えふえふ | ナノ



夢見心地

※8300hit別ver


(あれ、珍しい…)

ぽかぽか陽気、そよそよ春風。今日は絶好の昼寝日和。
眠くなる気持ちはわかる、実際エースも昼寝するためにここまで足を運んだのだから。
しかし、特等席には先客がいた。見慣れた青が左右に跳ねた髪。通りで姿を見ないと思っていた。でもしかたがない、マキナはここで眠っていたのだから。

「しょうがないなぁ…」

天気がいいとは言えども、屋外である。いつ風邪を引いてもおかしくはない。
教室まで運ぶ?
きっと寝苦しくなり、目が覚めてしまうだろう。
部屋まで運ぶ?
抱き上げた瞬間に目を覚ましてしまうかもしれない。ましてや恥ずかしがり屋なマキナのことだ、目が覚めたら二三発は殴られる覚悟は必須。酷い時は二三日口をきいてもらえなくなるだろう。
ならば選択肢はただ一つ。部屋に戻り毛布を取ってくればいいのだが。

(綺麗な顔してる)

マキナの寝顔から目が離せなくなってしまった。
いつもよく寝ているのはエースの方であるし、マキナは早起きで目が覚めたら先に起きている。寝顔なんてめったに拝めるものではないのだ。
長い睫に、険が抜けた幼さすら感じる表情。寝息をたてる唇は小さく開けられ、誘っているようにも見える。
頬を手の甲で優しく撫でると、小さく身じろぎする様は猫を彷彿とさせられた。
いたずら心が湧いた。
まずは首筋に顔を埋め、大きく息を吸い込む。マキナの匂いがする、肺の中が酸素よりもいいものに満たされた気がした。
次に、ベンチが邪魔である。見た目より軽い体を易々と抱き上げると、近くの木まで運ぶ。

汚れないようにとゴザをかいて抱き込み、眠る姫を腕へと閉じ込める。

(いい匂い、だな)

眠る彼は、なにがあろうと起きる気配はない。
他の0組と違い、気配に疎い彼に触れていると、遠くにあるはずの平和が近いものに思える。だから彼に引かれたのだろう。
首筋に頭を埋めながら、マキナを近くに感じながら、頼りのない体と頭を抱き込む。
このまま共に寝てしまおうか。微睡みの中へ飲み込まれそうになった時、手に暖かいものが触れた。
赤く誘うような舌が、チロチロと顔を出す。甘えるように指を這う仕草は正に動物。思わず喉を撫でてやりたくなった。

(寝ぼけてるん…だよな?)

試しに唇を指で押してやる。返事の代わりに唾液が絡む。反射なのかなんなのかはわからないが、これは明らかに寝ぼけている。
マキナが起きているとして、こんなに積極的になるはずがない。合理的な消去法である。
いたずら心が更に刺激された。
向かい合う形に抱え直すと、まずは寝顔の確認。安らかに寝ている。次に顔を近づけてみる。また、舌が伸びて鼻の頭に触れた。長い睫は、降りたままだ。
次に、唇を近づけてみる。戸惑いがちに現れた舌が赤をなぞった。

(色っぽい…)

口寂しいのかもしれない。
少し近くによると、もの寂しいのだろう。更に近付き接触を望んでくる。

(マキナが無防備なのがいけないんだ)

誰に弁解をするわけでもなく、優しく唇をつぐみ、徐々に深く口づける。
初めは先程のようにおずおずと舌を差し出していたのだが、あまりの積極的な行為に驚き舌を引っ込めた。だがそのくらいで引くようなエースではない。

更に深く、深く繋がろうと頭を抱き込み、無我夢中で口内を蹂躙する。

「んー!!」

完全に目を覚ましたマキナが、肩を叩いて抵抗するまでエースは拘束の手を緩めなかった。

「な、何するんだよ!」

「何って…先に誘ってきたのはマキナだろ?」

「誘うってなんのことだよ!!」

「可愛く舌を絡めてきてさ。マキナは本当に色っぽいなぁ……」

「な、な、なーっ!」

全く身に覚えがない、と吠える姫がまた愛おしい。はいはい、と適当にいなしてやれば、必死な弁解が聞こえてくる。

「こんなところで寝てたら風邪をひく。」

「お前っ!謝罪に誠意がこもってないぞ!」
「だって誘ってきたのはマキナだろ?」

飄々と言ってのけるエースに、顔が益々朱に染まる。記憶がないとはいえ、自分は何をしているんだ、と言いたいのだろう。
きっとエースに聞いたところでまともな答えが返ってこないのもわかっているだろう。

「ところでさ、マキナ。」

そんな彼にいたずら心がわいた。
こんな嘘はいかがであろう?

「何か寝言言ってたけど…」

それはそれは、面白いほど顔が赤く染まった。自覚があったのか誰かに指摘されたのかは知らない。だがこの反応が意味するものは、きっと。

「僕の名前…が聞こえたような……」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!気のせい、気のせいだって!」

やはり自覚ありらしい。クスクス笑って嘘だ、と伝えてやれば頬をひっぱたかれた。素直じゃないな、と思う。

「やっぱりマキナは可愛いなぁ。」

「だ、騙しやがって!次バカなこと言ったらぶん殴るからな!」

拗ねる姫様を抱き込み、機嫌を直すのも王子の勤め。
さて、この気まぐれな姫様はどうしたら満足するだろう?

+END

++++
8300HITのマキナver
夢ネタ結構使えるな…!

12.2.23

[ 660/792 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -