ウチの忠犬、知りませんか?
※10000hit感謝
※獣化注意
「お手。」
「ワン。」
「おかわり。」
「ワン。」
「伏せ。」
「ねえ、いつまでこれすんの〜?」
「いつまでも!だってジャック、可愛いじゃん!」
フサフサな尾に、三角の耳。元気なく垂れてはいるが、可愛らしいことには変わりはない。
ジャック、とは犬の名前ではない。零組メンバーの一人の名前である。
でも今ジャック、と呼ばれたのは人とはかけ離れた姿をした獣人。だがこれは、変わったものがついているだけであっての同一人物なのだ、間違えないでもらいたい。
「カズサ…お前、何をした…」
「いやあ、今遺伝子にハマっててさ。彼に協力してもらったらこの通り。」
「それは失敗してるというんだ。」
酷いなぁ、クラサメは。なんて、子供のような喧嘩が聞こえてはくるが零組の視線は、忠犬ジャックに釘付け。微塵の興味もわかないのも無理はない。
楽しそうに揺れる尻尾に、キラキラ光る目。鼻をせわしなく動かす姿など、可愛いの一言では終わらないであろう。
言うなれば、そう、愛らしい。
「ジャック。」
「…エース。どう反応すればいいの?」
「そうか、犬はこれで遊ばないのか。」
そんな子供のように興味が尽きない子犬の前に現れたのは猫じゃらし。
表情は崩れないが、チョコボ好きたちは動物を前にして嬉しいのかもしれない。彼の後ろでもマキナがそわそわしている。
「違いますよ。犬にはコレです!」
意気揚々に名乗り上げたのはトレイだった。軽々と膝の上へと持ち上げ跳ねた頭を撫で回すと、気持ちよさそうに脱力するジャック体。ずれ落ちる際に、トレイの首へとすがりつくのも忘れない。どう見ても抱き合っているようにしか見えない光景に、羨ましい、という呟きが聞こえたのは気のせいではないだろう。
「やはりこれが有効ですね。」
「トレイ!ズルいぞコラァ!」
「もしかしてナイン、寂しかった〜?」
「そ、そんなことあるかオイ!!」
ズルいなんて、人形じゃないんだから。そのような女性陣の冷静な言葉などナインには聞こえまい。感情のままに飛びついて押し倒し、犬のように頬を舐めるジャックに照れくさくなり押し返そうとする。そんなナインに、ジャックが楽しそうに笑う、無限ループ。
「む〜。そんなに嫌がらなくてもいいじゃん……」
「う、うるせえ!!」
「遊ぼうよ〜。」
しょぼくれる犬に、言葉が詰まるし周囲からの視線が痛い。それも羨望と、嫉妬の二種類の視線が。
「い、行くぞコラァ!」
「どこに?」
「散歩だ散歩!!」
視線から逃げ出せば、尾を振りながらも付いて来るジャック。それはもう嬉しそうに嬉しそうに。元は人間と言えども、やはり犬。散歩は最高の娯楽なのだろう。
「ナイン!抜け駆けは許しませんよ!?」
「そうだ。ちゃんと首輪をつけなければ、変質者に誘拐されてしまう。」
「今、誘拐されてる気もするがな。」
それとも、他に理由があるのかは定かではない。
さてさて、逃げるように飛び出したのはいいが、行けども行けども注目の的になるのは言うまでもない。ジャックが元より人懐っこい性格なのもあり自然と人が集まってしまい、かき分けようにも進めない状況に陥ってしまった。
「困ったなぁ〜。」
可愛い可愛い、と黄色い声を上げる女子生徒に頭を撫でくり回されながら一人ごちる。ナインの声らしきものは聞こえるが、姿は見えず。合流は到底不可能である。
たまにおやつをくれるのは嬉しい、だがひっきりなしに撫でくりまわされては髪も服も乱れてしまい、すごく困る。だが逃げ出す道もない。これは一体どうしたものか、と思えば耳がピクリと動いた。
「あれ、ジャックじゃん!可愛い耳や尻尾つけちゃって…仮装大会?」
「ナギ〜!!助かったよ〜!」
見知った顔に、思わず安心してしまい飛びつけば、またナギも尻餅をついてしまう。頬を舐めればくすぐったそうに笑うナギにまた安心し、強く抱きついた。
なんだ、飼い主の登場か、と周囲の野次馬達は散り散り。やっと息をつく暇を与えられ、感謝もしきれない。
「今日のジャックは一段と可愛いなぁ〜。」
「男が可愛いなんて言われてもね〜。」
「可愛いんだからしょうがないだろ。愛らしい、がいいか?」
「もうなんでもいいよぉ…。」
「はは、可愛いなぁ〜。」
どさくさに紛れて触れる唇。抗議の声を上げるより先に、高い金属音が鳴った。
「ナギ……ウチの犬に、余計なことをしないて貰おうか。」
「あっちゃー。本当の飼い主のご登場か。」
表情は相変わらずだが、オーラは不機嫌そのもの。魔導院内でありながら臨戦態勢なのは飼い主ことキング、その人である。銃口から立ち上る煙硝反応を見れば、感情に任せて一発ぶちかましたらしい。全く気づかなかった。
「そ、そうだぞナギ!テメェはどさくさに紛れてキスなんて…俺もまだだぞコラァ!!」
「ナインはどうでもいいけど…ジャック、もしかしてファーストキス?」
「うーん…まぁ……」
今更状況を理解し、顔を赤らめるジャックに、ナギは隠れてほくそ笑んだ。
「それは悪かった、な!」
チュッと大きな音が聞こえ、ナギが走りだす。ナインの叫び声と、キングの銃が再び火を吹いたのはその直後。
さてさて、その後なんとか人へと戻れたジャックではあったが、しばらく犬だった癖は直らなかった。
特に、匂いをかいで誰かを探す癖は。
+END
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10000HITキリ番、おめでとうございますモトヤさん!確かこちらが本命でしたよね?(笑)遅れましたが『J受け』となります。
勝手な獣化&総受けを狙いましたが…ちょっと詰め込みすぎてエイトとクラサメ隊長がハブられた………ナギがオチ持っていっちゃいましたし(笑)
こんなもので大変申し訳ないです…書き直しならいつでも受け付けておりますので!!
12.3.21
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[mokuji]
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