えふえふ | ナノ



夢心地

※8300hitキリ番


雲一つない晴天。及び太陽が照り続け、最も気温が高くなった頃。

「エーす……」

また、この眠り姫、もとい王子はすやすやと幸せそうな寝息を立てていた。

ベンチは、エースの定位置になりつつある。裏庭にくるクラスメイトたちは、大体立ったまま談笑するだけであるし、たまに読書の為に使うトレイとクイーンも、この時間帯になれば眩しくて近付かない。クリスタリウムで読書をするのが楽でいい、と今やエースのベッドとして存在しているだけとなった。
だからこそ、約束をしない待ち合わせにはもってこいなのだが…そんな時は十中八九夢の世界に旅立つ彼の顔を拝めるだけ。

(やれやれ、待つか)

演習のお誘い、とかこつけて会いに来ただけである。急ぐわけでもないし、たたき起こすなんて真似をするまでもない。こんな日常になれてしまった自分にため息をつきつつも、幸せな気分に浸ってしまう。

さて、待つ間はどうしようか。
とりあえず風邪を引かないようにマントをかけてやり……ちょっとした悪戯心が湧いた。
いつも、やられてばかりの仕返しだ。眠る彼の前に座り込むと、頬へと手を伸ばした。
柔らかい。少し堅いが、気持ちいい柔らかさだ。おまけに光を浴びて、いつもより白く見える肌に、嫉妬心が湧き上がる。別に気にしているわけではない、が彼に負けることが悔しい。少し身じろぎしたかと思えば、うなり声が聞こえた。
次に髪。短いがサラサラしてて気持ちがいい。戦続きで荒れてはいるが、惚れた弱みか。心地よく思えてしまう。身じろぎしたと思えば、顔が少し上を向いた。

(起きない、か)

これだけベタベタ触っても起きないのなら、心配いらないであろう。
ベンチへとのり上がり、エースの体を跨ぐ体制となる。流石に狭いベンチだと、この体制はキツい。今誰かに見られたら、誤解を生むだろう。
しかし大丈夫。エースとマキナの関係は0組では公認となっているし、今裏庭に来る者はいないだろう。皆空気を読める者ばかりだ。
とりあえず続きである。
髪、睫、鼻と視線を移していけば自然と唇で止まる。

(寝てる、よな?)

思わず左右確認をし、再び唇に注目する自分に自然と顔が赤くなるのがわかる。いつも触れているとはいえ、こう改めて意識をすれば恥ずかしいものだ。

(でも、やられてるだけじゃ癪だからな!)

いつもの仕返しなんだ、そう自分に言い聞かせて顔を近付けていく。後もう少しで重なる、しかし勇気が出ない。主導権を握る千載一遇のチャンス、勢いに任せて唇を重ねたのはいいが、いきなり舌が絡みついてきた。
寝ている、と思っていたのに動くものだからびっくりするのは当たり前だ。
咄嗟に距離を置こうと肩を押せば、勢いのまま後ろへと下がる体。受け身をとろうと伸ばされた手を、逆の力で引くものがあった。

「エース!?っわっと!」

寝ているとは思えない力で引かれ、腕の中へと誘われる。エースの膝の上に乗せられた体勢となり、おまけに相手に気付かれたことも羞恥心をかき立てる。

「エース!!起きたのか?起きてたのか!?」

返事はない。

「今は起きてるんだろ?早く離せよ!」

恥ずかしい、恥ずかしすぎる。顔を見られる前に部屋へ逃げ込みたいのに、弱々しく見える手がそうはさせまいと拘束してくる。

「寝込みを襲って悪かったよ……だから、なぁ…」

返事は返ってこない。恐る恐る彼の寝顔を見下ろしてみるが…

「寝、てる?」

またもすやすやと穏やかな寝息をたているエースの綺麗な寝顔。
いやしかしマキナも油断はしない。また寝たふりではないだろうか、不意打ちをくらうのではないだろうかと気は休まらない。試しに目の前で手を振ったり、耳を触ったり首に冷気を当てるが、反応はない。

(寝、てる…のか?)

なんだか拍子抜けしてしまう。騙されているのかもしれないが、これ以上の刺激には気が引ける。無意識に彼を甘やかしてしまう、自分自身へのため息と他人と太陽からのぬくもり。
なんだか眠くなってきた。

「…エースが悪いんだからな……」

起きても、しばらくは放してやらない。そう心に決め、マキナも夢の世界へと旅立った。


気がついたのは、太陽が沈みかけた頃だった。

「あ、マキナ。おはよう。」

鼻や唇が触れるか触れないかの至近距離にエースの苦笑いが見えた。

「とりあえず、放してくれるかな?嬉しいけど……風邪引くから。」

マキナの脳が状況を理解すると共に、肌は真っ赤に染まった。

「そ、そのこれは…別に深い意味はないからな!!」

「へえ?ずっとベタベタしてたのに?」

「やっぱりお前、起きてたのか!」

「人の気配がするのに、寝れるわけないだろ。」

恥ずかしい、恥ずかしすぎる。
まさか最初から起きていただなんて。穴があったら入りたいとはこのことであろう。
一人悶絶するマキナを余所に、エースの笑顔は崩れない。憎たらしい笑顔に一撃入れてやろう、と思ったが余裕でかわされてしまった。

「マキナが積極的になってくれるのが嬉しくてさ、様子を見てたのはいいけど…」

「けど、なんだよ。」

「あまりに気持ちよくてさ、すぐ寝ちゃった。」

なるほど。途中からは本当に寝ていたらしい。口ではいくらでも言える、この詐欺師の言うことは簡単には信じまい。体が警告する。

「マキナが一緒にいるだけで、こんなに安心するなんてね。僕も絆されたな。」

「…前言撤回。」

「?」

信用してやろう、と思う。同じ気持ちにだなんて思っていなかったから。
今日の予定は総崩れになってはしまった。だが有意義以上の1日になった為に、許してやろうではないか。

「エース。晩飯行くぞ。」

「もうそんな時間か。」

「食べたらすぐ風呂だからな。」

「え?…あぁ、いいよ。」

+END

++++
こんにちは侑璃様、8300hitキリ番おめでとうございます!
お忙しいのに二度もご連絡していただき、ありがとうございますm(_ _)m
『エーマキの裏庭で甘甘な雰囲気』というリクエストをいただいたのですが…どうしましょう、甘々がなんなのかわからなくなりました(´・ω・`)
甘々…?ふ、雰囲気…?(´・ノ┃壁

も、申し訳ないです!書き直しはいつでも受け付けますので!

では失礼いたします!またネタをいただければ幸いです!

12.2.22

[ 659/792 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -