えふえふ | ナノ



勇者が魔王になった日

※6543hitキリ番

0組の新入りのマキナは無防備すぎる。
真面目なようで、抜けているのが良いところでもあり悪いところでもあり。愛らしくはあるが、時としてそれはマイナスとなる。
彼は少々、いやかなり抜けすぎているのではないか。かなり、いやとてつもなく妬いてしまうほどに。


(一日目)

「マキナ。ちょっといいですか?リフレの割引券が入ったのですが。」

後ろから聞こえてきたのは、クラスメイトの声。ゆっくり振り返れば紳士的な笑顔を浮かべた知識人、トレイが爽やかに手を上げた。

「よろしければ、ご一緒しませんか?」

「券は二人分、なのか?」

「勿論。貴方と私で二人きり、ですよ。」

「うーん………最近残高がヤバいし…ご馳走になろうかな。」

そう言うと思っていた。
人の好意を無碍にしないのが彼である。無邪気な笑顔と警戒もせずヒヨコのようについてくる姿に、トレイがほくそ笑む。

「フフ、マキナは本当に無防備ですね。」

クエスチョンを浮かべ、首を傾げる姿も愛らしい。思いの外細いマキナの腕を引き寄せれば、容易に密着することが出来た。口端がつり上がる。

「勿論、お礼はいただきます。そうですね、マキナの口付けが欲しいです。」

「なっ!」

「どうです?…悪い話じゃないでしょう?」


近付くトレイの顔に、無意識な拒絶を示しマキナは顔を逸らすが、無駄なのは明白。身長でも気迫でも負けていては、抵抗にならない。
唇が触れるまであと数センチ。もうダメだ、覚悟を決め口を引き結んだ瞬間。奇妙な気配を感じた。

「はいそこまで。」

この声はエースか。
これは天の助けである。咄嗟にエースに隠れると、短い舌打ちが聞こえた。

「ありがとう、エース…」

「トレイ。嫌がってるだろ。」

「おやおや、勇者様の登場ですか。今日のところは引かせてもらいましょう。」

わざとらしく首を振り、最後にマキナへとウインク。
だが、すっかりトラウマになってしまっい怯えるマキナには逆効果。
もしエースが止めに入らなければ、このまま何をされていたことか。考えるのも恐ろしい。




(二日目)

「マーキナー。報告書手伝ってよー。」

「?トレイやクイーンの方がいいだろ?」

「僕はマキナがいいのー。」

ジャックはまるで、子供のよう。
実力はトップクラスなのだが、無邪気な目で甘えてくるから、無碍にすることが出来ない。彼のためにならない、それはわかってる。でも、困り助けを求めてくる者を放っておけるほどマキナは冷酷でもない。

「いいけど……」

「やったー!」

嬉しそうにそれはそれは嬉しそうに抱きつくジャックにつられて笑みを漏らせば、服の中に違和感を感じる。なんだろう。これは他人の手、であろうか。
しかし周りにいる者といえばジャックくらい。いや、しかし、そんなことはない…そう自身に言い聞かせていたら。

「ジャック。僕が手伝う。」

猫のように首根っこを掴むエースは、顔は笑っているのだが、目は笑っていない。先程の無邪気さはどこへやら、ジャックかも敵意が放たれる。

「マキナに手伝ってもらうからいいよ。」

「マキナ、レムが呼んでた。」

早く、と急かすエースだが、レムとは先程話していたばかりだ。用事があるようには見えない。


(でも、エースか言うなら正しいのかな)

ジャックには謝罪をして、駆け出した。




(三日目)



「いてっ…あ、ご、ごめ……なんだ、キングか…」

「なんだとはご挨拶だな。」

走っていたのは自分が悪い。
急ぎの用だとしても言い訳にならない、と反射的に謝り顔を上げたが拍子抜け。なんだ、クラスメイトではないか。
気にすることもなく、服をはらうところを見れば大丈夫だろう。怪我をしていないならよかった、とキングに挨拶すると腕を取られた。

「…髪、何か付いてる。」

パタパタと走り回ったせいだろう。小さいながらもへばりついたホコリに、呆れたキングの顔。

「顔にも付いてる。」

「え、どこ?」

「目、閉じてろ。」

疑いなく目を閉じるマキナの長い睫毛が誇張される。少し口を尖らせている様子がまたキスをせがんでいるようにも見え、生唾を呑み込んだ。
ゴミがついているのは嘘ではない。睫毛につく小さなホコリを摘むと、震える目。
まるで、純潔を守るお姫様。
思わず頬に手を添え、口づけようとしてしまったところで、手痛い制止がかかった。

「はーい、そこまでー。」

いつの間にいたのだろう。。気配を消して死角にいたのはエース…ではなくナギ。
痴漢撃退かのように手首をひねり背で拘束する一連の動きも流石と言えるであろう。。

「公衆面前でセクハラは厳罰対象だぞ?」

「…そういうつもりじゃない。」

「さーマキナー。こっちこいよー。」

「…え?何かあったのか?」

状況を理解していないマキナは、ぱちくりと周囲を見回すが。なるほど、男女問わず変に注目を浴びている。
何があったかはわからない。だが無性に恥ずかしくなり、ナギの背中へと隠れることを選んだ。
一瞬、ナギも虚を突かれた顔をしたが、いつものように微笑んだ。

「マキナちゃんは可愛いなぁ。」

「男に"ちゃん"、は止めろよ。気持ち悪い。」

「そんなことないってー。どう?今から暇?ちょっと話したいことが……」

とまでで、ナギの笑顔が凍った。静かにマキナから距離をおき、後ろの様子を伺っている……キングも同じく、臨戦態勢に入っているが…。

「二人とも?何してるのかな?」

なんだろう。この殺気は。エースは笑顔のはずなのに、全身から溢れる黒いオーラに候補生たちも反射的に身構えている始末。

「マキナ。」

「な、なんだよ…」

「おいで。」

「エース、」

「おいで?」

蛇に睨まれた蛙のようだった。逆らってはいけない。何をされるかわからない。それだけが頭を過ぎった。

「二人とも、覚えてなよ。」

荒々しく引かれた手。一体彼はどうしたのだろう。人気のいない墓地へと続く道を歩むうち、なりを恐怖が潜めていた恐怖が目覚めた。

「マキナは、僕の気を引きたいのかな?」

「え?」

「あんなにアブナイことをして、それでも反省しなくて……強姦されるのが好きなの?僕を誘ってるの?」

「な…何を言ってるんだ……?」

壁に追い詰められて押し付けられて、退路などどこにもない。

「マキナのこと、ずっと見てるんだよ。ずっと。」

「でも、マキナは僕のこと、見てくれてないよね?」

「ね、マキナ。僕を見てよ。僕だけを見てよ。」

足が竦んでしまい、徐々にずり落ちる体。覆い被さられ、また恐怖が湧き上がる。

「エー、ス……俺は……」

「ね、知ってる?鳥を飼う時、遠くへ行けないように逃げないように羽を切ったりもするんだよ?」

残酷な笑顔を浮かべるエースに、底知れない恐怖と悲しみが生まれた。

「俺は、そんなに信用がないのか?」




(勇者が魔王になった日)

++++
こんにちはこんばんは、綺更様!綺麗な階段のキリ番おめでとうございます!
6543hitキリリク『マキナ総受(ヤンデレエースオチ)』を頂きましたが……エースがキレただけですねこれ(´・ω・`)
実は総受けはギャグかゲロ甘しか書かないので難しかったです…でもナギマキが楽しかったり(笑)

またよろしければネタ下さい!失礼いたします!

12.1.31
修行4.8

[ 657/792 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -