えふえふ | ナノ



境界線

※マキナ女体化
※巨乳



バタバタバタ、ガチャン

派手な音が聞こえて、エースは眉を寄せた。
自分は確か、自室にいたはずだ。だが、ノックもなく自室のドアが開閉する音がした。
もう消灯時間も迫り、部屋の外を出歩くのは禁止されているはず。マザーの言う事なら逆らう理由もないし、それは0組皆野共通意識でもある。
 もしかしてナインたちがはしゃいでいるのだろうか。ため息をつきながら、本にしおりを挟みゆっくり顔を上げると、相手の姿を確認して目をむいてしまった。
 そこにいたのは、見慣れた兄弟たちではない。息を上げて扉を背に座り込んでいるのは、最近0組にやってきたマキナではないか。しかも、濡れた体にタオルを体に巻いただけという破廉恥極まりない格好で。
 一体何が起きたのだろうか。女である彼女が、裸も同然な状態で男の部屋にくるなんて非常事態である。
手を伸ばそうかと考えていると、ゆっくり彼女が顔を上げた。

「覗かれた…」
「え?」
「風呂、知らない男に、覗かれた……」

 涙を浮かべながら、掠れた声で絞り出された単語に絶句した。
 零組は特殊なクラスであり、待遇も最良である。そんな痴漢行為が簡単に起こるなんて思いもしなかった。
どうしても通気の窓という概念が生まれる為、そこから覗かれたのだろうか。相手から執念すら感じてしまう。
 しかし気持ちもわかる。なにせマキナは顔もスタイルもいいし、成績も優秀。優しくて、少々天然なところもあるときたら、男で惹かれない者はいないだろう。淡白なキングですら、目のやり場に困ると言うほどなのだ。
 だからこそ、今の状況は非常にマズい。すっかり怯えてしまった彼女は、エースを見つめて必死に助けを求めている。すがりつくように引き寄せられた腕に、柔らかいものが当たり存在を主張する。
これは由々しき事態だ。

「マキナ、落ち着いて」

 頭を撫でれば鼻を鳴らしながらも見上げてくる瞳。話を聞く余裕は出来たらしいが、エースの余裕と理性が減るばかり。

「服を取ってくるからここにいてくれ」

 裸でいられるよりいい。このままでは、手を出してしまうのも時間の問題だ。
ずれてきたタオルから、形のよい胸が顔を出して彼女が動く度に揺れては跳ねる。見てはいたいが、手を出すわけにはいかないのだ。頼ってきた彼女を裏切りたくない。慌てて背を向けると、悲しみに染まった声が後ろ髪を掴む。

「一人にしないで……」

 収まった涙が再び溢れ出し、背中から抱きしめられた。押し付けられた胸が柔らかい、ではなく。寝巻越しに涙を感じて思わず唇を噛み締める。
無防備なところで男に肌を見られるなど、怖い以外の何者でもない。1人部屋だからすぐ助けを呼べるわけでもなく、もし襲われたらひとたまりもない。仲間だからこそ、殺すわけにもいかないのだから。

「わかった。一緒にいるから、風呂に入ってきたらどうだ?」

 「見張ってるから、な?」錯乱状態になり話がちゃんと聞ける状態じゃない彼女を宥め、何度か言い聞かせることによって、やっと了承してくれた。スンスンと嗚咽を漏らし、弱っているマキナなんて初めて見た。いつもは強気な彼女の女々しい姿に過保護欲が強くなる。
守ってあげなければ。彼女を、他の男たちから。
 こう言った以上、1人にはできない。しかし彼女の部屋へ共に行こうとも、途中で襲われたら元も子もない。これ以上、怯えさせるのも可哀想だ。
仕方ないから、服はエースのもので我慢してもらうとしてよう。
 問題は下着だ。まさか着けずに、というのは女性に対し酷であろう。シャワーの音を聞きながら首を捻っていると、脱衣所の扉を叩く、控えめな音が聞こえてきた。

「エース…いるか?」
「ん」
「どこにも行かない、よな?」
「大丈夫だから、ゆっくり入ればいい」

 そうだ。レムに頼もう。
彼女ならマキナの私物の場所も知っているだろうし、何よりも頼りになる。何か合った時にすぐ相談もしやすいし、秘密にしておいて他の者にも何かあっては困る。ほれんそうはしっかりとしないといけないのだから。

「今レムに迎えに来てもらうからな」

 COMMを取り出し、慣れないレムの番号を探す。ボタンを襲うとしたところで、腕を掴む者がいた。勿論、彼女しかいない。

「レムを、巻き込みたくない」
「ならデュースに、下着だけでも」
「……裸で寝る」

 シャワーに紛れてとんでもないことが聞こえなかっただろうか。
ぎょっとして風呂場へと目を向けると、扉が少し開かれて覗く彼女の困った表情が見えた。すがりつくような視線が、恥ずかしそうな顔がまたそそられる。ではなくて。

「マキナ、さっき被害にあったばかりで相手を煽る行為は……」
「エースが一緒なら大丈夫」

 今絶対とんでもないことを言った。聞き返そうとしたら、脱衣場が開いてまたタオルのみのマキナが表れ慌てて目をそらした。
滴る水が床を濡らし、腫れた目がまた泣いていた事を暗示する。可哀想に、それほどにまで怯えてしまっている。頭を拭く為のタオルを被せてやると「ありがとう」と掠れたお礼が聞こえてきた。

