*出会い
※獣化マキ+ナイ+ジャ
にゃーにゃーにゃー
どしゃ降りの雨の中、声がする。
一体どこからだろう。
雨にも構わず周りをきょろきょろ。鳴き声は段々大きくなってきた。そして、見つけた。ダンボールに入った子猫を。
「レム。どこから拾ってきたんだ?」
「朱雀像の前。可哀想だもの、拾ってきちゃった。」
腕の中でぶるぶる震えてる子猫(とは言っても幼児以上はある)を、レムは愛おしい手つきで温めている。青く跳ねた毛とは裏腹に、黒く尖った耳。首は赤いマントに守られており、下から垂れ下がった尾は水を吸ってボサボサである。
「汚いなぁ……お風呂にでも入れてきなって!」
「そうだね。…じゃあ一緒にナインとジャックも行こうか?」
「お風呂?行く行く〜っ」
お風呂、と聞き真っ先にきたのはジャック。逆に逃げ出したのはナイン。しかしあっという間にキングに捕らえられ、強制的に連行されていく。猛犬の慟哭が、徐々に小さくなった。
「レムと一緒なら入る〜!」
「お前は、俺とだ。」
レムに飛びつこうとした大型犬(大きさとしては人と同じである)ジャックは、エイトに捕まり引きずられていく。哀れ、ジャックはレムにも触れられずに浴室へと消えていった。
「…なら二人で入ろっか。」
その言葉に、子猫の毛が逆立った。小さいとはいえオスネコ、女性と風呂へ行くわけにはいかなりらしい。
レムの介抱により回復した体温で腕の中から飛び出すと、周囲をキョロキョロ。周りはこのネコの行く末を見守っていたが、それが逆効果となり緊張とストレスとなってしまった。一人だけ、視線をこっちに向けない人がいる。頼みの綱だ、と慌てて彼に飛びついた。
「……ん、」
見ていなかった、いや意識がなかったのだ。むくりと頭を上げ、ネコを見つめ首を傾げている。
「……このネコはどこから入ってきたんだ?」
「私が拾ってきたの。」
「濡れてるじゃないか。お風呂に入れないと。」
にゃーにゃーと鳴くネコを抱え上げると、風呂場ほと直行。本当に寝ていたのかは知らないが、理解してくれているのは助かる。子猫も、安堵のため息を吐き出した。
「お帰り。暴れなかった?」
「うまく温度を調節してやったら寝ちゃった。」
それよりも、と後ろを振り返れば満身創痍なキングと、のぼせたジャックを献身的に介抱するエイトと…ナインの姿が。問題はイヌたちにあった。
「でもこの子、どこから来たんだろうね。」
「首輪はあるけど、住所は書いてなかったよ。それに人間に対して警戒してる。」
今はすやすやと眠る彼の過去に、何があったのだろう。
「あとは、…まあいいや。」
もう一度ネコを抱え直せば、小さくぷきゅう、という鳴き声と笑みがもれた。
++++
×続く
○続いてしまった
12.3.31
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