*残酷で優しい世界
※死ネタ
いつも見ていた。
嫉妬していた。
ボクと同じなようで同じじゃない義弟。
混沌と秩序
魔法と剣
人嫌いとお人好し
ボクは弱く、君は強い。
いくら虚勢をはったって、鍍金なんてすぐに剥がれてしまう。惨めな劣等感だけが、ずっと張り付いていた。
「クジャ。ホラ」
「断るよ」
「意地はることないだろ」
戦った。負けた。
そう、ボクらは敵同士。なのに彼はボクに笑顔で手を伸ばす。なんの躊躇いもなく、敵にすら優しくできる。
「目障りだ」
「そう言うなよ」
「君なんて嫌いだ。大っ嫌いだ!」
「うん」
呆気ない返答に虚をつかれた。ジタンは見下しているわけでもなく、ただ静かにクジャを見ていた。それがまたプライドを傷付けているのは知っているのだろうか。我に返って睨み付けるが、視線は優しいままだ。
「ボクをバカにして見下してるのかい!?」
ジタンは何も言わない。
「弱いとか思ってるんだろう?情けないとか思ってるんだろう?だから助けて優越感に浸ろうとしてるんだ」
ただ静かにクジャだけを見つめている。
「図星だろう?だから黙ってるんだろう。ならいっそ嘲笑ってくれたほうがいいよ。本気で殺せるからね!」
「満足か?それで全部か?」
吐き出し呼吸を整える間もなく抱き締められた。抵抗も忘れ、驚愕していると背を撫でる優しい手。
「吐き出して満足したか?オレが嫌いか?なら満足するまで聞いてやる。」
自分より小さいのに、大きく感じる。暖かい体温を感じて涙腺が緩んだ。
「君なんて嫌いだ。大っ嫌いだ」
「あぁ」
「皆嫌い。ボクを見下す奴、皆」
「あぁ」
「ボクにはボクだけいればいい」
「あぁ」
「ボク、を一人にしないで・・・・・・」
「わかってるさ」
涙を拭われ、目尻を優しくキスが落ちる。同情ではない、慰められているのはわかっている。
ジタンはそういう男だ。普通に人を助ける、ということをやってのける男だ。クジャには出来ないことを、平然と。
もう時間がない。
「オレはお前の味方だから」
どうせ最期なら。
「傍にいてやる」
せめて安らかに。
「クジャ、好きだぜ。だから」
オヤスミナサイ
「ゆっくり休めよ」
+END
++++
DFFの最終対決考えたけど、本編でもよかった
09.5.9
修正16.7.17
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[mokuji]
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