よんアザ | ナノ



何を今更

※ネタ募集品

※妊娠ネタ


"ベルゼブブが妊娠した"―――――そのニュースは瞬く間に魔界全土に広まった。
勿論相手は許婚ことルシファーである、それ以外の男なら、ば無惨になぶり引き裂かれているであろう。
魔王の座に最も近いと言われる堕天使と蠅女王の結婚が何を現すか…それは魔王の確立でありルシファーがこの魔界を牛耳ったも同然の知らせであった。


「気持ち悪い。」

「…」

「気持ち悪い。」

何度も何度も繰り返される、単調な言葉にルシファーは肩身が狭くなる一方である。別にルシファーを貶した言葉ではない、所謂"つわり"というやつだ。
妊娠させたのは悪いと思っているわけではない。女の体のことは知らない(いや、見た目やその他下世話なことではなく)ため、ここまで冷たい目で億劫感を訴えられては、居たたまれない気持ちにさせられるのだ。たとえ、魔界一高慢な男であっても。

「あー…吐きそうなのか。」

「さっきから言っている。」

「どんな感じだ?」

「アザゼル君にでも頼んで、自分も同じ目に合うといい。」

刺のある言い方にまた気が重くなる。そうとう今は気が立っている…あぁもうその時期かと妙に他人行儀に事実を受け止めていた。

(俺はあのルシファー様だよな?魔界の王だよな?)

魔王ルシファーにここまで言えるのは、魔界でも人間界でもベルゼブブだけだ。許婚ながらルシファーが異常に惚れ込んでいたのもある、だからこのような一方的な横柄な態度には慣れっこなのだが。

(最近になって、悪化しやがった…)

「聞いてますか?酸っぱいもの持ってきてくれません?レモン水がいいです。あと、蜂蜜も忘れずに。」

寝転びながら本当に苦しいのか、と疑いたくなるほどのんびりと命令してくる女王様にため息をついた。これでは働き蜂ならぬ働き蠅だ。

「なあベルゼブブ。」

「…」

「ベルゼブブ、聞いてるのか?」

「…」

「はぁ、優。」

「なんですか。」

やっと振り返ったのはいいが彼女はまだいたのか、と不機嫌そのもの。せっかくの美人が台無しである。女王様の命令は絶対、これ以上機嫌が悪くなる前にと以前ではテコでも動かなかった腰を上げることとなった。


「おや、早かったですね。早く渡しなさい。」

「それよりも大切なことだ、黙って聞け。」

「"それよりも"?」

やってしまったか、と気付いた時には後の祭り、自分の頼みを蔑ろにされたことに腹をたてたベルゼブブが酷い形相で睨み付けてきた。美形や美人ほど怒ると迫力があるというが、納得である。身をもって感じた。

「誰が譲歩してやってこうなったと思ってやがる!よくもデカい口が聞けるな!」

この時期の女性は全くもって情緒不安定である。面倒くさい、と宙に視線を泳がせると流石にバレる。更に眉間の皺が増えた。

「子供なんかこしらえやがって!ちゃんとゴム付けろっつったろこの年中発情魔が!」

「お前だけだって言ってるだろーが。」

「うるせえよ!テメエが何回か浮気してるのは知ってるんだよ!女なら誰でもいいのかヤリ●ンが!」

「してねえよ。この俺様がくだらねえ嘘なんざつくと思ってんのかよ。」

「今ついてんじゃねえか!」

正直、ルシファーは何を言われているのかわからない。ベルゼブブに関係を許してもらってから他の女性と関係を結んでいない。その分の欲を彼女が受け入れることとなり、何回か殺し合いもしたことは苦い思い出ながら証拠とも言える。

「言ってただろう…テメエ……トミコとヤっただのなんとか…」

「いつの話だよ。」

確かそれは関係を持つ前。まだベルゼブブが許婚関係を許していなかった頃の話だ。ルシファーとしては女性関係を赤裸々にすることになんら抵抗はない。それで可愛い許婚が嫉妬してくれるなら、安いものだ。
だが反応がないか、女性の敵め、と噛みついてくるだけで脈はないものだと思っていたのだが、そうではなかったようだ。

(そうだよな、あっちゃんにはいちいちキレねえもんな)

叱るのはいつもルシファーのみ。アザゼルの話は殆どスルーか、距離をおいて穢らわしいものを見る冷ややかな目で蔑むのみ。

「だったら話がはええわ。」

「なんだ…」

「コレ、受け取れよ。」

レモン水に入ったコップを渡された、と思ったら何か小さいものが水しぶきを立て潜った。何をしやがる、文句をいう前に飲め、と半ば押し付けられた。
言いなりになるのはいけ好かないが、酸っぱいものが欲しいのは確か。気持ち悪いわイライラするわをぶつけるように一気に飲み干すと、カチンと歯を金属が叩いた。

「指輪?」

「遅くなったな、結婚祝いだ。嬉しくても泣くなよ?」

「まだ結婚してねえよ。」

辛辣な言葉のわりには覇気がなく、長い髪に隠れて表情も見えやしない。

「…甘い。」

「そりゃソレに蜂蜜塗りたくってやったからな。フフン、名案だろ?」

「寝言は寝ていいやがれ。」

まだ少しベタベタするエンゲージリングをつまみ、匂いを嗅ぐ。かぎなれた甘い匂いが鼻をつき、少し顔をしかめながらまた舌を出して舐めてみる。

「…甘い」

+END

++++
『許嫁なルシベー♀、妊娠しルシファーがいつもの傲慢OFFにして改めてプロポーズ』というお題でしたが…最近ルシベーの人気に嫉妬しておりますw
しかしにょたは楽しいですなぁ……また補足いりますけどw

妊娠などと楽しいネタをありがとうございます(*´ω`*)

11.8.24
修正:11.10.16

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