おままごと
※後天的ショタマキナ
チョコチョコとついてくるのは、ここには似つかわしい小さな体。たまに転びそうなのか悲鳴が上がる。
「え、あ……」
止めてくれ。そんなすがるような声を上げるのは止めてくれ。それに愛らしい表情を振りまくのも止めてくれ。あまりに不安なのだろう、エースにぴったりくっついている少年は今にも泣き出しそうである。
「君、どこかで見た気が…」
青い髪といい、跳ねた髪といい、碧の瞳といい。
「もしかして、マキナの……」
いやまさか、子供なわけはない。真面目な彼が女子に手を出せると思わないし、もし子供がいたとしてもこんなに大きいはずがない。
ならば弟、かと思ったがそんな話は聞いたことがない。
「マキナ?」
「知ってるのか?」
「なんでおれのなまえ、しってるの?」
まさか、まさかこんな答えが返ってくるとは思いもしなかった。
理由はなんとなくわかる。マキナは「カズサに呼ばれた」といい姿を消したっきりだったのだ、十中八九彼が原因だ。
ならばどうやったら治るのか。今カズサに近付けたら危険だろう。だが一人にしておくもの気が引ける。
ぶかぶかの服を引きずっている彼は、目に毒だ。肌は見えるわ袖は余るわ、上着一枚のワンピース状態。目はまん丸で頬も健康的で丸く、ショタコンがいればお持ち帰りされてしまうであろう。
「えーっと…ボクはどこに行きたかったんだ?」
「ボクじゃない、マキナだ!」
「マキナ。行きたいところはあるのか?」
目線をあわせて問えば、下がる眉。どうもこうも、行き先もなく途方に暮れていたのだろう。潤む瞳にギョッとした。
「お腹はすいているか?」
首は横に。
「喉は渇かないか?」
まだ首は横に。
「じゃ、どこか遊びにいこっか。」
優しく手を伸ばせば、胸へと飛び込んできた。甘えたい年頃なのだろう、しがみついて離れない。
(マキナも、このくらい素直なら可愛いのに)
意地っ張りな彼には何を言っても無駄だろうが、願っても罰は当たらないだろう。
「おにいちゃんのうで、あんしんするよ……」
「そうか。」
「で、どこにつれていってくれるんだ?」
キラキラと期待に輝く瞳は、子供そのもの。さてどうしようか。今から部屋に帰る気満々だったのだが、こうなっては帰れまい。同じ理由でクリスタリウムも却下であるし、人目につくのはいただけない。
ならばいつもの場所へ行こう。
「じゃあチョコボと遊びに行こうか。」
「うんっ!」
素直に頷く子供を見て、荒んでいた心にも潤いが戻った気がした。
マキナはチョコボに任せ、とりあえずは当初の目的、読書である。最初は楽しそうにチョコボと戯れている声が聞こえたのだが、徐々に声が小さくなる。いつの間にかチョコボの鳴き声しか聞こえなくなるし、一体どうしたものだろうか。
「ねえ、…ねえ、エースおにいちゃん………」
本が取り払われ、現れたのは丸い顔。頬が膨らんでいることにより、更に丸々としていて可愛い…ではなく。
「いっしょにあそんでよ…」
すっかり拗ねてしまい、頬を膨らましてしまったから大変。これはどうやって機嫌を取ろうか、しかし子供など接したことがないからどうしていいのかわからない。そう迷っている間にも鼻をすすり始めた。
マズい。
早くなんとかしないともっと面倒になってしまう。
「マキナ。」
「あそんで、くれる?」
「いいよ。何して遊ぼうか。」
「こうほせいごっこ!」
ごっこ、というか自分が候補生なんだけどな。だがそのような事を言っても理解してもらえまい。純粋な子供にも影響を与える戦争に憂いを覚えながら、頷くしかなかった。
「ありがとう、たのしかった!」
適当にチャンバラに付き合っただけだったのに、マキナは満足してくれたようだ。満面の笑みを見せてもらえたからよしとしようではないか。
「じゃあ、そろそろ戻ろうか。」
「オレ、いえがわからないよ……レムもみあたらないし………あと…あれ?」
そういえば、レムとは幼なじみだったな、と今頃思い出した。ならこの時期のマキナの扱いを知ってるのは彼女しかいない、事情を説明してレムに任せてしまうのが一番であろう。
「レムの知り合いのお姉ちゃんのところに連れて行ってやるからな。そこで泊めてもらえばいい。」
「おにいちゃんは?」
「僕は部屋に帰るよ。」
「やだっ!!いっしょにいたい!!」
何故こんなに懐かれてしまうのだろう。裾を握り意地でも離さないマキナの頑固さには毎度手を焼かされる。
「お姉ちゃんのほうがいいんじゃないか?」
「おにいちゃんがいいっ」
「後で嫌だって言っても聞かないぞ。」
「いわないもん!ずっといっしょにいたいもん!」
決意が固いならしょうがない。軽い体を抱き上げると、肩へ乗せてやる。子供なら喜ぶ肩車、というやつだ。
「たかいたかい!」
「暴れたら落ちるぞ。気をつけるんだ。」
「……あのね、おにいちゃん。」
「ん?」
えーっとね、うーんとね。
口ごもる彼の顔は見えないが、もじもじしていることだけは伝わる。布越しではあるが、下半身を意識してしまい、困る。
「ずっといっしょにいたいから………おおきくなったら、けっこんしよ!」
ちょっと待て。今彼は何を言った?
「マキナ。男同士は結婚出来ない。一緒にいるだけなら、他にも手はあるし。」
「でも、けっこんはトクベツってレムもいってたよ!!」
「特別、だけど…」
「オレ、エースおにいちゃんのことだいすきだよ?いいでしょ?」
純粋無垢とは、時に大きな間違いを犯すものだ。
とりあえず、ベッドに入るまで説得を続けてはみたが、一向に折れる気配はない。寧ろ、更に悪化した気がする。
「ようするに、けっこんっていうのはみんなに『このひとはオレのもの』ってみとめさせるぎしきのことだろ。」
「間違ってはないけど…」
「じゃあ、やっぱりけっこんしようよ!エースおにいちゃんはオレの!」
「だから……」
気疲れからか、異様に眠気が襲ってくる。だがこのまま曖昧にしておくのも、後々レムに怒られてしまう気がする。
「だったらマキナが…僕くらい大きくなっても覚えてたら結婚するよ。」
「ホント!?」
「ホント。」
「約束だからね!」
指切りげんまん、嘘ついたら針千本のーます!
記憶は、そこで途切れた。
目覚めは最悪だった。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
耳をつんざくような音と、鉄拳により痛覚を刺激する目覚ましなど買った覚えてはないのだが。しかし効果は上々。目がパッチリ覚めた。
「な、な、なんでこんなに近…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
「マキナ、わかった。離すから暴れないで鳩尾を殴らないで!!」
小さな体を抱き締めていたはずが、一晩でこんなに大きくなるとは。男児の成長とは凄まじいものだ。…ではなく。
「覚えてない、のか?」
「昨日カヅサに捕まって以来、何も覚えてないっ」
予想通りというかそれしかない、というか。
「裸だし!!」
「それは…ああもう説明は朝食と一緒に、な。」
自分の着替えをマキナに放り投げ、自らは別のものを羽織る。小さく聞こえた「ありがとう、お兄ちゃん」については後々問いただしてやろうではないか。
+END
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オンリーネタ用
一冊はショタ・にょた・獣化の三連趣味本にするよ!
11.3.31
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[mokuji]
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