*喪失
※『エースの悔恨』『マキナの苦悩』の続編
※エンディング
開いていた穴が、さらに大きくなった。
「マキナ、もう行こう?」
彼らは若い命を散らせた。朱雀という小国の為に。魔神と呼ばれた畏怖畏敬の視線を一身に浴び、戦うことしか知らず、そしてそれしか知らぬまま逝った。
彼らは死ぬために産まれてきたのかもしれない。壊れた人形の積み上がる瓦礫の傍で、泣いた。だがすぐに涙は枯れてしまった。また忘れてしまうような気がして、怖くなったから。彼の面影を失うことに寒さを感じ、涙すら凍ってしまった。
今思えば、"彼"は優しすぎた。
冷静ななれば、何故一般兵の名前を何故覚えていた?資料は見てなかったのではないのか?覚えていないはずじゃないのか?
はっきり覚えていないことを話して、混乱することを避けてくれたのか、彼はそれ以上口を開かなかった。
仲違いしても裏切っても、彼は兄の軌跡をたどり続けるのを見た。だがもう話しかける気にはなれなかった。
どうして聞き返さなかったのだろう。冷静になれなかったのだろう。
生を感じさせない白は冷たい。
「エース、俺は忘れないよ。」
あの日、問いていればよかったと思う。彼ならきっと答えてくれた。
『死ぬのが怖いなら、死なせない。』
未だこの気持ちを恋だと知らない。
++++
エンディング時の死亡回数:77回
11.12.13
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