオンすら洗濯物を落として硬直している。
ジタンは尻を抑えて震えるしかなかった。

「いつもトランスしてるならいいけど ・・・・・・」
「え」

暫く考えていたクジャだが、突然毛色が赤くなる。ゆらゆらと尻尾を揺らしながら、改めてジタンを抱き潰す。
しかしティナはもうなにも言わなかった。綺麗な笑顔で親指を立てるだけである。尻尾があればなんでもいいらしい。

「ちょ、ゴホ。オニオン! ティナちゃん止めてくれよっ」
「ティナが幸せならいい」
「スコール、セシル!!」

一方ご指名を受けた2名は。

「フリオニール。何か手伝おう」
「助かる。なら今夜の素材をとってきてくれるか」
「兄さーん」

他人のフリである。
クラウドは、いつの間にかやってきたセフィロスと対峙している。
今話しかけると、マジギレさせるのは皆が知っている。お茶会の余興の一つにするくらいなら許されるために、皆が静かに見守っているという薄情な状況が増えてしまった。
こうなったら最後の手段だ。

「クジャ」
「やだね」
「まだ何も言ってねぇ!」

すりよる珍獣にダメ元で訴えるが、話すら聞いてもらえなかった。
ならば最後の手段マークU。
駄々っ子のように転げ回って乱雑に落とすことに決めた。
端から見たら、猫がじゃれて砂浴びをしているようだ、とウォーリアたちは思った。だがそれを口にすればきっとこの猿は興奮して飛びかかってくるだろう。
ここでは他人のふりが最善の策なのだ。

「落ちろぉぉぉぉ!」
「とり憑いてあげるよ!」
「お前が言うと笑えねえからやめろ!」

キャンキャンと喚く猿たちの真後ろから、ため息が聞こえてきた。

「全く。さっさと帰るぞ」

いつの間に背後に回ったのか。ゴルベーザの飛ばした岩が、クジャの後頭部、オマケにセフィロスに当たった。ゴンという鈍い音を合図に、EXモード突入、そのまま二人まとめてフルボッコを始めた。
ジタンとクラウドには当てないコントロールは一体なんなのだろうか。野球選手も脱帽である。

「認めない、ボクは認めないよっ!」
「闇の力 ・・・・・・ 」
「あまり迷惑をかけるな。失礼する」

お茶会とブレイブの貯まる時間は比例しています。
一瞬でKOされ、ズルズルと引きずられていくカオスな二人とその保護者の姿。面々とコスモスは、慈愛を込めた笑顔で見つめていた。
もうくるな、と。

+END

++++
]しかプレイしてなかったころ

修正16.7.26

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