機械の恋
※ネタバレ
周囲は無機質な、機械の世界。
人々の心も凍てつき、荒廃しきる世界。朱雀とは正反対な、白の世界。
「おい小僧。」
ゆっくりと振り返れば、男が一人。不機嫌な顔をして立っていた。
「なんだいきなり。」
「お前、朱雀の小僧だろ。」
朱雀、ああそんな所にいた気もする。
ただ記憶を遡ろうにもノイズが聞こえる。壊れ始めたテレビに、砂嵐が走るように。
「どういう心境の変化だ。」
「お前には関係ない。」
「いいや、ある。」
自信満々に何を答えると思えば。
距離を詰められた矢先、仮面に伸びる腕。抵抗する必要もないし、ここまで知られていては今更隠すこともない。
露わになった白い世界は、色ずくこともなく色褪せることもなく広がっていた。
「名前は…」
「白虎の乙型ルシ」
「そういうことではない。そんなものに意味はないだろう。お前の名だ。」
「それこそ、意味ないものだ。」
名前も、地位も、名誉も。
力ですら最早意味ないモノ。
「お前にはなくとも、俺にはある。」
頬を撫でる骨張った手は、一体いくつの命を刈り取ったのだろうか。
彼がその気になれば、子供の細い首など一捻り。ここからは血の匂いしかしない。
「名前は?」
「マキナ。」
「お前は今日から俺の傍にいろ。」
何がなんだかわからない。が、クリスタルは無言の肯定。ならば逆らう理由もないであろう。
ならば、この手を振り払わないのもクリスタル意思?
この感情も、なんの意味も持たない。
++++
何週間放置してたのか、最早わからない
11.5.14
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