「部屋に残るつもりなのか?」
「一人は怖いから」
「僕も男だ」
「エースは、オレをどうにかしたいと、思っているのか?」

 上目遣いなんてわざと誘っているのか、違うのか。今のマキナは色々と目に毒である。
胸を腕ではさみ上半身を誇張する、グラビアモデルのようなポーズで誘惑する姿を直視することが出来ない。視線を大きく逸らしたのが拒絶と思ったのだろう。勢いよく抱きつくと慌てた声を上げた、
 先ほどとは違う、必死な形相に少し驚いた。
おいていかれる子供のように、甘えるようにすがりついてくるものだからタオルがずれて白く大きな胸が直接腕をかすめる。もう我慢出来るわけがない

「……隊長かマザーに連絡するから、暖まっていればいい」
「ま、待って! もうワガママ言わないから、ここに置いてくれっ!」

 何故また暗い顔になるのかわからない。COMMを持つ手を掴み、潤んだ瞳が真っ直ぐ見つめてくる。
怯える彼女を少々虐めすぎたかもしれない。あまりに拒絶をしすぎても可哀想だ。慌てて頭を撫でてやると、鼻をすする音が聞こえてきた。
泣かせてしまった。罪悪感だけがわき上がる。
白い肩を震わせる姿に、触れる事すらできない。手を伸ばしあぐねていると、涙に濡れた顔が上がった。

「今晩だけでも、一緒にいたい………ダメか?」
「間違いがあったら大変だ。男女の不純な付き合いは禁止されてる」
「エース…オレのことが嫌い……?」
「何かあったら呼んでくれ。外で見張ってる」

 やめてくれ。そんな甘えた、期待をするような女の顔で見つめないでくれ。
 これ以上一緒にいたら、本当に取り返しのつかないことになってしまう。自室の鍵を手に、振り返る事なくドアをくぐる。
見るつもりはなかったのだが、つい目が彼女を追ってしまう。視界の端に捕えた彼女は酷く寂しそうで、迷子のよう。
 だが仕方ないのだ。少なくともマキナを女性だと意識してしまっている以上、何もない保証なんてない。戦闘に明け暮れた毎日でも、ストイックだと言われても恋はする。
 ただでさえ最近処理もできていないのに、裸の彼女と一緒の部屋にいたらどうにかなりそうだ。最早拷問ではないだろうか。
 手を出せば、二度と一緒にいられなくなる。表情から笑顔が消えてしまう。そんなのは嫌だ。汚れていない彼女を守るのは自分の役目だ。これ以上傷付けてはいけない。離れるのは、最善の策なのだから。
 でも、嬉しくもある。
 彼女の部屋から近いのはエイトやキングだった。貞操観念がしっかりした男性もいたのに、真っ直ぐ迷わず勇気を振り絞ってここへ来てくれた。
 道中に何があるか保証出来ない、決して正しい判断とは言えないが、少なからず好意は持ってくれていることは嬉しく思う。

(マキナは無意識かな)

 彼女は委員長タイプなクイーンよりも色恋沙汰に興味がない。彼女にしたいランキング上位なのに、男と縁がない。影ではレムと出来ているのではないのか、と噂されるほどに。
それでも知っている。彼女は男に慣れていないだけであり、緊張もするし照れもする。まるで姫のような新入り幼馴染みの美少女たちを見て、皆微笑ましく思っていた。
 そして、それが恋心に変わるのは必然だったのだろう。エースだけではない。零組の中でも外でも、彼女たちを狙う者はいる。
決意と拳を握りしめると、背後から小さく音がした。扉を叩く音だ。コンコン、コンコンとか細く控えめな音が静かな廊下と心に響く。

「エース……入ってきて………姿が見えないと不安だ………」

 弱々しく消えそう声なんて聞いた事がなかった。いつも強気で、レムを守ろうと剣を振るう姿に。男にも負けないようにと必死に鍛錬を積む姿をこっそりと見つめていたものだ。隠れて努力し、仲間の、幼馴染みの為に汗を流す姿しか知らなかった。こんな弱々しい彼女なんて知らなかった。
 相応な少女の声と恐怖心に躊躇ってしまう。女性との縁はなかったから、どうしていいかわからない。
さっきの今だ、一人だとまたどんな目に遭うのかわからず不安になる。
 それでも扉を開けられるはずはない。エースも男だ。彼女の裸体に興味がある。今も彼女は裸体を震わせ佇んでいる。頭が混乱してまともに動けない今、襲うのは簡単で。
 それだけはいけない。彼女に、想いを伝えるまでは不純行為は禁じているから。

「だめだ」
「エース、お願い……」
「不純異性交遊は禁じられている」
「オレは、エースになら………ナニされても、構わ、ない、から…」

 はっきり聞こえた声は幻聴ではない。「好きだよ」「助けて」「なんでも、するから、だから」小さく開いたドアから微かに漏れだすのは、光か涙か欲望か悪魔の囁きか。入っては引き返せない、そんなことはわかっている。だが、生唾を飲み込みドアにかかる手を止める理性はなかった。
 立ち止まって後悔をするくらいなら、先に進んで後悔をしよう。

+END

++++
※続いたら裏へいくお知らせ
でも続ける気はないです、今は

バカテス読んでたら出てきた

12.2.13
修正18.3.22

[ 679/792 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -