えふえふ | ナノ



女王様の逆転劇

※10000hit企画

テンションの高いバカ騒ぎ、いつもより散らかった室内。それに、仄かに匂うアルコールとジュースの混ざった甘い香り。
普段どれだけ大きく振る舞っていても、やはり子供。大規模な戦争が終われば候補生たちも子供のようにはしゃぎ回りたくなる、それはわかる。
だが、まさか普段大人のような者までもがこのように変貌しようとは。

「エース、なあエース。」

機嫌はいいのは何より。だが
必要以上の接触はなんであろうか。酔っぱらってるのか、悪戯なのかは知らない。だがエースの膝を独占しては、離れようともしない事だけは事実。

「酔ってるのか?」

「酔ってない酔ってない〜」

「酔っ払いはみんなそういうんだ。」

「じゃあエースに酔ってる〜♪」

普段見せない顔に溜め息をつきながら、しかし幼い表情に興味は尽きない。大手を広げエースに迫る姿も、いつも以上に子供のように豊かな表情にも過保護欲を掻き立てられる。
だが、何故ここへきたのだろう。彼――ナギとはそこまで親しいわけでもなければ、組も違う。作戦を共にすることもあるが、自分一人とよく接点があるわけでもない。
しかし頼られるのは悪い気はしない。ならば拒絶する意味合いもないのだ、が。

「エース、ちょっとエース…」

珍しく焦ったケイトの声と共に、感じる敵意。嫌な予感がする。恐る恐る振り返れば、そこには見慣れた碧があった。

「え、あ、マキナ?」

細められ獲物を狙う猛禽類を彷彿とさせられる目。完全に据わっている上、どこを向いているのか定かではない視線が怖い。もしかしてこっちを見ているフリをして、その先にいる誰かを見ているのかもしれない、いやそう信じたい。だが視線を追った先には壁しかなかった。
マキナがついに動きを見せた。ふらつきながらも立ち上がると、一歩一歩正確にこちらへと進んでくる。相変わらず目は、怖い。

「エース。」

「な、なんだ?」

いつもより低い声が怖い。これは確実に憤慨している。そりゃあ公表出来ることではないが、付き合っているのだ。他の男といえどもベタベタしていては腹がたつのも無理はない。

「立て。」

「は?」

「いいから立て。」

引っ付くナギを無理矢理引き剥がし、ケイトへと押し付ける、という動きからはかなりの強引さを感じた。というか怖い、かなり怖い。

「立てって言ってるだろ。早くしろ。」

「は、はいっ」

思わず敬語になってしまったが、こんな状況に置かれては仕方ないと思ってほしい。今にも抜刀しそうなほどにいきり立っているのだ、逆らえばバハムートの逆鱗に触れるようなものだ。
立ち上がると、腕を引きちぎらんばかりの力で先程のマキナのテリトリーへと引き込まれたのだが…成る程。転がる酒瓶とアルコールの匂いが桁違い。顔色には出ていないが、完全に潰れているようだ。
それでもなお、酒を手にする彼には畏怖の念を抱かずにはおれない。

「口開けろ。飲め。」

「マキナ、そろそろ止めたほうが…」

「俺の酒が飲めないのかよ、あぁ?」

これはなんという恐喝なんだ、とつっこもうとしたら、逆に口へと瓶が突っ込まれてしまった。この程度で酔いはしない、酔いはしないが無理矢理流し込まれては吐き気しかしない。だがマキナはそれでも飽きたらず、もう一本構え待機してた。彼は鬼か。

「マ、マキナっ!ちょっと落ち着―――」

いてくれ、は酒と共に喉の奥。重ねられた唇からも酒の味しかしない。
マキナが何を考えてたいるのかはわからない。だが、とりあえずろくでもない考えなのはわかった。例えば、人に酒を飲ませておいて、口移しで奪う、とか。

「もう一本だ。飲め。」

こうなれば逆らう気力も起きない。数分前と同じように口移しで酒を味わうハメとなり、味なんて最早覚えてもいない。覚えているとすれば、マキナの妙な柔らかい唇のみだ。

「うまかったか?」

「あ、ああ。」

「ならば服を脱げ。」

一体何がしたいんだ。今日のマキナがわからない。酔っ払いのクセに強い腕力に押し倒され、マントが奪われた。どこにこんな力があるのか、そして何が目的なのか聞いても返ってこないだろう。
だが聞かずにはおれないのは人間の性だ。

「マ、マキナっ、どうしたんだ?」

「黙って脱げ。」

「マキナ!!」

やっと手が止まった。が、未だに視線が怖い。

「エースは、」

「ん?」

「積極的なのが好きなんだろ。」

「え?」

据わった目は相変わらず。だが少々伏せ目がちになったことに少なからずドキリとしてしまう。

「正直に答えろよ。」

「別にそんなわけじゃないさ。」

「ナギとベタベタしながらヘラヘラしてたろ。」

「してないって。」

「してた。」

「してない。」

「口答えすんな!!」

さっきまで汐らしかったというのに、いきなり拳の一撃が舞い降りた。理不尽な。

「どうせ俺は奥手だよ……」

「今、十分すぎるほど積極的だって……」

「じゃあ、好きか?」

「マキナ、落ち着けよ…」

「ナギと俺、どっちが好きだ?」

はぁ、とわざとらしいため息が漏れる。そんなこと、聞かなくてもわかっているだろうに。可愛いところもあるものだ。

「そんなの、マキナに決まってるだろ。」

嫌いなら誰が付き合うものか。それだけでマキナを安心させるには十分だった。

「なら、今日は寝かさないから―――……」

のしかかるように睡魔に負けたマキナの体を受け止めるのはさほど苦ではなかった。「寝かさない」といった本人が寝るとは面白い冗談だが、今はそっとしてあげるべきである。
「やれやれ、夜には起こしてやるか。」

嫉妬深い女王様の思いは、体より重いようだ。

+END

++++
10000HITありがとうございます!
企画でのりあん様のリクエスト『エーマキで酔っ払ったマキナに翻弄されるエース』でしたが…
か、絡み酒……っ
マキナが変な酒乱に……っ!声のテンションとしては、最終章あたりでお願いします。
多分甘えるマキナを想像しているかな、と思いちょっと変化球を投げてみました。お気に召しませんでしたら、書き直しますので。すみません。

いつも楽しんでいただいているとは…光栄です(´∀`)こんなサイトでよろしければ、今後ともよろしくお願いします!
では、楽しいネタをありがとうございました!

12.3.21

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