えふえふ | ナノ



*エースの悔恨

※『マキナの苦悩』の別視点

「イザナ……クナギリ……」

――ああ、誰なのだろう
この愛おしい響きを含みながらも、胸が締め付けられる"モノ"は



いつも、足を運んでいた。
軍令部、教室…それよりアクアクリスタリウム、墓場、チョコボ農場………どこにも手かがりはなく、手がかりだらけ。

(ああ、ここに"彼"はいたのか)

クリスタルに感謝と呪詛を唱えながら、淡い記憶を辿る。浮かぶものは苦い"紅"の記憶ばかり。
絶叫
絶望
恐怖
畏怖
畏敬
憎悪
狂気
様々な感情が渦巻く"紅"しか知らない。

「チチリ……」

クエッと、答えるように鳴いたチョコボに思わず苦笑を漏らした。お前はチチリじゃないだろう?と諫めると心外だ、というように鳴いた。
そういえば、動物たちの記憶も失うのだろうか。
チョコボも兵のように駆り出されて死んでゆく。そんな勇敢なる被害者である、仲間のことは忘れてしまうのだろうか。思案に耽っていると、頭を小突くチョコボ。何を怒っているのかと思えば、人の足跡が聞こえた。

「エース。」

マキナ、と呼ばれた青年は笑う。その笑みはチョコボかエースか、どちらに向けられたかはわからない。だがその目は遠くを見ているようで、怖かった。

「どうしたんだ?作戦までは時間があるだろう?」

「魔法陣に乗るのが見えたからさ、追いかけてみたんだ。」

ふぅん?いかにも興味がないように振る舞ったが、正直嬉しかった。

「マキナは、兄がいたんだよな。」

「ん…ああ。覚えてはいないけどな。」

「そうか。」

マキナも自分と同じ道を歩いている。アクアクリスタリウム、墓地、チョコボ…兄の影を追う姿を見ていれば、名前を見ずとも"彼"がマキナの兄だとわかった。
狡いと思う。
染んで忘れられても尚、マキナの心に居座る"彼"を。しかしマキナとの架け橋になってくれる"彼"を。

「エースは…」

「ん?」

「…何でもない。」

「変な奴。」

どうして悲しい目をしているのだろう。至極安心させてやれるように微笑んでやれば、少し安心した顔が見れた。

++++
始め単にエースが鳥(肉)が好きなのかと思って親近感湧いた

11.12.13

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