余計な親切大きなお世話
※13800hitキリ番
かほご【過保護】
必要以上に気を配り、めんどうをみすぎること
開いた辞書を呆れながら眺めては、静かに閉じる。
意味をしりたいわけではない。意味を知らないわけではない。
ただの確認、というかなんというか。
「マキナ、」
「エース…。」
本を閉じた瞬間、見計らったかのようにエースが現れた。首に抱きついてきたかと思えば、愛おしそうに頭を撫で始めるが、今に始まったことじゃあない。
突っ込む気も引き剥がす気も起きずにいたが、さすがに奇異の目には耐えられない。咳払いと引き剥がす手にやっとおとなしく離れた。
「昼はもう食べたか?」
「食べた。」
「なら、演習にいかないか?マザーから呼び出されたんだ。」
積んである本は、いつの間にかエースの腕の中。少しムッとすれば笑顔で頭を撫でられ誤魔化されてしまった。
「いいけど、今日は自由にさせてくれよ。」
「いつも自由じゃないか。」
「やたらとお前が前に出てくるだろ…普通、俺がお前を守らなきゃいけないのにさ。」
「普通?おかしな事を言うね。」
きょとんとするエースに言い返すことは何もない。自覚していない相手には何を言っても無駄である。
(俺より、弱そうな癖に)
「じゃあいかなきゃ。サイスが待ってる。」
改めて辞書を見てまでして確認したかった事はこれだ。
最近、いやエースとつき合い始めてからの彼が酷い。悪い意味ではないのだが、いい意味でもない。
「マキナ、危ない!」
突然のコロッサスのミサイルは、体に当たる前にバリアと共に消えた。
特に戦いが酷い。前衛と後衛を履き違えだような行動をとるし、いつも魔力を使い果たす。怪我をしない、ましては死なないことはいいことだ。だが今まで二組にいたのにここまで尽くされてしまうと自信を無くしてしまう。
「エース、自分の身くらい自分で守る!」
「ガタガタ言ってる暇があったら戦え!後ろを振り返るな!」
兵士の絶叫に負けない声でサイスが叫ぶ。同時に目の前から迫る覇気をなんとか受け止める。
「だから放っておけないんだよっ」
的確な氷のライフルが、兵士を氷の塊へと変えカードが切り刻む。完璧なまでに処理された死体に怯んでいると、マントを強く引かれた。
「子供じゃないんだ。集中しろ。」
「子供扱いしてるのはお前だろ!」
助けてくれたことも、あのままじゃどうなっていたかもわかっている。しかし男としてのプライドがおとなしく礼をすることを拒絶する。
「もういい!俺は東を制圧してくる!」
「待て。危ないだろ!」
「俺だってもう零組の一員なんだ、実力を見せてやる!」
一方的な感情でわめき散らす様が子供なんだ、だが今言おうものならまた臍を曲げられる。変わりに苦い顔で返事をしたが、それも気に食わなかったらしい。露骨に嫌な顔をして走っていってしまった。
「おい、どうするんだ。」
「マズい…作戦に支障がでるぞ。」
「そういうことじゃねえよ。…しかたない、私が行ってやるから任務遂行してろ。」
男らしく鎌を振るうサイスに、すまない、と照れくさそうに謝罪する。
残りは少数、油断しなければ問題はないだろう。
(エースのバカやろう…)
シンと静まる大通りを、マキナは拗ねながら進んでいく。
(そりゃあ、みんなほどは強くないけどさ……これでも前線で戦ってきたんだぞ……)
石を蹴り飛ばす。カツンと軽い音がして、石が飛び上がる。そして急速に落下を始め、
ガンッ
小石にしては重い音。目の前のウォールがなければ今頃頭蓋骨に風穴が開いていたであろう。
「だからぼーっとするなって言ってるんだよ。」
一直線に飛んだ魔法はスナイパーの頭に直撃した。何か数えている、ということはここにくるまでにまだいたらしい。
「あ、あり…がとう……」
「戦中に気を散らすとは、戦争をなめてんのかよ。死ぬのは勝手だけど、マザーの命令に支障をきたすのは私が許さない。」
「…なんだよ、俺だって今までちゃんと…」
「過去なんか知ったこっちゃない。今までちゃんとやってようが、今くだらないことでポカやって死んだら、無功績な無能と同じだ。」
「ご、ごめん…」
いつもながらサイスの迫力は凄い。ずけずけと文句を言われては、反論も出来ない。
考える時間をくれるかのようなタイミングで、サイスのCOMMが鳴り響く。
『こちらエース。こっちは片付いた。』
「任務完了、だな。」
電源を優しく切ると、マキナをゆっくり振り返る。未だ俯く彼に盛大なため息をつき、歩き出す。
「気になるなら、くだらない意地をはるな。くだらないことで喧嘩するな。」
「だってエースが…」
「エースも、好きで守ってんじゃねえよ。ただその方が"自分"の士気が上がるからやってるんだ。」
「え?」
「あとは自分で答えを探せ。…ハッ、バカップルの面倒なんざ見きれないね。」
「サイス、」
「礼をいう前に早く仲直りしてほしいね……エース、無事か!」
サイスの視線を追えば、前から歩いてくるのは赤いマント。くすんだ色ではないため、返り血ではないらしい。エースの無事に、無意識ながらホッとしている自分がいた。
「エース、」
「マキナ、無事か!?よかった!」
顔を見るや否、ぎこちない動きで走り寄ってくるエースを難なく受け止める。
「心配したんだぞ!怪我してないかって、サイスに虐められてはないかって…」
「オイ。怪我してるクセによく言うよ…」
「怪我?」
歩き方がおかしいのは気のせいではなかった。捻ったのか青く腫れ、歩けたことすら奇跡に思える。
「い、痛くないのか…っ」
「ケアルはしたから大丈夫。もう任務も終わったしね。」
清々しく言われたら言い返す言葉もない。
しかし何故だろう、サイスの視線が突き刺さる。
「…仕方ない。エース。」
「?」
「おぶってやるから。」
目をぱちくりさせるエースが、いつもより幼く見えた。すぐに満面な笑みになると、背中に命の重みを感じた。
「ありがとう。」
「特別、そう今日だけ特別だからな!」
「それでも嬉しいよ。」
首筋で感じる息づかい。くすぐったくもあり恥ずかしくもある、エースの吐息。
「
やっぱり、マキナがいないとダメみたい。」
いきなり耳元で囁かれた言葉は、エースを落っことすには十分だった。
+END
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こんにちはこんばんは、キリ番13800hitおめでとうございます!
遅くなりましたが、ゆき様のリクエスト『Aマキ:甘い(ひたすらAがマキナを甘やかす)』という砂糖を吐きそうになりそうな予感がしなくもないネタなのですが…何故仲違いしたのでしょう。謎だ。
コンセプトとしては『戦闘で、マキナを全力でフォローするエース』でやってましたが、どうやらマキナのプライドが耐えられなかったようです
プライド>>>>>>>砂糖展開
では、お持ち帰りや書き直し依頼はゆき様のみとなっておりますので
失礼しましたっ
12.5.28
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[mokuji]
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